「本質を見失ってはいけない。対立構造は終わりにしましょう」――。JR東海が進めるリニア中央新幹線の工事が静岡県だけ本格着手できていない問題で、国土交通省の水嶋智鉄道局長は6月13日、静岡市内で行われた記者会見で関係者に異例の要請を行った。 「本質」とはリニアの2027年開業と環境への影響の回避・低減を指す。国土交通省は2014年10月にリニア工事を認可したが、県はリニア工事が大井川の水量減少や南アルプスの生態系に影響を及ぼすおそれがあるとして、今も工事着手を認めていない。2027年開業は今や風前のともしびだ。 「関係者がそれぞれの立場で何ができるか建設的に考えていただきたい」と水嶋局長は話すが、期待と裏腹に、JR東海と静岡県の対立は深まるばかり。建設的な議論にはほど遠い。 会談前から決定的だった県の「拒否」 話は少し前にさかのぼる。2027年に開業にこぎつけるためには、トンネル掘削の前段で