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  • 「ISのテロリストの妻たちは、しばしば男たちより残酷だった」 | 地獄に積極的に加担した女たち

    行方知れずの子供たち 生還者たちはいまもフラッシュバックに悩まされ、その意味において、過去に閉じ込められたままだ。若いシリン・カレフが顔を隠して証言するのは、いつの日か、ISが別の形で復活するのを恐れてのことだ。 彼女の話は、2014年8月4日の恐怖の夜に、ヤジディ教徒たちが暮らす土地がISの手に落ちるところなど、ほかの女性の話と重なる部分が多い。話の脈絡が追えなくなるときもあったが、話の核となる部分は、子供と引き離されたときのトラウマがいまも頭を離れないことだ。 「いちばんつらかったのは、二人の子供と引き離されたときでした。子供たちはイラクへ、私はシリアへ連れていかれました。シリアにはハーレムがあり、女性が売買される市場がありました」 シリンはシンジャール近郊のドメスという場所で、二人の子供とともにISに捕まった。妊娠中だった彼女は、ランブシ村に連れていかれ、そこで3日過ごした後、イラク

      「ISのテロリストの妻たちは、しばしば男たちより残酷だった」 | 地獄に積極的に加担した女たち
    • 高齢化が進むヨーロッパで投資家が注目するのは(やっぱり)あの業界だ | 国をまたいだ大資本の力が強まる

      進む「大企業化」 先進国で加速する少子高齢化は需要と市場の縮小をもたらすと、政財界は警鐘を鳴らす。それはヨーロッパでも例外ではない。しかし、少子高齢化が好機とみなされ、多額の投資を集めている業界がある。それは、葬儀業界だ。 米メディア「ブルームバーグ」によると、英国のプライベートエクイティ投資会社チャーターハウス・キャピタル・パートナーズやフランスのラトゥール・キャピタルが投資するフューンキャップは、ヨーロッパの300以上の火葬場をおよそ約1700億円を費やして買収した。 また、同社はオランダにある世界有数の火葬設備メーカーを2022年に買収したり、ドイツ最大のライン・タウヌス火葬場と業務提携をしたりと、攻勢を強めている。 明らかな「もうかる理由」 投資家にとって葬儀業界の未来が明るい理由は、ある意味では明らかだ。身も蓋もないことだが、ベビーブーム世代が高齢者になっているため、今後死亡者数

        高齢化が進むヨーロッパで投資家が注目するのは(やっぱり)あの業界だ | 国をまたいだ大資本の力が強まる
      • ISの性奴隷にされた女性たちが証言する、想像を絶する「地獄」 | 子供なのに家族と引き裂かれ、売られ…

        法、その一。「いかなる女も、配偶者あるいは所有物、召使いでないなら、性交は合法でない」 法、その二。「女が召使いや奴隷になるのは戦争を通じてである」 法、その三。「ジハードで戦った男が女性捕虜を手に入れるのは、司令官から与えられたときか、買ったときである」 いまから10世紀前の征服活動のときに書かれたこの中世の文章には、戦利品として獲得した性奴隷の正しい取り扱い方について、もっと具体的な記述もある。たとえば性奴隷の「利用」開始時期は、月経を1回見送ってからだとされている。獲得した性奴隷が妊娠している場合は、出産後だ。いまから見れば鬼畜の所業だが、これがかつてのイスラム帝国における「宗教的な立場から出された見解」だった。 IS(いわゆる「イスラム国」)がイラクとシリアに支配領域を持っていた2014年から2019年までの時期、その支配領域では性奴隷の拉致と酷使が横行したが、それを正当化する拠り

          ISの性奴隷にされた女性たちが証言する、想像を絶する「地獄」 | 子供なのに家族と引き裂かれ、売られ…
        • 人が最も孤独を感じるのは何歳? 研究で「孤独感の曲線」が明らかに | 「若年期と60歳以降」は要注意…

          日本のみならず、海外でも孤独の問題が深刻化している。地域コミュニティが減少し、交流の多くが対面からオンラインへと移行した現代では、高齢者にみられるレベルの孤独感を訴える若者が増えているのだ。 最新の研究では、孤独感は年齢に合わせて「Uの字カーブ」を描くことが明らかになっている。“最も注意すべき年齢”と、その対策とは……? 社交力も筋力のように衰える 2024年5月、学術誌「サイコロジカル・サイエンス」に掲載された研究では、孤独感はU字型の曲線を描くと報告されている。 自己評価による孤独感は、若年期から中年期に近づくにつれて減少する傾向にある。だが、60歳を過ぎると孤独を感じる割合がふたたび上昇し、80歳になるころには特に顕著になることがわかったのだ。 中年期の人々は、同僚や配偶者、子供や地域コミュニティの人たちと交流する機会が多いため、ほかの年齢層よりも社会的なつながりを感じやすく、人間関

            人が最も孤独を感じるのは何歳? 研究で「孤独感の曲線」が明らかに | 「若年期と60歳以降」は要注意…
          • 【解説】国際社会が「無視」するスーダンの内戦では何が起きているのか | 数ヵ月以内に23万人が餓死する可能性

            世界の目がイスラエルとハマス、そしてロシアとウクライナの戦争へ向いているなか、2023年4月から続いているスーダンの内戦は状況が悪化し続けている。ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は同国で「大量虐殺がおこなわれている可能性が高い」と警告し、支援の必要性を訴えた。 誰が戦っているの? スーダン政府軍(SAF)と準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」の間で衝突が起きている。首都ハルツームで戦いが勃発し、国中へ広がった。 米メディア「ヴォックス」によれば、なかでも西部のダルフールでは「アラブ人が多数派であるRSF戦闘員が、地域の少数民族を標的にした殺人と性的暴力をおこなったとして告発されている」という。

              【解説】国際社会が「無視」するスーダンの内戦では何が起きているのか | 数ヵ月以内に23万人が餓死する可能性
            • 爽やかグリーンが目にも鮮やか「焼きブロッコリーとくるみ、ミントのパスタ」 | 【レシピ】Blistered Broccoli Pasta With Walnuts, Pecorino and Mint

              【レシピ】Blistered Broccoli Pasta With Walnuts, Pecorino and Mint 爽やかグリーンが目にも鮮やか「焼きブロッコリーとくるみ、ミントのパスタ」 Photo: Andrew Purcell for The New York Times, Food Stylist: Carrie Purcell

                爽やかグリーンが目にも鮮やか「焼きブロッコリーとくるみ、ミントのパスタ」 | 【レシピ】Blistered Broccoli Pasta With Walnuts, Pecorino and Mint
              • 「職場の生産性」に関する世間の考え方は完全に間違っている | 会社に生活を乗っ取られず、仕事の成果を上げるには

                あなたはとてつもなく忙しい。ビジネスチャットのスラックでやり取りして、メールを書き、ズーム会議も次から次に入っている。これらを同時にこなすこともある。しかし重要な仕事はできているだろうか。 カル・ニューポート氏の答えはノーだ。 「ちょっと待てよ、どれも重要じゃなかった、といったところだ」。ジョージタウン大学でコンピューターサイエンスを教え、注意力散漫の時代における集中力の重要性を訴えるニューポート氏はそう話す。 ニューポート氏によると、私たちは重すぎる負担を減らすことでより多くを達成できるという。同氏が提案する解決策「スローな生産性」──同名の本も出版している──は優れた成果を上げる人々が引き受ける仕事を減らして、仕事の質を上げ、ときどき戦略的に手を抜く一つの方法だ。最高の質こそ目指すところであり、がむしゃらに働くことは敵である。 これこそが、人工知能(AI)や人員削減から私たちの仕事を救

                  「職場の生産性」に関する世間の考え方は完全に間違っている | 会社に生活を乗っ取られず、仕事の成果を上げるには
                • あれが娘と会える最後の日になるなんて、私はまったく知らなかった | 【モダン・ラブ】夫と傷を見つめる日々

                  大事な人を失うのは突然なことも多く、いつが「最後」になるかはわからない。実家に帰ってきた娘は、母である筆者と一緒にアートブックを読み、一緒に写真に写ると、それきり永遠に去ってしまった──。 この記事は、愛をテーマにした米紙「ニューヨーク・タイムズ」の人気コラム「モダン・ラブ」の全訳です。読者が寄稿した物語を、毎週日曜日に独占翻訳でお届けしています。 蘇る明るい思い出が苦しい 2023年12月、クリスマスの数週間前、ジムに水筒を忘れた。家に帰る途中、運転していた夫が「戻ろうか?」と言った。 「ううん。明日取りに行く」 そう言ったけれど、戻らないエリックに私は腹を立てていた。そして1分後、私は泣いていた。 「戻るよ」と言う彼に、「いい!」と答えた。なぜなら、私に不安をもたらしていたのは水筒ではない。それをもたらしたのは娘が亡くなったという事実であり、この喪失感にもう耐えられないと思う日があるの

                    あれが娘と会える最後の日になるなんて、私はまったく知らなかった | 【モダン・ラブ】夫と傷を見つめる日々
                  • 哲学者スラヴォイ・ジジェク「セックスのファストフード化が加速している」 | 「抑圧」の反対は「鬱」である

                    スラヴォイ・ジジェク(75)にインタビューするのは、筆舌に尽くしがたい体験である。哲学者、精神分析家、文化理論家、政治活動家、ロンドン大学バークベック人文学研究所インターナショナル・ディレクター、そしてスロベニア共和国の元大統領候補である彼との会話では、一つのテーマから別のテーマへ次々と飛んでいく。だから、対談者はなんとかして置いてけぼりにされないようにしなければならない。ジジェクは、ユニークで予想がつかないのだ。 「剰余享楽」とは ──あなたは『為すところを知らざればなり』(※原題副題は「政治的要因としての享楽」)、そして『快楽の転移』をすでに書いています。そして今回、『剰余享楽』を発表しました。なぜ、このテーマに関心があるのですか? 戦争や人種差別、そのほかの多くの恐怖をめぐって何が起きているかを理解するためには、まさに享楽に注意を払わなければなりません。私は、享楽を「喜び」としてのみ

                      哲学者スラヴォイ・ジジェク「セックスのファストフード化が加速している」 | 「抑圧」の反対は「鬱」である
                    • 米紙「数十年かかったが、ようやく日本の女性の働き方が変わりつつある」 | いまだに課題は多くあるが…

                      男女雇用機会均等法の施行から約30年。他の先進国に遅れを取りつつも、日本の政府組織や民間企業では、男性優位の職場文化に変化が見られるようになった一方、まだまだ多くの課題が残されてもいる。外務省や大手企業で働く女性たちの現状を、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が取材した。 男女雇用機会均等法が施行された翌年の1987年、のちに日本の皇后となる女性が外務省に入省した。彼女は3人しかいない女性の新人外交官のひとりだった。当時は小和田雅子という名前だったこの女性は深夜まで働き、日米貿易摩擦の対応などにあたった北米二課で、華々しいキャリアを築いていた。 だが、彼女はそれから6年も経たないうちに退職し、当時は皇太子だった現在の天皇、徳仁と結婚した。 その後の30年で、外務省の状況は大きく変わった──そして、女性たちの置かれた状況も。2020年以降、新人外交官の半数近くを女性が占めるようになり、多くの女性

                        米紙「数十年かかったが、ようやく日本の女性の働き方が変わりつつある」 | いまだに課題は多くあるが…
                      • エステル・デュフロ「気候変動によって苦しむ貧困層に現金給付すべき」 | 超富裕層や企業への課税を重くせよ

                        2019年にノーベル経済学賞を受賞した、世界的に著名な経済学者の一人であるエステル・デュフロ。気候変動によって貧困層が受ける被害は、超富裕層や企業への課税によって補償されるべきだ──そんな提案をしている彼女に、英紙「フィナンシャル・タイムズ」が取材した。 マサチューセッツ工科大学「アブドゥル・ラティフ・ジャミール貧困行動ラボ」の共同設立者として、エステル・デュフロは主に貧困撲滅に焦点を当ててきた。そのため彼女はいま、世界の貧困層にますます深刻な影響を及ぼしている気候変動の経済的影響に取り組むことを余儀なくされている。 ワシントンで開催された世界銀行と国際通貨基金(IMF)の春季会合で、デュフロは「企業や超富裕層の課税を重くし、それを低所得国や個人に対する、気候変動に関連した被害の支援に充てる」という新たな提案をした。 私の言いたいことはとてもシンプルです。豊かな国に暮らす裕福な人々が、世界

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                        • 米紙が報じる「日本の“軍隊式教育”がもたらす社会秩序とその代償」 | ドキュメンタリー映画監督・山崎エマに聞く

                          日本人の母と英国人の父を持つ山崎エマは、程よい距離感で日本社会を見つめ、ドキュメンタリー映画として記録してきた。彼女がカメラを向けるのは、教室の掃除に励む小学生や血のにじむような練習に耐える高校球児といった教育現場だ。 そうした日本特有の厳しいしつけや伝統が社会に秩序をもたらす一方、そこには代償もあることにスポットライトを当てる山崎に、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が話を聞いた。 人間ピラミッドの思い出 ドキュメンタリー映画監督の山崎エマ(34)には幼少期の忘れられない経験がある。自分は膝にひどい擦り傷を負い、同級生は骨折する羽目になった人間ピラミッドだ。 大阪の小学校で6年生のころ、毎年恒例の運動会で組み体操を披露するため、同級生らと何週間も前から7段の人間ピラミッドをつくる練習をした。小さな体から血も涙も流れたが、本番で成功させた達成感は計り知れず、それは「私が粘り強い努力家だと自負で

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                          • 茹でるよりも簡単で美味! 「サルシッチャとグリーンピースの焼きニョッキ」 | 【レシピ】Crisp Gnocchi With Sausage and Peas

                            サルシッチャとグリーンピースの焼きニョッキ 作り方 1 直径約30cmの大きなフッ素樹脂加工のフライパン、またはよく油をなじませた鉄のスキレットにオリーブ油大さじ1を入れ、強めの中火にかける。ニョッキを(くっついているものがあればバラバラにしながら)フライパンに入れ、重ならないように並べる。ふたをして、いじらずに片面がきつね色になるまで2〜4分焼く。上下を返すようにかき混ぜながら、全体がカリッと色づくまでさらに2〜3分焼く。ニョッキが焦げたり、フライパンの油分が足りないようなら、必要に応じて油を足す。ボウルまたは皿に取り出す。 2 同じフライパンに残りのオリーブ油大さじ2を入れ、強めの中火にかける。サルシッチャを入れ、いじらずに、色づくまで2〜4分焼く。上下を返すようにかき混ぜ、サルシッチャに火が通るまでさらに2〜4分焼く。 3 グリーンピース、マスタード、水1/2カップを加え、底にこびり

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                            • 34歳女性記者の体験記「卵子凍結に本気で取り組んでみた私の1年間」 | 実際にかかる費用と体への負担は?

                              東京都が費用の助成を開始するなど、国内外で注目を集める「卵子凍結」。一般的に年齢とともに卵子は老化するが、若い頃に卵子を冷凍保管すれば、妊娠したいタイミングで卵子を融解して体外受精に使えるというものだ。英紙の記者が、1年間にわたって卵子凍結をしてみた体験談を記録した。 注射が毎日の儀式に オスロ空港の奥まった片隅にあるトイレの個室。扉の向こうでは、乗客たちがせわしなく行き交う足音が響いている。薄暗いなか、私は白い粉の入った6本の小瓶の上に身をかがめ、手探りで注射針と注射器を探り当てた。 注射器でごく少量の生理食塩水を吸い上げ、それを各瓶に順番に注入していく。粉と混ざった液体は白く濁り、やがて透明に変わる。私は注射器から最後の気泡を弾き出してから、Tシャツをまくり上げ、下腹部に注射針を刺した。 「ロンドン・ヒースロー行きの最終のご搭乗案内でございます」と、頭上でアナウンスが流れた。 普段はロ

                                34歳女性記者の体験記「卵子凍結に本気で取り組んでみた私の1年間」 | 実際にかかる費用と体への負担は?
                              • エヌビディアを世界一革新的な企業へと導いた「創業者のビジョンと信念」 | ジェンスン・フアンCEOに独占インタビュー

                                「革命」を促すエヌビディア 「1920年代には、水がジェネレーターに入り、直流電力が作られていました。いまは電子がジェネレーターに入ると、知性が出てきます」 エヌビディアの最高経営責任者(CEO)であるジェンスン・フアンはそう語る。シリコンバレーの本社を訪れた筆者の目の前には、AIを支えるエンジンとなる「エヌビディア DGX H100」が置かれていた。 この箱型機器には非常に高速のプロセッサや、他の最先端コンポーネントが詰まっている。50万ドル(約7784万円)もするが、新しいAI体験を実現するために大企業やスタートアップ、大学などで使用されるスーパーコンピュータの基礎的な構成要素となっている。 エヌビディアのハードウェアによって動くAIは、かつての電気がそうしたように人々の日常生活を大きく変える。しかし、現在のエヌビディアの影響力はどちらかといえば、充分理解されていない。AI半導体の市場

                                  エヌビディアを世界一革新的な企業へと導いた「創業者のビジョンと信念」 | ジェンスン・フアンCEOに独占インタビュー
                                • ヨハン・ノルベリ「社会正義の実現には、もっと多くの資本主義が必要だ」 | 長期的に見れば「成長こそがすべて」

                                  ヨハン・ノルベリ(50)は根っからの楽観主義者で、その主張を裏付ける論拠を持ち合わせている。古典的自由主義とグローバル化の熱烈な擁護者であるこの歴史学者は、ある意味、心理学者のスティーブン・ピンカーの系譜に連なり、「私たちは最善の世界に生きている」と主張する。 スウェーデン人のノルベリは、多くの人にとってシステムを推進する原動力である「利益の追求」を、「俗悪」なものだと考えている。彼が関心を寄せているのは、もっと「美しい」もの、つまり、より良い世界を創ることなのだ。 米ワシントンにあるシンクタンク「ケイトー研究所」のシニアフェローを務めるノルベリは、『資本主義宣言』(未邦訳)という挑発的なタイトルをつけた新著で、「読者の注意を文化戦争から逸らし、私たちの未来にとって重要な問題へと引き戻す」ことを目指している。スペイン紙「エル・パイス」が彼にインタビューした。 ──あなたは、社会正義の実現に

                                    ヨハン・ノルベリ「社会正義の実現には、もっと多くの資本主義が必要だ」 | 長期的に見れば「成長こそがすべて」
                                  • 「若者たちに希望を!」子供の機会を奪う社会構造をいますぐ修正すべきだ | スコット・ギャロウェイ「デジタル経済の先にあるもの」

                                    この記事は、ベストセラーとなった『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者で、ニューヨーク大学スターン経営大学院の経営学者であるスコット・ギャロウェイによる連載「デジタル経済の先にあるもの」です。月に4回お届けしています。 今週、私は由緒あるTEDの40周年記念イベント「TED 2024」で講演した。バンクーバーのステージで、ル・ポール、ケシャ、そして2人の宇宙物理学者とともに登壇したのだ。 持ち時間は15分だったが、17分使って47枚のスライドを矢継ぎ早に映し出しながら、私の考える「米国が直面する最大の課題」について語った。それは不平等でも気候変動でも中東での戦争でもなく、これらの脅威を結びつける問題、すなわち、「米国の若者に対する戦争」である。いわば「相互確証破壊」の戦いだ。 ある社会の成功度を測るための適切な指標は、「子供たちがどう扱われているか」である。個々の親た

                                      「若者たちに希望を!」子供の機会を奪う社会構造をいますぐ修正すべきだ | スコット・ギャロウェイ「デジタル経済の先にあるもの」
                                    • 「農業界のスタンフォード大学」が描くオーガニックじゃない「未来の農業」 | 有機農業だけでやっていくのは不可能

                                      農業分野で世界のトップに立つオランダのワーゲニンゲン大学の学長は「農業をこのままの体制で続けることは不可能」と語ると同時に、すべてを有機農業に移行すればいいわけでもないと主張する。それではどうしたら、持続可能な農業を営むことができるのか。「農業界のスタンフォード大学」の取り組みを、フランス誌が取材した。 「環境や生物多様性を尊重しつつ、世界人口に対応する食糧を確保することは可能です」 すがすがしいほどに楽観的な意見だが、ワーゲニンゲン大学の学長ショーケ・ヘイモヴァーラの言葉なのだから、重みがある。ワーゲニンゲンはアムステルダムから南東に90キロのところにある小さな自治体だ。同大学は、あらゆる世界ランクのトップに君臨する農業界の権威として、この分野のスタンフォードとも謳われる。 オランダ政府の「シンクタンク」とも目され、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)からも諮問を受けているうえ、充実

                                        「農業界のスタンフォード大学」が描くオーガニックじゃない「未来の農業」 | 有機農業だけでやっていくのは不可能
                                      • 「年を取ったときに安心だから」 日本の不動産を買い漁る中国の富裕層たち | 名前を変え、国籍も取得し…

                                        クーリエ・ジャポンのプレミアム会員になると、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトの記事(日・英・中 3言語)もご覧いただけます。詳しくはこちら。 金属商社を経営する中国出身のハヤシ・トモさん(45)は昨年、東京に移住した。すぐさま日本名を名乗り、湾岸エリアの高級マンションを約1億円で購入した。3月には家族を呼び寄せ、息子2人は日本の小学校に通い始めた。 ハヤシさんは東京の高級不動産ブームをけん引し、この都市のあり方を変えつつある多くの裕福な中国人の一人だ。 不動産業者や中国人富裕層の国外脱出の動向を注視する人々によると、中国の専制主義的な政治体制への不満──新型コロナウイルス規制による唐突なロックダウン(都市封鎖)の最中に高まり、その後も膨らむ一方だ──が国外流出に拍車をかけている。中国の景気減速と株式市場の不振も中国を出る動機になっているという。 ハヤシさんは東京への移住は大変だ

                                          「年を取ったときに安心だから」 日本の不動産を買い漁る中国の富裕層たち | 名前を変え、国籍も取得し…
                                        • 「心理戦ではハマスのほうがロシアよりずっと上手」と専門家が考えるわけ | 社会の結束を傷つけ、レジリエンスを崩す

                                          2023年10月7日の奇襲攻撃に始まった、パレスチナのイスラム組織ハマスとイスラエルとの紛争。イスラエル、ハイファ大学社会科学部コミュニケーション学の名誉教授で、マスメディアと政治キャンペーン、サイバーテロリズムなどを専門にするガブリエル・ワイマンは、ハマスによる「心理戦略」は10月7日以前から綿密に練られていたという。仏誌「レクスプレス」が詳しく聞いた。 「戦争の分析」には通常、民間の犠牲者数や物理的被害、軍事的損失といった尺度が用いられる。しかし、『サイバー空間におけるテロリズム』(未邦訳)の著者で、コミュニケーション学の教鞭をとるハイファ大学名誉教授ガブリエル・ワイマンは、ガザでの戦争における「心理戦」という側面に注目する。 ワイマンは、社会心理学者である娘のダナ・ワイマン・サックスとの共著論文「ガザでの戦争におけるハマスの心理戦への対抗」において、イスラエル社会に心理面から打撃を与

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                                          • 北京大学教授が分析「ロシアの敗北を不可避にする4つの要因」 | 英高級誌で激論

                                            ロシアとウクライナの戦局は、どちらの側にも立たない中国からはどう読めるのか? 中露関係が専門の北京大学教授・馮玉軍(フェン・ユジュン)が、英誌「エコノミスト」で明快な主張を展開し、国際的に話題になった論考を全訳でお届けする。 ロシアとウクライナの戦争は、両国にとって悲惨なものとなっている。どちらかが圧倒的に有利なわけでもなく、それぞれの政治的な立場も完全に反目しており、この戦いがすぐに終わるとは考えにくい。 だが、明白なことがひとつある。この戦争は、冷戦後の転換点であり、世界的に重大で、永続する影響をもたらすだろうということだ。 4つのおもな要因がこの戦局に作用するだろう。 その第一は、ウクライナ人たちが示した抵抗と挙国一致の度合いであり、これはいままでのところ並外れている。 第二は、ウクライナに対する国際的な支援だ。最近は同国の期待に応えられていないものの、その支援はなお広範なものだ。

                                              北京大学教授が分析「ロシアの敗北を不可避にする4つの要因」 | 英高級誌で激論
                                            • 学生のデモの背景─米国の「イスラエルの捉え方」が変わりつつある | もう「虐殺の犠牲者」には見えない?

                                              イスラエルによるガザへの攻撃に抗議するデモを米国中の学生たちが展開した結果、約2000人が拘束される事態にまで発展した。いまではヨーロッパでも同様の抗議活動が広まっている。 イスラエルと緊密な関係を築いてきた米国だが、若い世代はイスラエルに対し、これまでの米国人とは違った感情を抱いているようだ。米紙「ロサンゼルス・タイムズ」が、この問題の背景についてまとめている。 次世代は別の道を選ぶのか 76年前、ユダヤ人によってイスラエルが建国されて以来、同国と米国の関係はほぼずっと緊密であり続けてきた。 イスラエルは米国の資金、武器、外交や防衛を頼りながら存続・繁栄している。米国のこうしたイスラエルを支援する姿勢は、超党派の議会や政治家、多くの有権者から支持されており、最近までは揺るぎないものだった。 ホロコースト生存者の避難所として形成されたイスラエルは、しばしば犠牲者とされてきた。そして国際的に

                                                学生のデモの背景─米国の「イスラエルの捉え方」が変わりつつある | もう「虐殺の犠牲者」には見えない?
                                              • 「死者のデジタル復活」は早急に規制すべきとAI倫理学者らが警告 | 死者の尊厳が軽んじられ、生きている人に心理的な害がおよぶ…

                                                死者をデジタルで再現することが現実のものとなりつつあり、早急に規制が必要だと人工知能(AI)の倫理学者らが警告している。そうした「デッドボット」がその作り手や利用者に心理的な害をおよぼし、「取り憑く」場合さえありうるというのだ。 英ケンブリッジ大学の研究者らによれば、そうしたサービスは技術的にはすでに作れるし、法的にも許されるものだという。たとえば、その利用者は亡くなった親戚とのやりとりをアップロードして、チャットボットの形で「おばあちゃんをよみがえらせる」ことができる。 そうしたサービスは、わが子に自分の死後にも交流できるものを残したいという末期患者や、自分の全人生を目録にしてインタラクティブな遺産を作りたいという健康な人にも売り込めるかもしれない。

                                                  「死者のデジタル復活」は早急に規制すべきとAI倫理学者らが警告 | 死者の尊厳が軽んじられ、生きている人に心理的な害がおよぶ…
                                                • 条件は完璧にそろっているのに「EVが普及しない」不可解な国・日本 | 米メディアが原因を分析

                                                  日本には、電気自動車(EV)が普及するための条件が完璧にそろっているという。だがテスラ社のイーロン・マスクも日本市場には苦戦していると認める通り、普及は遅々として進んでいない。その原因はどこにあるのか。同じく普及が停滞する米韓の状況と合わせ、米経済メディア「ブルームバーグ」が分析した。 日本はEV普及の「ラガード」 日本は電気自動車(EV)の先駆者となるための、あらゆる条件を備えている。世界平均を上回る所得、堅調な自動車産業、高い新車購入率、技術を称揚する文化などだ。 しかしながら、2023年の日本におけるEVの新車販売比率(新車販売台数に占める特定の自動車の割合)はわずか1.8%だった。 2024年3月、ブルームバーグの気候変動ニュースメディア「ブルームバーグ・グリーン」は、完全電気自動車(BEV)の普及拡大が見込まれる31の国を調査した結果を発表した。するとそのなかで、普及率が思いのほ

                                                    条件は完璧にそろっているのに「EVが普及しない」不可解な国・日本 | 米メディアが原因を分析
                                                  • 義足のアーティスト片山真理が語った「自分の障害には興味がない」理由 | “感動の物語”を求めるスペイン紙の記者はたじたじ…

                                                    義足のアーティストとして知られる片山真理がスペインでの作品展示をきっかけに、現地紙の取材に応じている。 記者は、片山に障害があるという点に着目し、いわゆる“感動の物語”をまとめようとしていたようだが、こうした「思い込み」を持って取材に向かうことの危険性を痛感したと正直に記している。片山はいったいどんなコメントをしたのだろう? 現代の巨匠を彷彿とさせる作品 アーティスト、歌手、そして注目の新星でもある片山真理の子供時代については特筆すべきことが二つある。一つは、家庭のなかに裁縫が根付いていたこと。「母も祖母も曾祖母も裁縫をしていました。私はその技術を受け継ぎました。鉛筆を持つよりも先に、針と糸を使っていました」と、片山は説明する。 スペイン・マドリードで展示されている片山の写真は、ふんだんに装飾が施され、パンクのテイストを帯びたブラックジョークが効いている。自身を題材にしたこれらの作品群は米

                                                      義足のアーティスト片山真理が語った「自分の障害には興味がない」理由 | “感動の物語”を求めるスペイン紙の記者はたじたじ…
                                                    • 弱体化のWTOを見捨て、独自の「自由貿易ネットワーク」を築く中国の野望 | 米国、EUとの貿易からシフト

                                                      激化する米中貿易摩擦 2001年、中国は世界貿易機関(WTO)に加盟した。歓喜に沸いた当時でさえ、米中政府は異なる夢を見ていた。 当時の米国大統領ビル・クリントンは、中国はWTO加盟によって政治改革が推進されると称賛した。一方、当時の中国の指導者・江沢民は、米国の本当の動機は「社会主義諸国を西洋化し、分裂させること」にあると警戒していた。 それから20年以上経ったいま、両国の軋轢は激しく拡大した。2年に一度のWTO閣僚会議では、米中が激しく対立する。

                                                        弱体化のWTOを見捨て、独自の「自由貿易ネットワーク」を築く中国の野望 | 米国、EUとの貿易からシフト
                                                      • マッキンゼーや大手コンサル会社の黄金期は過ぎ去ったのかもしれない | AI技術で人間のコンサルタントは不要に?

                                                        つい最近まで、マッキンゼーをはじめとするコンサル業界は絶好調であるかのように思われた。しかし、ここにきて風向きが変わった。英「エコノミスト」誌は、コンサル業界が今回の成長の落ち込みから復活するのは難しいと予想する。 2024年3月、ある匿名のメモがインターネット上に一時拡散した。メモの著者は複数人で、いずれも「マッキンゼーの元パートナー」と称していた。彼らは輝かしい業績を誇る戦略コンサル会社が近年、「成長ありきの無責任体制」に陥り、とくに経営陣に対しては「戦略的目標が欠如」していると手厳しく非難した。そしてマッキンゼー出身者らしい控え目な書き方ながら、「真に偉大な組織」が存亡の危機に瀕していると警告した。 このメモはすぐに削除されたが、それはマッキンゼー社員の直近の不満にほかならなかった。1月、同社マネージングパートナー(一般企業のCEOに当たる)のボブ・スターンフェルズは、最初の社内投票

                                                          マッキンゼーや大手コンサル会社の黄金期は過ぎ去ったのかもしれない | AI技術で人間のコンサルタントは不要に?
                                                        • 米紙が見た「日本の警察に“外見”を理由に職質されまくる彼らの苦労」 | 「レイシャル・プロファイリング」の実態

                                                          警察が見た目や人種を理由に職務質問や捜査の対象を選ぶ「レイシャル・プロファイリング」の問題が、日本でも徐々に認知されはじめている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、日本でこうした理由から頻繁に職質され続ける人々の置かれた現状を取材した。 「別にドレッドヘアが悪いわけではないですけど」 通勤中の人々が東京駅を足早に通り過ぎていくなか、警官が若い黒人男性に丁寧に説明する。「私の経験上ですよ、ドレッドヘア、おしゃれな方って、けっこう薬物を持っている方がいままで多かった」 2021年にアロンゾ・表側(28)が受けたこの職務質問の動画は、日本におけるレイシャル・プロファイリング(人種や肌の色を理由に捜査対象を選別すること)についての議論を引き起こし、警察の内部調査につながった。だが表側にとっては、13歳で初めて職質を受けて以来、ずっと抱え続けている問題の一部にすぎなかった。 「警察はただ自分の仕事を

                                                            米紙が見た「日本の警察に“外見”を理由に職質されまくる彼らの苦労」 | 「レイシャル・プロファイリング」の実態
                                                          • アンナ・サワイ「性的な対象としての日本人女性は演じたくなかった」 | 『SHOGUN 将軍』で注目の日系人俳優

                                                            日本でも話題のドラマ『SHOGUN 将軍』で主役のひとりである戸田鞠子を演じた、ニュージーランド出身の日系人俳優アンナ・サワイ(澤井杏奈)が、米紙「ロサンゼルス・タイムズ」の独占インタビューで作品への思いを語った。 アンナ・サワイは、ドラマ『SHOGUN 将軍』の制作総指揮者ジャスティン・マークスと初めて面談したとき、まず聞きたいことがいくつかあった。そのひとつが、「なぜこれをリメイクするのか」だった。 原作のジェームズ・クラベルのベストセラー小説『将軍』を基に、マークスとレイチェル・コンドウが「ディズニー」の制作スタジオ「FX」と組んで共同制作したこのドラマは、長年温められてきた企画だった。 だがその時点でのサワイは、このドラマに対する評価をオーディションの資料からわかる限りで下すしかなかった。その資料に含まれていたのは、人物描写とあらすじ、そして、全貌などまったく見えない入浴シーンの台

                                                              アンナ・サワイ「性的な対象としての日本人女性は演じたくなかった」 | 『SHOGUN 将軍』で注目の日系人俳優
                                                            • “みんな憂鬱な会議”を今すぐやめるための「5つのアイデア」 | 会議のだるさを解消するためのテクノロジーと遊び心

                                                              クーリエ・ジャポンのプレミアム会員になると、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトの記事(日・英・中 3言語)もご覧いただけます。詳しくはこちら。 誰もが会議を嫌っている。数が多すぎる、長引く、メールで済ませられる、といった理由からだ。しかし、会議は協力してアイデアを前進させる重要な手段だ。では、どうすれば企業は会議をより効果的なものにできるのか。有望なテクノロジーや新たなアイデアが、数年のうちに企業の会議の形を変えそうだ。 ここでは将来的に考えられる新たな5つの会議形態を紹介する。 ハイテク会議

                                                                “みんな憂鬱な会議”を今すぐやめるための「5つのアイデア」 | 会議のだるさを解消するためのテクノロジーと遊び心
                                                              • ティエリー・マルクスが語る「インクルーシブ経営」のための心得4ヵ条 | 「復帰する人のための人事部門が必要」

                                                                刑務所に出向いて服役中の囚人たちに料理を教えているかと思えば、無職の人々を対象にした無料の料理学校を設立──ティエリー・マルクスは「2つ星シェフ」としての料理の腕前だけでなく、その「社会派」な活躍でも知られる。そんなマルクスの「インクルーシブ」な経営哲学を、エグゼクティブ向け仏隔月誌「クーリエ・カードル」が掲載した。 パリの高級レストラン「シュール・ムジュール」を率いる2つ星シェフ、ティエリー・マルクスは、およそ10年前に「キュイジーヌ・モード・ダンプロワ(料理への手引)」という学校を共同設立した。その学校は、生徒たちに短期間で調理や食にかかわる技術を教えることで、飲食業界への参入と、業界内での転職を容易にしている。 マルクスがパリに作った新しいレストラン「オノール」でも、誰も排除しない「インクルージョン」の考えに則ってスタッフの10%を採用しており、そのなかにはマルクスの学校を出た者もい

                                                                  ティエリー・マルクスが語る「インクルーシブ経営」のための心得4ヵ条 | 「復帰する人のための人事部門が必要」
                                                                • ユヴァル・ノア・ハラリ「1945年の日本といまのイスラエルの共通点」 | ガザの惨状を信じないイスラエル人

                                                                  エコーチェンバー 10月7日以降、イスラエルがハマスと戦い、打ち負かすことが不可欠となった。しかし、それは罪のない多くの市民を殺し、市民を飢えさせずとも達成することは可能だった。イスラエル国防軍は戦場で多くの勝利を収め、ガザのほとんどの地域とそこに通じるルートを掌握した。 戦闘のさなかに、民間人と戦闘員を切り離すことが困難な場合はあるだろう。しかし、なぜイスラエルはガザに大量の援助物資を入れることを妨げたのだろうか。子供たちが飢餓に苦しみ、絶望した何千人もが援助トラックの襲撃を招いたのは、ガザ内での非効率的な分配、ハマスの工作員による窃盗のせいだという意見もある。 仮にそのような問題が現実だったとしても、イスラエルは大量の食糧や医薬品、その他の物資をガザに送り込めたはずだ。不手際や窃盗があったとしても、飢餓を招くような規模にはならなかったはずだ。結局のところ、食料を窃盗しても、それを他の住

                                                                    ユヴァル・ノア・ハラリ「1945年の日本といまのイスラエルの共通点」 | ガザの惨状を信じないイスラエル人
                                                                  • 「人間にしかできないことがある」─Adoが英紙に語ったこと | 自分たち「日本のZ世代」が見ている未来

                                                                    いまや日本を代表する歌手となったAdo。2024年には自身初となる世界ツアーで11ヵ国をまわり、その人気ぶりはとどまるところを知らない。3月中旬におこなわれたロンドン公演を前に、英紙「ガーディアン」が彼女にインタビューした。 本人が考える『うっせぇわ』大ヒットの理由 最近、台北のCDショップ内を歩いていたとき、Adoは自分の最新アルバムが大々的にディスプレイされているのを見つけた。 「このディスプレイを担当した店員は、まさか自分がいまここにいるとは思わないだろうな、と思いました。でも、そういう感じにも慣れました。嬉しくなりますね」 この日本人ポップシンガーは、東アジアとインターネット上でスーパースターとなっている。多くのシングルでプラチナセールスを記録し、Spotifyでは600万人を超える月間リスナーを抱えている。 だが、Adoの素顔は厳重に隠されている。彼女は写真や動画で姿を見せること

                                                                      「人間にしかできないことがある」─Adoが英紙に語ったこと | 自分たち「日本のZ世代」が見ている未来
                                                                    • ユヴァル・ノア・ハラリ「このままではイスラエルは“中東の北朝鮮”になる」 | イスラエル国民への緊急メッセージ

                                                                      イスラエルは今後数日のうちに、歴史的な政策決定を下さなければならない。それは今後何世代にもわたってイスラエルの運命と地域全体の運命を左右しかねないものになるだろう。しかし、残念なことに、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と彼の政治パートナーにそうした決断を下せる能力がないことは、すでに何度も示されてきた。 彼らが長年進めてきた政策によって、イスラエルは破滅の瀬戸際に追いやられている。しかし、彼らは過ちを悔いる様子も、方向を転換する様子も見せていない。このまま彼らが政権を握っていれば、イスラエルと中東地域全体は破綻するだろう。慌ててイランと新たな戦争を始めるのではなく、まずは過去半年の戦争における自分たちの失敗から学ぶべきだ。 戦争は政治的目的を達成するための軍事的手段である。その成功を測るのは、目的が達成されたかどうかだ。10月7日の恐ろしい大虐殺の後、イスラエルは人質を取り戻し、ハマスの武装を解

                                                                        ユヴァル・ノア・ハラリ「このままではイスラエルは“中東の北朝鮮”になる」 | イスラエル国民への緊急メッセージ
                                                                      • イタリア南チロルは子育て天国だった! 高い出生率を維持する奇跡の街 | 潤沢な交付金に、あらゆる割引、いたるところに保育所

                                                                        アルプス山脈に囲まれた都市ボルツァーノの中心街にある市庁舎。ステファノ・バルド(38)は授乳休憩で早退をする。 「もちろん僕が授乳するわけじゃないんですけど」運輸行政を担当しているバルドは、妻と子供6人の写真を飾った執務室でこう話す。妻は新生児の世話で家にいる。親のどちらか一方が授乳休憩をとる権利は法律で認められているし、彼は子供たちのお迎えに行かなくてはならない。 「この制度はとても使い勝手がいいんです」 大家族は、イタリアでも次第に過去のものとなった。同国はヨーロッパで有数の低出生率の国であり、ジョルジャ・メローニ首相も教皇フランシスコも、「イタリア人は消滅の危機にある」と警告したほどだ。ところがその趨勢(すうせい)に最も抗っているのが南チロルと呼ばれるアルト・アディジェ地域(ボルツァーノ自治県)とその県都ボルツァーノでは、数十年以上出生率を維持し続けている。 その理由として専門家たち

                                                                          イタリア南チロルは子育て天国だった! 高い出生率を維持する奇跡の街 | 潤沢な交付金に、あらゆる割引、いたるところに保育所
                                                                        • 「日本経済はついに“正常化”しはじめたのか?」日本人エコノミストたちの見解 | デフレからの「完全脱出」はもうすぐ?

                                                                          国民総生産(GNP)の算出法を確立したことで知られ、1971年にノーベル経済学賞を受賞したサイモン・クズネッツはかつて、国の経済はおおまかに4つに分類されると言った。 「世界には4種類の国がある。先進国と途上国、そして日本とアルゼンチンだ」 1960年代以降の日本の目覚ましい高度成長は、クズネッツの目にはきわめて異例で、別個の類型として扱うべきものに見えた。だが1990年代後半以降、それとは別の意味で日本は世界でもまれな国となる。インフレ・金利・賃金上昇ともにほぼゼロ近辺で停滞を続け、ときにはマイナス化する場合さえあった。 だがいまは違う。日本銀行や日本政府の関係者は、「日本は歴史的な転換点にあり、やっと“正常な”経済に戻るかもしれない」と口をそろえる。企業はコスト上昇分を価格に上乗せし、労働者は物価上昇分に見合った賃上げを要求することができるようになるはずだ。岸田文雄首相は2024年3月

                                                                            「日本経済はついに“正常化”しはじめたのか?」日本人エコノミストたちの見解 | デフレからの「完全脱出」はもうすぐ?
                                                                          • 【解説】米国各地のキャンパスで親パレスチナの学生らが要求していること | ただの「戦争反対」ではない

                                                                            米コロンビア大学での親パレスチナ学生らによる抗議行動はなお続いている Photo: Stephanie Keith / Getty Images 米国各地の大学キャンパスで、イスラエルのガザ攻撃を糾弾する親パレスチナの学生らによる抗議行動が激化しており、警察当局による逮捕者も続出している。 米紙「ワシントン・ポスト」によれば、ニューヨーク市にあるコロンビア大学で4月18日、キャンパス内で野営していた親パレスチナの抗議者100人超がニューヨーク市警に逮捕されたことをきっかけに、連帯の意を示す同様の抗議行動が各地の大学に飛び火したという。 同紙は別の記事で、こうした抗議行動で逮捕者が出た大学についてまとめている。それによれば、コロンビア大学以外では、イェール大学(コネチカット州)で60人、ニューヨーク大学で120人、テキサス大学オースティン校で50人超、南カリフォルニア大学で90人超、エマーソ

                                                                              【解説】米国各地のキャンパスで親パレスチナの学生らが要求していること | ただの「戦争反対」ではない
                                                                            • 『三体』原作者の劉慈欣「人類が直面している最大の不確実性を知ってほしい」 | ネトフリの実写版が世界的ヒット

                                                                              2008年に中国で出版され、2014年に英語版が出たのを機に世界的ベストセラーとなった長編SF小説『三体』。3月には『ゲーム・オブ・スローンズ』の制作陣による実写ドラマ版が配信され、いまなお新たなファンを獲得している。英紙「ガーディアン」が、本作のヒットの理由やSFとの出会い、実写化、そして物議を醸した過去の政治的発言について、著者の劉慈欣に聞いた。 「中国にもSFはあるの?」 中国人作家・劉慈欣によるSF小説『三体』は世界中で数千万部を売り上げており、2015年のヒューゴー賞をはじめ、数々の賞を受賞している。本作はいま、『ゲーム・オブ・スローンズ』の制作陣が手がけた実写版が公開されたのを受け、英語版がふたたびアマゾンのベストセラーチャートにランクインしている。 しかし、10年前の英国で、劉や『三体』の名を聞いたことがある人はほとんどいなかった。この小説は、現代の科学者たちの怪死事件を発端

                                                                                『三体』原作者の劉慈欣「人類が直面している最大の不確実性を知ってほしい」 | ネトフリの実写版が世界的ヒット
                                                                              • 異星人崇拝カルト創始者「ラエル」のいまを追ったら、日本に辿り着いた | 疑惑だらけの「クローン人間」に「フリーセックス」…

                                                                                宇宙人を信仰し、性の解放を訴える「ラエリアン・ムーブメント」。日本でも「UFO教」、「フリーセックス教団」などと表現されてきた、フランス発祥の新興宗教団体の今昔を、仏紙「フィガロ」が追った。どうやら預言者ラエルはいま、日本で暮らしているという。 2024年、クロード・ボリロンが神話を発案してから50年になる。「1973年と1975年にエロヒムに遭遇した男、ラエル」の物語である。エロヒムとはいわゆる人類の創造者たちで、彼らは空飛ぶ円盤に乗ってやって来て、元ジャーナリストでミュージシャンのボリロンを、地球でのメッセンジャーに任命し、彼を「ラエル」と命名したという。 エロヒムたちが地球に戻って来るまでの間、ボリロンはいくつかのミッションを託された。あらゆる大宗教を否定し、彼らを迎え入れる大使館を建設すること、瞑想によって人類を目覚めさせること、性の解放を実現すること、「人類は2万5000年前に研

                                                                                  異星人崇拝カルト創始者「ラエル」のいまを追ったら、日本に辿り着いた | 疑惑だらけの「クローン人間」に「フリーセックス」…
                                                                                • ユダヤ人歴史家アヴィ・シュライム「ハマスを追い詰めたのは西側諸国です」 | 歴史は「空白」からは作られない

                                                                                  ユダヤ人歴史学者アヴィ・シュライム(78)はイスラエル建国の歴史に新たな視点を提示し、「新しい歴史家」と呼ばれた。バグダット生まれの彼はイスラエル批判をすることから、その主張は論争を呼んできた。10月7日のハマスによるイスラエルへの大規模攻撃後、シュライムの発言は再び注目を集めている。 「論争」を呼ぶ歴史家 1988年、「新しい歴史家」とされた3人のイスラエル人歴史家が、同国の誕生にまつわる秘密を明らかにした。それまでイスラエルの建国の歴史は、英雄的なものとして語られていた。 ベニー・モリスは、1948年に「パレスチナ人の多くは自発的に家を去ったのではなく、イスラエルの司令官に残酷に立ち退かされた」という記録を明らかにした。イラン・パペは、「(パレスチナを支配していた)イギリスはユダヤ人国家を妨害せず、パレスチナ人を見捨てた」ことを示した。 そしてアヴィ・シュライムは、「1948年の戦争で

                                                                                    ユダヤ人歴史家アヴィ・シュライム「ハマスを追い詰めたのは西側諸国です」 | 歴史は「空白」からは作られない