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■ Coinhive事件、なぜ不正指令電磁的記録に該当しないのか その2 昨年6月10日の日記「懸念されていた濫用がついに始まった刑法19章の2『不正指令電磁的記録に関する罪』」の「なぜ不正指令電磁的記録に該当しないのか」の節は、続きを書くつもりだったが、それからだいぶ経ってしまった。今改めてそれを書いておく。 当時、私が「Coinhiveの使用が不正指令電磁的記録の供用でない」と主張したことに対して、「それではあれが処罰できなくなる」だとか、「俺のPCのリソースが無断で消費されるのは許せない」とか「電気窃盗だろ」といった反応がチラホラ見られた。これらについて整理しておく。 刑法は「利益窃盗」を不可罰とする 刑法の講学上の概念として「利益窃盗」なる言葉がある。これは、刑法に規定された財産犯が二つのタイプに分けられることから来ている。すなわち、強盗、詐欺、恐喝には1項と2項が規定されていて、
■ 改正NICT法がプチ炎上、工場出荷時共通初期パスワードが識別符号に当たらないことが理解されていない 先月のこと、NHKニュースが「総務省 IoT機器に無差別侵入」と報じたおかげで、一部のメディアが後追いし、プチ炎上して気の毒なことになっていた。その後もじわじわと延焼し、昨日になって、ひろゆき氏から「総務省のセキュリティ調査に「国が不正ログイン」と騒ぐ頭の悪い人たち」とのトドメ記事が出るに至った。これは最初のNHK報道が素人考えで偏向していたところに原因がある。 総務省 IoT機器に無差別侵入し調査へ 前例ない調査に懸念も, NHKニュース, 2019年1月25日 全国の家庭や企業にあるインターネット家電などいわゆる #Iot機器 に国が無差別に侵入を試みる。そんな世界でも例のない調査が来月から始まります。 #サイバー攻撃 対策の一環だということですが、実質的に不正アクセスと変わらない行
■ 情報法制研究4号に連載第3回の論文を書いた(パーソナルデータ保護法制の行方 その3前編) 1年前の日記「情報法制研究2号に連載第2回の論文を書いた」の最後で「次号から本題について論じていく予定」としていた続きの「第3回」を、ようやく情報法制研究4号*1に書いた。本誌はオンラインジャーナルとしても発行されており、情報法制学会のサイトにて、以下で閲覧できる。 高木浩光, 個人情報保護から個人データ保護へ—民間部門と公的部門の規定統合に向けた検討(3), 情報法制学会「情報法制研究」第4号(2018年11月) 今回書いたことは、4年前の「日記予定」で予告していた「パーソナルデータ保護法制の行方 その3 散在情報と処理情報」に相当する内容であり、その後も何度か「書く書く」と言っていた件である。 「書く書く」と言っていた「行方 その3」は、手元の日記の下書きフォルダを見ると、「20140906」
■ 業界の信用を傷つける思想を開陳したトレンドマイクロ社にセキュリティ業界は団結して抗議せよ トレンドマイクロ製品がApp Storeから締め出された事案が重大局面を迎えた。エバ・チェン社長兼CEOの声明が発表されると同時に、準備されていたZDNetニュースが報じられた。 App Store上の当社アプリに関する重要なお知らせ, トレンドマイクロ, 2018年10月31日 トレンドマイクロのチェンCEO、App Storeでのアプリ削除問題に謝罪と説明, ZDNet Japan, 2018年10月31日 これまでの説明とは異なり、もはやトレンドマイクロ社固有の事情を超え、情報セキュリティ業界の一般論として、業界が必要としている情報取得だったのだと正当化し、社会が理解すべきものだとして、世間に理解を求める声明になっている。 セキュリティ企業は、お客さまのセキュリティならびにプライバシーを改善
■ 魔女狩り商法に翻弄された田舎警察 Coinhive事件 大本営報道はまさに現代の魔女狩りだ 前回の日記(6月11日23時46分公開)の件はその後、以下のように展開した。 6月12日 他人PCで仮想通貨獲得 了解得ず「採掘」初立件 神奈川県警など,*1 毎日新聞, 6月12日朝刊 仮想通貨マイニング(Coinhive)で家宅捜索を受けた話, モロ@ドークツ, 6月12日9時43分 Coinhive設置で家宅捜索受けたデザイナー、経緯をブログ公開 「他の人に同じ経験して欲しくない」, ITmedia, 6月12日12時17分 仮想通貨「無断採掘」疑い サイト運営者を書類送検,*2 共同通信, 6月12日20時45分 Police to press charges over cryptocurrency 'mining' of computers without consent, The M
■ 懸念されていた濫用がついに始まった刑法19章の2「不正指令電磁的記録に関する罪」 序章 昨日の読売新聞朝刊解説面に以下の記事が出た。 [解説スペシャル]ウイルスか合法技術か 他人のPC「借用」 仮想通貨計算 サイトに設置 摘発相次ぐ, 読売新聞2018年6月9日朝刊 「まさか違法とは……」。こううなだれる首都圏のウェブデザイナー(30)は今年3月、横浜地検にウイルス保管罪で略式起訴され、罰金10万円の略式命令を受けた。自分の運営する音楽サイトに昨秋、「コインハイブ」と呼ばれるコインマイナー用のプログラムを設置したところ、これがウイルスと判断されたのだ。 (略)昨年末から神奈川や宮城、栃木、茨城県警など全国の警察が捜査を開始。これまでに確認できただけで5人のサイト運営者がウイルスの供用や保管などの容疑で捜索を受け、既に略式命令を受けたケースもある。(略) 略式命令を受けたウェブデザイナー
■ 緊急周知 Coinhive使用を不正指令電磁的記録供用の罪にしてはいけない Coinhiveを設置したことで警察の捜査を受けているとの情報提供が、複数寄せられています。 Librahack事件の再来です。 Coinhiveの使用は不正指令電磁的記録供用の罪に該当しないとするべきです。 警察庁は、Coinhive使用の不正指令電磁的記録供用罪該当性をよく吟味してください。 各都道府県の警察本部は、Coinhiveの使用を犯罪とすることが適正なのか、警察庁によく相談してください。 近日中*1に、なぜCoinhiveの使用を不正指令電磁的記録供用の罪としてはいけないのかについて、ここで論ずるつもりです。 同様の捜査の対象になった方は、私 blog@takagi-hiromitsu.jp まで情報をお寄せください*2。 *1 本務先の降って湧いた火の車業務の終了に目処がつき次第。 *2 なお、
■ 優良誤認表示の「通信の最適化」(間引きデータ通信)は著作権侵害&通信の秘密侵害、公正表示義務を まえがき 3年前、「通信の最適化」でついに事故が発生し、炎上したことがあった。しかし、当時はまだこの問題への世間の理解が浅く、問題提起しても、天才プログラマの清水亮から「ピュアオーディオを有難がる宗教法人と大差ない」とか「トラブルはアプリ書いた人の能力の問題」などと小馬鹿にされる始末だった。川上量生は「どこが通信の秘密なんだよ」とひたすら独り言を続けていたし、ガラケー全盛期に名を馳せたケータイジャーナリストの面々もろくに動く様子がなかった。 ハッハッ、見ろ!第1種電気通信事業がゴミのようだ!! #通信の最適化(), 2015年6月 「通信の最適化」に関する高木浩光氏の見解, 2015年7月 kadongo38氏「日本の通信事業者よりAppleやFacebook, Google の方が問題」,
しかも、取得主体が個人情報保護委員会であるなら、.go.jp(政府ドメイン名)に置かないと、「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」の遵守事項(6.3.2(1))違反だよ。何回言ったらわかるの? たかがドメイン名(笑)とバカにしてるんだろうが、政府ドメイン名の使用については、どういう風の吹き回しか知らない*3が、国会でも質問主意書が出る(「政府ドメインの統一に関する質問主意書」2018年1月25日提出, 衆議院質問答弁経過情報)くらい国会議員に注目されてる*4んだぞ。「閲覧者が偽サイトを政府の真正サイトと誤信し個人情報をだまし取られる「フィッシング詐欺」などの被害について早急な対応が必要と考えるが」とか言われてるんだぞ。 国会で吊し上げられることになってももう知らんぞ。 大事な原稿も落としたことだしもうぶっちゃけて言っちゃえば、事務局長に嫌われると「あいつらの話を聞くな」とか言わ
1号・2号匿名加工情報? 1号個人情報は個人識別符号が含まれないもの? まず、岡村文庫第3版224頁〜225頁に、「1号匿名加工情報」と「2号匿名加工情報」という奇妙な見出しが目に入った(図2)。「個人情報」なら1号と2号ができたが、「匿名加工情報」に1号と2号があるとするのは初めて見た。 その内容は以下のように書かれている。 (2) 1号匿名加工情報 まず、個人識別符号を含まない個人情報(2条1項1号)を加工元情報とするときは、当該個人情報に含まれる記述等の一部を削除することによって、匿名加工情報となります(2条9項1号)。以下、1号匿名加工情報といいます。 一部削除の対象となる記述等とは、個人識別性を有する部分です。基本4情報(氏名、住所、生年月日、性別)が含まれる個人情報を元情報として、氏名や(略)ようなケースが想定されています。 この一部削除には、当該一部の記述等を復元することので
■ 宇賀克也「個人情報保護法の逐条解説」第5版を読む・中編(保護法改正はどうなった その9) このシリーズの前編を書いたのは去年の暮れだったから、それからもう10か月になる。「中編・後編に続く」と予告していたものの、もはやその意義はだいぶ薄れてしまった。当時の予定では、中編で「匿名加工情報関係のところ」を書くつもりで、宇賀先生が匿名加工情報に係る論点(特に容易照合との関係について)をどのように書かれていて、それをどう理解したらよいかを検討する予定だった。当時としては、そこの論点に踏み込んだ文献は非常に少なく、宇賀本がそこを書けばそれが通説ということになってしまう心配があった。しかし、その直後に情報公開請求していた開示資料が届き、立案部局と内閣法制局で何があったかを直接知り、数か月かけて分析するうちに真相が見え、6月4日の日記「匿名加工情報は何でないか・後編」にそれをまとめ、さらに、7月22
■ 匿名加工情報は何でないか・後編の2(保護法改正はどうなった その8) 「匿名加工情報」に今もなお根強い解釈のブレが残存していることについて、前回の日記は、内閣法制局への情報公開請求で開示された「法律案審議録」の記載内容を根拠として、その謎解きをした。結論としては、2014年11月までに準備されていた当初案が存在していて、それが翌月12月1日の内閣法制局長官の指摘によって却下され、作り直されたものが国会提出法案となっていたにもかかわらず、長官指摘での修正それ自体の考え方を説明する文書が作成されておらず、初期案の説明文書と修正後の案の説明文書が並存しているだけであるため、却下された初期案の「説明資料」を読んだ者が、それがキャンセルされていることに気づかず、その内容を真に受けていることが、解釈のブレが出てくる原因だろうと推測したのであった。 この分析には複数の有識者の方々から「なるほど」とい
■ 匿名加工情報は何でないか・後編(保護法改正はどうなった その7) このシリーズではこれまでに以下のことを書いてきた。 匿名加工情報は何でないか・前編(保護法改正はどうなった その2), 2015年12月6日の日記 匿名加工情報は「個人データであっても第三者提供を許す」の形ではなかった 関連: 匿名加工情報の条文構成はどう壊れて行ったか(保護法改正はどうなった その6), 2017年1月8日の日記 匿名加工情報の定義に該当するからといって36条〜39条の義務が課されるわけではない 匿名加工情報は何でないか・前編の2(保護法改正はどうなった その4), 2016年2月5日の日記 「委員会規則の基準で作成したもののみが匿名加工情報となる」では解決しない 十分に低減する加工をしたものは匿名加工情報に当たらない 匿名加工情報は何でないか・中編(保護法改正はどうなった その3), 2016年1月3
■ 医学系研究倫理指針における非識別加工情報の規定は無用の長物(研究倫理指針はどうなった その1) 医学系研究倫理指針の改正については、11月29日の日記「医学研究等倫理指針見直し3省合同会議が迷走、自滅の道へ(パーソナルデータ保護法制の行方 その26)」を書いた後、その後どうなったかをまだ書いていなかったが、ざっくり言えば、懸念された事態は回避され、どうにか妥当なところに落ち着くかっこうとなっている。そのときの展開の様子とその後の論点については、いずれ詳しくまとめる予定だが、ここでは、そのうち、匿名加工情報に関する部分のみ先に書いておく。 指針の「匿名化」と法の「匿名加工情報」を巡る混乱 指針改正案は「見直し」の段階で、昨年9月から10月にかけてパブコメにかけられていたが、それに対する文科省・厚労省の「考え方」を含む「パブリックコメントの結果」は今年2月になって公表された。 「人を対象と
■ 匿名加工情報が非識別加工情報へと無用に改名した事情(パーソナルデータ保護法制の行方 その30) 目次 当初の案では「匿名加工情報」だった 用語と定義範囲が一致することの重要性 行政機関法では匿名加工情報は常に個人情報である? 匿名加工情報がそもそも照合によって個人情報に復元されるのか 内閣法制局長官の大どんでん返し 長官のちゃぶ台返し 国会審議での展開 改正法成立後の状況 昨年成立した行政機関個人情報保護法(行政機関法)の改正法で、「匿名加工情報」が法案国会提出の段階で「非識別加工情報」と名称を変えられていたことについて、昨年3月の日記で以下のように書いていた。 行政機関匿名加工情報取扱事業者に再識別禁止の義務はかかるのか(パーソナルデータ保護法制の行方 その21), 2016年3月27日の日記 名称変更の謎 しかし解せないのは、「匿名加工情報」だったはずの用語が、どういうわけか、「非
■ 匿名加工医療情報作成事業法案ファーストインプレッション(パーソナルデータ保護法制の行方 その29) かつて「代理機関」と呼ばれていた構想が、「医療情報取扱制度調整ワーキンググループとりまとめ」*1としてパブリックコメントにかけられていたが、これの法律案が3月10日に国会提出された。 医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律案, 内閣官房 国会提出法案 第193回通常国会 概要 法律案・理由 「概要」を見ると、法律の題名は、「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」なのに、その略称は「次世代医療基盤法」だという。「匿名加工医療情報作成事業法」の方が実態にそぐうように思えるくらいの内容だが*2、どうなんだろうか。 早速、法律案の内容を読み込んでみたところ、大筋では悪くないとの感触(そもそもの方向性に疑問はあるにせよ)を持ったものの、テクニカルなとこ
■ IPv6の匿名アドレスはどう運用されるのか IPv6アプリコンテスト2003アイデア部門入賞作品が発表されていた。正直、IPv6の必然性を感じない作品も少なくないのだが……まあ私もかつて「Java大賞」なるコンテストに参画していたわけで、「なぜJavaでないといけないのか」というところを突かれたら私も同罪だ。 先月の日経IT Proの「記者の目」に「IPv6は普及するのか?――第1部:事例に見るv6のメリット」という記事があったのを思い出す。この中で、IPv6採用のメリットとして挙げられた4点は、「(1)セキュリティ、(2)マルチキャスト、(3)個体の把握、(4)プッシュ型配信」なのだが、このうち、「個体の把握」については考えさせされたところがある。ここで紹介されているのは、CDショップの各店舗に設置された音楽試聴機の各個体を、サーバで識別するためにIPアドレスをそのまま使うという話の
■ 「都税クレジットカードお支払サイト」流出事件の責任は誰がとるのか 残念なニュースが入ってきた。 都税のサイトに不正アクセス 67万件余の個人情報流出か, NHKニュース, 2017年3月10日 このサイトについては、今年の正月早々に以下の件で話題になっていた。 「国税クレジットカードお支払サイト」は誰が運営するサイトなのか, togetterまとめ, 2017年1月5日 このとき、タイトルには「国税……」とあるが、「国税クレジットカードお支払サイト」と「都税クレジットカードお支払サイト」の両方を話題にしていた。 これは、GMOペイメントゲートウェイ株式会社とトヨタファイナンス株式会社が組んで、東京都への都税の納税代行と、国税庁への国税の納税代行をする「クレジットカードお支払いサイト」を運営している*1のだが、サイトの画面構成からして、誰が運営主体なのか不明だということが問題となっていた
■ 鳥取県の条例改正案、非識別加工情報導入で矛盾噴出(パーソナルデータ保護法制の行方 その28) はじめに 前回の日記「個人情報ファイル概念が欠如している自治体条例」を書いた数日後、鳥取県が個人情報保護条例を改正して匿名加工情報の制度を導入するとのニュースが入ってきた。 ビッグデータ県が民間提供 産業創出へ体制整備, 日本海新聞, 2017年2月22日 鳥取県は新年度、個人情報を匿名化した上でビッグデータとして民間事業者に提供する取り組みを始める。購買行動の分析などビジネス情報として活用が想定される。県は、個人情報保護条例などの一部改正案を22日開会の2月定例会に提出する。都道府県でビッグデータ活用に関する条例改正案を提案するのは県が初めて。(略) 鳥取県議会のサイトを調べてみたところ、2月23日の総務教育常任委員会の資料として、その改正案が公表されていた。 議案第32号 鳥取県個人情報保
■ 個人情報ファイル概念が欠如している自治体条例(パーソナルデータ保護法制の行方 その27) 昨日、情報処理学会のEIP研究会で以下の発表をしてきた。 個人情報保護条例における「個人情報ファイル」概念の意義とその無整備状況の調査, 情報処理学会研究報告, Vol.2017-EIP-75, No.2, pp.1-6 同 口頭発表スライド, 2017年2月17日 内容は、データ利活用のためには「個人情報ファイル」概念が不可欠なのに、自治体の個人情報保護条例を調べたところ、「個人情報ファイル」概念を定義している自治体は3割にも満たなかったというもの。 実はこの話は、12月の規制改革会議投資等WGの第6回で、JUMPからの意見として森田先生に代わって話したことの続報である。 第6回投資等WG意見「参考1」(2ページ目以降),2016年12月15日 第6回投資等ワーキング・グループ議事録 そのときは
■ 匿名加工情報の条文構成はどう壊れて行ったか(保護法改正はどうなった その6) まえがき 「匿名加工情報」の規定ぶりがおかしく、苦しい法解釈で凌がざるを得なくなっていることは、2015年12月6日の日記「匿名加工情報は何でないか・前編(保護法改正はどうなった その2)」と2016年2月5日の日記「匿名加工情報は何でないか・前編の2(保護法改正はどうなった その4)」で詳しく書いた。 そこでの結論は、「やはり、国会でも出ていたように、「法律上の匿名加工情報を作るんだという意思を持って加工したものが匿名加工情報である」という解釈をとるほかないのではないか。」というものだった。 この理解がなかなか普及せず*1歯がゆいところだったが、11月末に公表された個人情報保護委員会のガイドラインで、この件は決着しており、次のように書かれている部分がそれである。 (※2)「作成するとき」は、匿名加工情報とし
■ 速報 対象を個人データに限る案は初期段階で存在していた(パーソナルデータ温故知新 その5) このところ(11月から)一般財団法人情報法制研究所(JILIS)の調査予算で、個人情報保護法関連法の立法過程を明らかにすべく、情報公開請求を試みている。第1弾として、内閣法制局の「法令案審議録」を請求したところ、その一部は元の文書を作成した省庁に移送され、その開示決定通知書と開示文書の写しが続々と到着している。 年末までに、作成日付ごとに区分けして整理する作業のついでにざっと目を通したところ、これはそうとう有益な情報が満載のようだということがわかり、お宝の山にホクホクといったところである。 そんな中で、早速、最も大きな発見となりそうな資料が見つかったので、速報として、以下の点について少しだけ書いておきたい。 まず、背景として、8月23日の日記「「法とコンピュータ」No.34に34頁に及ぶ論考を書
■ 宇賀克也「個人情報保護法の逐条解説」第5版を読む・前編(保護法改正はどうなった その5) 宇賀先生の大著「個人情報保護法の逐条解説」(有斐閣)の第5版が11月に出版され、その中で拙稿(ビジネス法務16巻11号の特集「改正 個人情報保護法への最新対応」中の「改正はデータ利活用を促進するか――匿名加工情報の制度概要と匿名加工基準の規則案」)についても参照して頂いている*1と聞き、早速読ませて頂いた。すると、参照して頂いた部分とは別に、いくつか重要な第4版からの変更点が見つかった。また、法改正に伴って加筆された匿名加工情報関係のところにも、重要な論点となる部分があったので、これらについて私の考えをここに書いておく*2ことにする。 識別と特定が区分された 2条1項の「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等……により特定の個人を識別することができるもの」の解説部分(38頁)に、なんと、以
■ 国土交通省が散在情報(散在個人情報)は個人情報保護法第4章の対象外と判断か ミュージシャンのASKAが逮捕前に乗ったタクシーでの車内録画映像が複数のテレビ局に提供されたことについて、関係するタクシー会社グループから状況報告の発表があり、国土交通省がこの事態を「誠に遺憾」として関係団体へ「適切な管理の徹底」を求め通知するという展開になった。 この度のチェッカーキャブ加盟会社の車内映像がテレビ等マスコミ各局にて放送されている事態につきまして, 株式会社チェッカーキャブ, 2016年11月30日 ドライブレコーダーの映像の適切な管理の徹底について, 国土交通省 報道発表資料, 2016年12月1日 今般、タクシーに装備されたドライブレコーダーにより後部座席の乗客が撮影された映像がテレビ等で放映されるという事案が発生したことから、映像の適切な管理の徹底について関係団体あて通知しました。 ドラ
■ 医学研究等倫理指針見直し3省合同会議が迷走、自滅の道へ(パーソナルデータ保護法制の行方 その26) 7月2日の日記「個人情報該当性解釈の根源的懸案が解決に向け前進」で書いていた、文科省・厚労省・経産省の3省合同会議「医学研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議」*1が、終盤になって迷走している。 これまでの経緯 事の経緯を確認すると、まず、7月2日の日記の時点を要約すると、こうだった。 元々、連結可能匿名化は、提供元においては個人情報であるとされていた。*2 元々、連結不可能匿名化は、非個人情報化に当たるとされていた。*3 個人情報保護法の改正により、個人識別符号が導入され、そこに遺伝子配列が入ることから、ゲノムデータが含まれている場合は連結不可能匿名化しても個人情報のままということになる。 個人情報保護法の改正を通じて、容易照合性の解釈に係るいわゆる「提供元基準説」が政府の解
■ 容易照合性が提供元基準でファイル単位なのは昭和61年からだった(パーソナルデータ温故知新 その4) 前から書かねばと思っていたが*1、今がまさにこれを周知すべき時なので、取り急ぎ書いておく。 個人情報保護法の「個人情報」定義にある括弧書き「(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」の「他の情報と容易に照合することができ」は、今や「容易照合性」と繰り返し呼ばれるようになり、色々なところで聞かれるようになった。この「容易照合性」の解釈について、いわゆる「提供元基準」なのかそれとも「提供先基準」なのかという論点は、昨年の個人情報保護法改正案の国会審議の中で、「日本の場合、これは情報の移転元で容易照合性があるということで解釈が統一されておりまして」と政府参考人が答弁した*2ことで決着したわけだが、これについて、「いったい誰がそんな
どのように直されていったのか、それぞれの部分を比べて見てみよう。 まず最初のブロックについて。現在の日本語版と初版の英語版、そして、1回も「anonymous」と言わないように直された時点の英語版は、それぞれ以下のようになっている。 2 – Criteoの技術 オンライン・ウェブ環境:(デスクトップ、タブレット、スマートフォンのブラウザ) Criteoはパートナーサイトで匿名のブラウザクッキーを用いて訪問者に「タグ付け」を行います。Criteoによってタグ付けされたユーザーには、匿名の識別子が与えられます。Criteoがユーザーのお名前や住所などの個人情報を収集することは一切ありません。 ブラウザのクッキーは、Criteoが配信した広告を通じて訪問者が閲覧した製品および訪問したパートナーのページを記録します。パートナーのサイトからCriteoのサーバーに匿名データを転送するために、Crit
■ 放送分野ガイドラインに浮かぶ廃案旧法案の亡霊(パーソナルデータ温故知新 その3) 総務省の「視聴者プライバシー保護WG」の第2回会合を傍聴してきた。このWGは、「放送受信者等の個人情報の保護に関する指針」(放送分野ガイドライン)の改正を目指すものであり、「視聴履歴」の扱いが論点となっている。 実は私は、このガイドラインの存在をこれまで知らなかった。テレビの視聴履歴を巡っては、去年の正月に「東芝REGZA、Tポイントと連携しないと広告が表示され、連携するとテレビの操作情報がCCCに駄々漏れになる件」が話題となり、新聞各紙が各社テレビ受像機の履歴送信機能の有無について報じていたのが思い起こされるが、このガイドラインによれば、以前から、視聴履歴の取得は代金の支払い又は統計の作成の目的のみに制限*1されていたようだ。 (取得範囲の制限) 第6条 2 受信者情報取扱事業者は、放送の受信、放送番組
■ 基本方針の一部変更案に対するパブコメ提出意見 個人情報保護法7条の規定に基づき閣議決定されている「個人情報の保護に関する基本方針」の変更案に対するパブリックコメントが、7日締切で募集されていた。 正直、基本方針なんかどうせ誰も見ないしどうでもいいかなあと、軽く見ていたのだが、締切当日になって新旧対照表を見たところ、わりと重大な改変(意見1)がわりと杜撰に(意見2)行われようとしているようだったので、急いで以下の意見を書いて個人で提出しておいた。 個人情報の保護に関する基本方針の一部変更案に対する意見 東京都墨田区在住 高木浩光 2016年10月7日 意見1【一部変更案(新旧対照表)5ページ4行目*1】 「個人情報の利用に関する社会の信頼を高め、ひいては、国民一人一人がその便益を享受できる健全な高度情報通信社会の実現を可能とするもの」との記述は削除すべきでない。 (理由) 今回の基本方針
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