PC用の歌声合成ソフトとして開発された、バーチャルシンガー「初音ミク」。彼女は、いかにして“日本一の歌姫”へと成長したのか? その開発者やミュージシャンたちが今、はじめて明かす、誕生から5年間の秘話。そこには、人間の持つ“情熱”の物語があった。 *** 夜空から降ってきたかのように、何もない海上に初音ミクが姿を現すと、観客席からは「わぁ」という歓声ともため息ともつかない声が上がった―。 8月31日、神奈川県横浜。2007年に初音ミクが生まれてからちょうど5周年を迎えたこの日、そこでは「夏の終わりの39祭り」というイベントが行なわれていた。そのメインの出し物は、海上に噴き上げられた水のスクリーンに映しだされた、約10mの初音ミクが歌い、踊るライブ。かつて見たこともない光景に、約1万人の観客はサイリウムを振り、声の限りに声援を送った。 今や、幾度もオリコンチャートの1位を飾り、CMや雑誌の表紙