本書の面白さは二つある。一つは土偶がヒトではなく、植物や貝を象ったフィギュアだという発見、もう一つは素人がほとんどゼロから始めて、大きな結論にたどり着くという具体的な過程である。ぜひ多くの人に読んでもらいたいと思うのは、学問はかならずしも専門家のものではないということに気づいて欲しいからである。日本の現代社会がおかれている一種の閉塞状況を打ち破るような、こうした仕事がもっと様々な領域から出てきてほしいと願う。 土偶には私はまったく興味がなかった。土偶は人物像だと思っていたので、へたくそな人物像だなあ、でおしまい。そもそも人物像だと思ったのが偏見で、その偏見は、教育もあるが、結局は自分で作ったものだったことに気づかされた。似たような偏見を自分はいたるところで持っているに違いない。それを教えられただけでも、本書を読んでよかったと思う。八十代になって反省しても遅いような気がしないでもないが、気づ