学生の時に読んだ村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」を読み返している。かつては、この作家の新刊が出るたびに単行本を買って読んだものだが、いつ頃からかこの作家の小説を面白いと思えなくなった。最後に新刊を買って読んだのは「海辺のカフカ」だったろうか。 改めて読んでみると、ストーリーは全く覚えていなかったのだけど「いるかホテル」や「羊男」などのキーワードは朧気に覚えていた。中でも特に記憶に残っていたのは「高度資本主義社会」という言葉が、作中に何度も出てきたことだ。 2019年の今、1988年に出版されたこの小説を読んでみると、ポップな幻想小説のようでいて、意外にも、当時の時代を的確に表した作品で驚いた。 思えば「ダンス・ダンス・ダンス」が世に出た年は、日本はバブルの真っただ中だった。 この頃、まさに「高度資本主義社会」を形成しつつあった日本は(作中で言われるほど洗練されたものではなかったかもしれ