『蜘蛛巣城』ラスト・シーンの撮影については、三船に対して射かけられた矢は、危険がないよう、テグスで誘導されたものだった、いや、本物の矢を射かけたが、射たのは師範級の有段者揃いだった、いや、ただの弓道部の生徒たちだった、等々。ネット上にはさまざまな説が流布しているが、事実はどうだったのか? ──というわけで、撮影に関わった、あるいは居合わせた人々の談話をいろいろと集めてみた。 まずは射かけさせたご本人の発言。 萩原健一『蜘蛛巣城』の、三船さんが矢で射られるシーン。あれは、ほんとうに弓をピュッ、ピュッと射たんですか? 黒澤 見えないナイロンの糸を、身体に止めておいて、節を抜いた矢にそれを推してあるわけ。そのナイロンの糸を通って矢が飛ぶ。糸がたるんでいたら、危ないんだよね。ピンとしていないと、矢がどこに飛んでいっちゃうか、わからない。三船が向こうで動き回っているわけだから、たえず釣りのリールでい