量子力学を学ぶとき、数学の厳密な関数論の知識が不可欠、もしくはそれがないと理解できない例があると主張される教科書などがあります。それを読んだ物理学徒たちの中には、自分達が普段行っている計算は「いい加減」で「不正確」だと思ったり、また一知半解の数学徒からマウントをとられて劣等感を持ったりする人もいるようです。そしていつの間にかに「数学が上で、理論物理学は下」だと、数学の理論こそが正しい物理学の理論を与えるものだと、潜在意識でまで思うようになり、数学に隷属化される物理学徒も見受けます。しかし数学者ではなく理論物理学者である私は、それは全く的外れだと考えています。 フォンノイマンは関数論を使って量子力学の数学的基礎を開拓したことでも有名です。彼は天下り的に量子状態の空間は完備性をもつヒルベルト空間であると定義をしました。そして物理量はその空間に作用をする自己共役演算子であると、また定義をしました