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ブックマーク / www.nikkei-science.com (19)

  • 陰謀論が広がる理由

    事実に反する陰謀論は人々の政治行動に影響するほか,人を暴力行為に駆り立てる場合もある。不安を抱えている人は陰謀論的思考に特に引き込まれやすいことが,実験で示された。また,状況を制御できないという無力感もきっかけになる。一方,“証拠”の内部矛盾や,不確実な推測に基づく論説など,偽りの主張が持つ顕著な特徴に注目して陰謀論を特定することは可能だ。 再録:別冊日経サイエンス236「心と行動の科学」 関連記事 「陰謀論をなぜ信じるか」,S. ファン・デア・リンデン,日経サイエンス2014年2月号 原題名Why We Believe Conspiracy Theories(SCIENTIFIC AMERICAN March 2019) サイト内の関連記事を読む心理学/陰謀論 キーワードをGoogleで検索する偽旗作戦

    陰謀論が広がる理由
  • abc予想が証明された!?〜日経サイエンス2013年1月号より

    検証には数年,当なら整数論の重要問題に広範な影響 2012年夏,数学界はビッグニュースに沸いた。京都大学の数学者,望月新一教授が,重要な未解決問題「abc予想」を証明したとして,500ページの論文をネット上に公開したのだ。もし当なら整数論における数々の未解決問題が解決されるだけでなく,この分野に新たな研究のツールが登場することになり,影響は極めて大きい。 望月教授は屈指の整数論研究者だ。19歳でプリンストン大学数学科を卒業し,23歳でPh. D.を取得。32歳にして京都大学の教授に就任した。長年abc予想の証明に取り組んできたことは,専門家の間ではよく知られている。今回の証明も正しいのではないかとの期待が高まっている。 ただし検証は長期戦になりそうだ。望月教授が証明に用いた「宇宙際タイヒミュラー理論」はまったく独自のもので,これまでほかの研究で使われたことはない。数論幾何と呼ばれるこの

    abc予想が証明された!?〜日経サイエンス2013年1月号より
  • SNSが加速するタコツボ社会

    東日大震災の直後,人々はSNSで発信する科学者の言葉に耳を傾けた。だがその後急速に,科学者の言葉は届かなくなった。 科学コミュニケーションや科学ジャーナリズムと社会の関係を研究している早稲田大学准教授の田中幹人と同大研究員の吉永大祐らは,このほど,原子力発電所の事故から3年間にツイッターに投稿された「福島」に関する発言を抽出し,誰の発言がどのように共有・拡散されたかを網羅的に解析した。そこから浮かび上がったのは,巨大災害の直後にはコミュニケーションの要となっていた科学者たちが急速に影響力を失い,科学を懐疑的,あるいは陰謀論的に見る人々に取って代わられていった過程である。わずか2年の間に,科学者たちの声は科学者とその周辺,そして一部の保守層にしか届かなくなった。東日大震災から8年目を迎えた今,SNSという新たなメディアで福島がどのように語られてきたのか。そこに科学者らがどのようにかかわっ

    SNSが加速するタコツボ社会
  • アインシュタインの夢 ついえる

    「アインシュタインと散歩していたとき,彼は不意に足を止め,私のほうを向いて『君は,君が見上げているときだけ月が存在していると当に信じるのか?』と尋ねた」 ──物理学者A. パイス 2015年,欧米の3つの研究グループがそれぞれ,ある極めて困難な実験に挑んだ。それはある意味,やる前から結果がわかっていた実験であった。少なくとも量子論の理論家たちは何年も前から自信をもって結果を予想していたし,もしも予想外の実験結果が出たら現代物理学を根底から揺るがすことになっていただろう。幸いにも,実験の結果は理論の予想どおりであった。しかし,この実験結果を知って安心したのは,現代の量子論の研究者だけである。量子論を知らない人にとっては信じがたい結果であろうし,もしもアインシュタインが生きていてこの実験結果を知ったら,驚くというよりも,自分の夢が破れたことをはっきりと悟ったことだろう。 アインシュタインは,

    アインシュタインの夢 ついえる
  • キログラムを再定義

    1キログラムは白金イリジウム合金製の円筒(国際原器)の質量として定義されてきた。いまも人工物によって定義されている計量単位はこれだけだが,国際度量衡総会は1キログラムを量子力学の「プランク定数」と関連づける形で再定義することを決め,その作業が最終段階に入っている。電気的な力と機械的な力を精密に比較する「キブル天秤」という装置を用い,科学界で最も困難な部類の計測が求められる。 著者Tim Folger サイエンスライター。National Geographic 誌やDiscover 誌などに執筆しているほか,ホートン・ミフリン・ハーコート社が毎年出版しているThe Best American Science and Nature Writingの編集者でもある。 関連記事 「さらばキログラム原器」,I. ロビンソン,日経サイエンス2007年3月号。 原題名Mass Hysteria(SCIE

    キログラムを再定義
  • 台風データベースが人気 情報の活用法突き詰め:北本 朝展

    気象学者ではない北が作り一般公開中の台風データベースが人気だ 見やすく便利で愛用者は気象会社や観光業からサーファーまで多彩 情報技術を使いデータから知識を生む分野横断型の研究を目指す 毎年のように日列島を襲う台風。詳しいデータベースは一体どこにあるかご存知だろうか。実は気象庁ではなく,文部科学省傘下の情報・システム研究機構の国立情報学研究所(NII)が保有している。その名は「デジタル台風」。准教授の北朝展が15年前から個別の台風の経路や規模などをウェブ上で発信しており,年を追うごとに充実している。北は情報技術を武器に,自然科学から人文科学までデータから知識を生み出す分野横断型の研究を目指している。    (文中敬称略) 北朝展(きたもと・あさのぶ) 国立情報学研究所准教授。1969年生まれ,川崎市で育つ。1992年東京大学工学部卒,1997年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了

    台風データベースが人気 情報の活用法突き詰め:北本 朝展
  • 別冊・本 | 日経サイエンス

    知能指数(IQ)のスコアが過去100年にわたって着実に上昇を続けている。「フリン効果」として知られる現象だ。この上昇は図形合わせなど“文化の違いによらない”と考えられるテストの結果から生じている。    現代 … 続きを読む →

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  • ネットで軽くなる「事実」の重み

    「東京大学准教授の鳥海不二夫氏は,『人はもともと,自分にとって都合がいい,信じたい情報を信じる傾向がある。SNSはそういった情報だけを選択的に摂取できるメディアだ』と指摘する。SNSのこうした特徴は,ニュースメディアとの相互作用によってさらに加速される。ウェブニュースを配信するアプリケーションのアルゴリズムは多くの場合,ユーザーの意見の傾向を分析し,それに合った情報を流すように作られている。利用者が意図的に選択しなくても,自らの関心と志向に合うニュースばかり目に入ってくる仕組みになっている。」(文より) サイエンスライターの長倉克枝氏が,ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)が少数意見を増幅し,現実社会に影響を与えていくメカニズムを解説する。SNSの情報を分析した最新の研究成果によると,インターネットは当初の期待とはうらはらに,情報共有のタコツボ化と社会の分断をもたらしたという。

    ネットで軽くなる「事実」の重み
  • CERNから福島へ 測定を重ね事実を紡ぐ:早野龍五

    宇宙から消えた反物質の性質をスイスで探り 福島第1原発事故で起きた被曝の実態を調べる 共通するのは,膨大な測定データから事実をあぶり出す科学の手法だ 早野龍五は,スイスのジュネーブ近郊にある欧州合同原子核研究機構(CERN)で反物質を探究する国際共同実験グループのリーダーだ。だが研究者以外にとっては,福島第1原子力発電所の事故で飛散した放射性物質による「被曝を測定した先生」として記憶されているだろう。まったく異なるかに見える2つの活動に共通するのは,膨大な測定データを積み上げることで事実を見極めようとする科学者としての眼差しである。 「ここからこっちは物理関係者,こっちは福島の人の席です」。この春,東京大学を退官した早野は3月半ば,東京大学郷キャンパスの小柴記念ホールで,最終講義に詰めかけた来場者の交通整理に声を張り上げていた。来場者は定員を大幅に上回り,立ち見でも入りきれず,隣室にはテ

    CERNから福島へ 測定を重ね事実を紡ぐ:早野龍五
  • 2017年7月号

    2017年5月25日 A4変型判 27.6cm×20.6cm 定価1,466円(10%税込) ご購入はお近くの書店または下記ネット書店をご利用ください。 電子書店リスト 愛読者アンケート 特集:トランプVS科学 トランプの激震  川合智之 変わる世界の勢力図  滝 順一 ネットで軽くなる「事実」の重み  長倉克枝 社会科学 陰謀論を増幅 ネットの共鳴箱効果  W. クアトロチョッキ 医療 特別リポート 未来の医療 難病と戦う細菌ロボット  M.ウォルドホルツ ロボット工学 当に賢いAIを見分ける新チューリングテスト  G. マーカス 生物兵器 炭疽菌兵器の恐怖  P. S. カイム/D. H. ウォーカー/R. A. ジリンスカス 生物学 硫黄の川が生んだカダヤシの進化  R. リーシュ/M. プラス 犯罪捜査 アニマルCSI 動物虐待を科学捜査  J. バード/N. ウィットリング 行

    2017年7月号
  • 実験室で誕生 脳オルガノイド

    人間の脳に関する知識の多くは,マウスやラットなどの動物実験から得られている。これらの動物の脳は人間の脳と共通する部分が多いが,表面に深く折り畳まれたしわがなく,この違いが神経機能に影響している。統合失調症からアルツハイマー病まで,様々な脳疾患の治療法を齧歯類の実験で探る研究が失敗してきたのは,人間の脳のユニークな特徴によって説明がつくかもしれない。このため,神経科学の実験を行う新手法の研究が進んだ。動物実験に代わる手段として,発生中の脳の主要部分を培養皿の上で育てる方法がある。こうした「脳オルガノイド」はマウスの実験では得られない情報をもたらしてくれるだろう。すでにジカウイルスの脳への影響を調べるのに利用されている。 関連動画 Brains in a Jar May Help Fight Disease 再録:別冊日経サイエンス252『脳科学の最前線 脳を観る 心を探る』 著者Juerge

    実験室で誕生 脳オルガノイド
  • シリア危機を招いた気候変動

    シリアから数多くの難民が海を渡って欧州諸国に逃れている。脱出途上で溺死した子供の写真が世界に大きな衝撃を与えた。悲劇を招いた原因は何だったのか? 内戦やテロ組織イスラミックステート(IS)の暴力など,民族間対立や宗教的な背景に目がいきがちだが,それだけではない。シリアでは気候変動と政府の誤った政策によって干ばつの影響が深刻化し,100万人を超す農民が土地を捨てて過密な都市部へ移住を余儀なくされた。水不足と農地の荒廃,汚職が社会の崩壊につながったという。気候科学者によると,シリアの干ばつは今後さらに頻繁になり,悪化する。この傾向は中東と地中海沿岸の全域に拡大する恐れがある。 再録:別冊日経サイエンス240「気候大異変 いま地球で何が起こっているのか」 著者John Wendle フリーランスのライター・写真家・ビデオグラファーで,旧ソ連やアフガニスタンにおける社会不安を報道してきた。現在は人

    シリア危機を招いた気候変動
  • 特集:だまされる脳

    人はしばしば,現実には存在しないものが見えたり,非合理な考えに取り付かれて真実と思ったりする。こんな思い違いが起こるのは,人間の脳が元々,限られた情報から素早く結論を引き出すようにできているため,時に情報を誤って処理して,存在しない超常現象などを見てしまうためらしい。また,認知の仕組みに偏りがある場合,他者の行動の背景にありもしない意図を感じ取って疑心暗鬼に陥り,根拠のない陰謀論を信じることになる。脳がだまされるパターンは様々で,ダミーの薬が効き目を表すプラセボ効果を使いこなせば,医療の可能性が広がる。相手が認識できないメッセージを密かに流してその行動を変えられるとするサブリミナル効果は,長くその存在が疑問視されてきたが,最近改めて注目を集めている。 超常現象が見える理由  R. ワイズマン 陰謀論をなぜ信じるか  S. ファン・デア・リンデン プラセボ効果の脳科学  T. グーラ サブリ

    特集:だまされる脳
  • アルツハイマー病 原因タンパク質を絞り治療薬開発に手がかり:高島 明彦

    脳に蓄積するタウタンパク質が病気を引き起こしている可能性を検証し タウの凝集を阻害する治療薬の候補の開発を急いでいる 認知症のアルツハイマー病が発見されて110年が過ぎた。いまだに根治療は見つかっておらず,超高齢社会に影を落とす。患者の脳にはアミロイドβとタウという2種類のタンパク質の“ごみ”が蓄積し,神経細胞が死ぬことがわかっている。これまでアミロイドβに対するワクチンなどの開発が進んだが,治療薬となったものはまだない。国立長寿医療研究センターの認知症先進医療開発センター分子基盤研究部部長の高島明彦はタウが主犯ではないかと疑い,タウをターゲットにした治療薬の開発に挑んでいる。 (文中敬称略) 再録:「挑む!科学を拓く28人」 高島明彦(たかしま・あきひこ) 国立長寿医療研究センター 認知症先進医療開発センター分子基盤研究部部長。1954年長崎県生まれ。1979年九州大学理学部生物学科卒

    アルツハイマー病 原因タンパク質を絞り治療薬開発に手がかり:高島 明彦
  • 下水を飲み水に

    もし,下水を徹底的に浄化して,飲料水として再利用できるようになれば,世界各地で深刻さを増している水不足問題は解決に向かう。そして実際に,下水を通常の飲料水以上にきれいにする技術はあるが,利用者の心理的な抵抗感がその導入を阻んでいる。最新鋭の浄化施設を備えたカリフォルニア州サンディエゴでは,処理下水を上水道に送り込む計画を巡り議論が続いている。 再録:別冊日経サイエンス222「の未来 地中海からゲノム編集まで」 著者Olive Heffernan ロンドンを拠点に活動するフリーランスの環境ライター。Nature Climate Change 誌の元編集長。 原題名Bottoms Up(SCIENTIFIC AMERICAN July 2014) サイト内の関連記事を読む持続可能性/水/水資源/環境 キーワードをGoogleで検索するAWPF/促進酸化処理/逆浸透

    下水を飲み水に
  • 新たな用途を開く大容量の2次電池を作る:駒場慎一

    スマホやパソコンに使われるリチウムイオン電池より はるかに大容量の蓄電池となるナトリウムイオン電池 課題だった寿命の壁を突破し,実用化に王手をかける 5月,東京理科大学の駒場慎一は,米ロサンゼルス郊外にある高級リゾート地のホテルで,カリフォルニア工科大学が創設した,革新的な環境技術を表彰する「RESONATE賞」の初の受賞者として,記念式典に臨んだ。米の経済誌Fortune が主催する持続可能性に関する会議「ブレインストーム・グリーン」の一環だ。米国を代表する経済人や政治家たちを前に,他の4人の受賞者とともにあいさつし,安全でコストも低いナトリウムイオン電池が今後,世界の輸送や次世代電力網のスマートグリッドに大きな役割を果たすだろうと語った。 (文中敬称略) 寿命の壁を越える ナトリウムイオン電池は,リチウムイオン電池に続く新しい2次電池だ。海水から容易に原料のナトリウムを調達できる上,大

    新たな用途を開く大容量の2次電池を作る:駒場慎一
  • サイコパスの脳を覗く

    サイコパス(精神病質者)の脳の働きを調べてみると,彼らは他人の心の動きを感じたり,感情を示す手がかりを読み取ったり,自身の間違いから学ぶ能力に障害を持つことがわかってきた。サイコパスの脳は普通の人とは違ったやり方で情報を処理している。 脳の傍辺縁系と呼ばれる場所には,感情や感覚,情動上の意味を経験に対応させる領域があるが,サイコパスは,こうした脳の領域が十分に発達していない傾向がある。情動面の発達を損なう学習障害を患っているようなものだ。 サイコパスは「治らない」ものであるとされてきた。一般に,サイコパスはグループ療法のような標準的な治療のあとには,良くなるどころか,反対に悪くなる。ところが最近,サイコパス的な傾向を持つ手に負えない少年犯罪者を改善する,新たな精神療法が登場して期待を集めている。 再録:別冊日経サイエンス191 「心の迷宮 脳の神秘を探る」 著者Kent A. Kiehl

    サイコパスの脳を覗く
  • 生物が作った多様性 鉱物進化論

    現在,地球上にある鉱物は,わかっているだけで4400種類。こんなに種類が多いのは地球だけで,太陽系のほかの惑星ではずっと少ない。一体なぜだろうか。実は鉱物の半数以上は,地球に生物がいたために誕生したのだという。 地球の数十億年の歴史の中で,地球はその姿を劇的に変えてきた。そのたびに新たな鉱物の生成プロセスが生じ,鉱物が多様化してきた。 宇宙の始まりであるビッグバンの後,初めて宇宙空間に現れた鉱物は,ダイヤモンドやグラファイトの微細結晶だったようだ。ほどなく炭化ケイ素や窒化チタンなどができ,これら10数種類の原始鉱物を含む原始塵の玉ができた。 46億年前に太陽が燃え始めると,近くの塵の中で元素が溶けて混ざり合い,鉄ニッケル合金や硫化物などが生成した。これらの鉱物を含んだ微粒子が微惑星に降り積もると,部分的に溶けて鉱物ごとに冷え固まり,タマネギのような構造ができた。また氷が溶けて水になり,さま

    生物が作った多様性 鉱物進化論
  • 「ありえない色」を見る

    「黄緑」や「青緑」という色はあるが,「赤緑」という色はない。人間の視覚は「黄色と緑」や「青と緑」は同時に感じることができるが,「赤と緑」はどちらか一方しか知覚できないからだ。「青と黄色」も同様で,「青黄色」という色はない。このように互いに拮抗する色を「反対色」と呼ぶ。 ところが最近,ある種の特殊な状況のもとでは反対色が混ざり合った「ありえない色」を見ることができることがわかった。人の眼は一点を見つめている時も小刻みに視線を動かしているが,これを強制的に固定し,隣り合わせに並べた色の領域が網膜上で静止するようにする。すると両者の境界が消え,2つの色が混ざりあう。2色の輝度が等しいと効果は強力で,反対色ですら混ざり合ってしまう。 これまで,人間の脳が拮抗の仕組みを乗り越え,反対色を同時に知覚することはないと考えられてきた。だが,拮抗の仕組みはもっと柔軟で,一時的に停止することもできるらしい。

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