インタビュー 小澤征爾 小林秀雄さん、春樹さん。 小林秀雄は「モオツァルト」という随筆を書いたから、僕にとって有名な人なんだけど、考えてみたら一度会ったことがあるんです。 一九六三年にベルリン・フィルを指揮したあと、アメリカに帰る前にパリへ寄った時に、成城学園中学の同窓生である白洲チコさん夫妻から夕食に呼ばれた。そこにいたのが小林秀雄さんで、一晩いろいろ話をしました。それで翌日、彼が泊まっているベルファストっていう感じのいいホテルで朝飯を食わしてもらった時、会うなり小林さんが「小澤君、僕はあんたの親父と友達だったんだよ」と言ってくれたんです。親父(小澤開作)は戦前、北京の小澤公館で民族宥和みたいなことをやっていたんですが、そこに何週間か泊まっていたと。「親父さんには北京でお世話になったんだ」って。そのパリでの印象が強く残っています。 もう一つ、親父は終戦直後の食糧がない時期に飴を行商してい