1年以上続くロシア・ウクライナ戦争、なぜプーチン大統領は引かないのか。地政学の視点から見ると、根深い世界観の対立が浮かび上がってくる。 前編「ロシアの行動は明確に『違法』なのに、プーチン大統領が頑なに態度を変えない『当然の理由』」につづき、話題の新刊『戦争の地政学』著者で国際政治学者の篠田英朗氏が、二つの異なる地政学の世界観を掘り下げる。 英米系地政学の伝統 今日「地政学」について論じている論者のほとんどは、ハウスホーファーではなく、イギリスのハルフォード・マッキンダーや、アメリカのニコラス・スパイクマンの理論を重視する。マッキンダーやスパイクマンの理論は、ハウスホーファーの理論とは、全く異なるものである。いわば世界観の面で根源的に対立している。 その意味では、戦後の日本の「地政学」の議論は、戦前のハウスホーファー信奉を是正し、アメリカとも協調できる世界観を確認する実際の外交政策と歩調を合