たとえば、先日上梓したビジネスノンフィクション『道を継ぐ』が、まさにこれにあたります。この書籍は、8年前に49歳の若さで亡くなったある伝説の女性について、生前の彼女を知る191人に取材をさせていただき、そのエピソードをまとめたものです。 亡くなった方との個人的で大切な思い出を語っていただくので、少しでも話しやすいように、インタビューではいくつかの工夫をしました。 まず、できるかぎり、仲の良い人たち数人にまとめて話を聞く「グループインタビュー」の形式にしました。昔の思い出というのは、1人ではなかなか思い出しにくいものですが、誰かが口を開いてくれると、どんどん記憶の扉が開いてくるものです。 沈黙の時間を怖がらない また、相手が多くの人に語っていない話を聞き出したいときには、最初にこちらが自己開示をします。「実は私にもこんな経験がありまして……」と伝えることで、相手も心を開いてくれる可能性が高ま