戦後まもなく「ブギの女王」と呼ばれて大活躍した笠置シヅ子と、その楽曲を書いた服部良一を、才気あふれる音楽学者が語る。笠置がモデルのNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の放送に合わせた出版だが、内容はかなり学術的だ。 大阪育ちの両人の経歴をたどりつつ、戦前の「ラッパと娘」、戦後「東京ブギウギ」「買物ブギー」などの傑作が論じられている。日本の伝統的な音曲の要素と新しいアメリカ音楽を混ぜ合わせる服部の卓越した技法と、笠置の圧倒的な身体の躍動が見事な「リズム音曲」を生んだこと、その背景に大阪の庶民芸能文化と関西系興行資本の力があったことが、豊富な資料を使って示される。 ただし、米国文化の大量流入や日本人の対米感情などがブギウギ・ブームにどう影響したか、といった社会~文化状況に関する議論は欠けている。そこが少々残念だが、大阪の実演文化に注目する著者の観点は、東京で作られるレコードを中心に語られがちな日本