手厚い少子化対策で知られるスウェーデンでさえ… 約20年前、オーストラリア政府は、ピーク時に子供1人あたり約6000ドル(約79万円)に相当する現金を支払う「ベビーボーナス」プログラムを試みた。 キャンペーンが開始された2004年当時、国の出生率は女性ひとりあたり約1.8人だった。 このプログラムにより、2008年までに出生率は約2.0まで上昇したが、プログラムが終了してから6年後にあたる2020年までに、数値は1.6まで低下。つまり、プログラムが最初に導入されたときよりも下がった。
「あの敵愾心の強いルサンチマンの運動に辟易している」 ──トッドさんの新著『彼女たちはどこからきて、今どこにいるのか?──女性史の素描』(未邦訳)が2022年1月にフランスで刊行されました。この本では「第三波フェミニズム」やジェンダー理論がかなりきつく批判されています。 あなたに言わせれば、そうしたものは男女の間に戦争を起こそうとするものであり、現実離れしたイデオロギーだとのことです。そんなことを言うと左派のお友達が離れてしまいそうです。どうしてそんな本を書こうと思ったのでしょうか。 おっしゃるとおり、私は第三波フェミニズムと呼んでいますが、あの敵愾心の強いルサンチマンの運動に辟易しているところがあるのはたしかです。そこはおそらく私の世代の男性たちと同じです。私の世代は徹頭徹尾フェミニズムでしたし、私の社会環境でもそうでした。 私が驚いたのは、このフランスに英米流のフェミニズムに似た、敵愾
米軍トップの統合参謀本部議長として湾岸戦争を指揮し、9.11テロを受けたブッシュ政権下では国務長官を務めたコリン・パウエルが10月18日に死去した。統合参謀本部議長も国務長官もアメリカの歴史で黒人が就任したのはパウエルが初めて。人種の壁を打ち砕いた先駆者として名を残しただけでなく、党派を越えて敬愛された稀有な指導者だった。 そのパウエルが亡くなる3ヵ月前に、著名ジャーナリストのボブ・ウッドワードがインタビューしていた内容が米紙「ワシントン・ポスト」に掲載された。闘病生活、妻への思い、アフガニスタン、北朝鮮などについて率直に語っている。 多発性骨髄腫とパーキンソン病 死期が迫っていても、コリン・パウエルはまだ戦闘態勢だった。 「多発性骨髄腫を患っているし、パーキンソン病でもある。でもそれ以外は大丈夫だよ」 パウエルは7月のインタビューでそう語った。 「なんてことだよ。気の毒に……」と私が言う
ヒスパニック系、民主社会主義者であり米国史上最年少の女性下院議員でもあるアレクサンドリア・オカシオ・コルテスが、2019年1月19日、ニューヨークシティーのウィメンズマーチで、キング牧師を彷彿とさせる演説をした。クーリエ・ジャポンが全訳でお届けする。 こんにちは。ありがとう、ニューヨークシティー! みんな、ありがとう! みんな、大騒ぎする用意はいい? みんな、私たちの権利のために闘う用意はいい? みんな、私たちの国アメリカ合衆国では、誰もが愛され、誰もが正義を受けるに値し、誰もが平等な保護と繁栄を受けるに値すると言う用意はいい? ここに立ててとても光栄です。 今日、私たちがここに集まっているのが、マーティン・ルーサー・キング・デー直前の週末なのも偶然とは思えません。 というのも、この瞬間、そしていま私たちのいるところは、公民権運動が中断したところからの再開なんだと思うからです。 その「たい
政権批判を展開していたサウジアラビア人記者がトルコで「消された」事件は今も波紋を広げているが、中国では11月、習近平政権批判の自撮り“遺言”動画を投稿した2人の青年がこつ然と姿を消した。中国では今年、SNSを使った若者による政権批判事件が相次いでおり、「専制の終わりの始まりだ」と指摘する声も出ている。 中国人の命はゴミほどの価値しかない 米政府の海外向け公共放送局「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」は11月12日、23歳の中国人青年、張盼成が自撮りした動画メッセージを伝えた。北京大学内の湖畔に佇む張が8分12秒の動画で淡々と語ったのは、以下の内容だ。 「今夜は僕の最後の勤務シフトだ。短い動画を撮りたいと思う。僕は、面識がないものの僕の心に深く根ざしている人たちを応援する。僕はごく普通の中国人で、僕にだって夢が、理想が、自尊心がある。また誰にも奪うことのできない権利を持っている。 全体主義体
「もしかすると日本人は、自分たちの怒りの声を、投票所ではなく、自殺率で示すことを選んでいるのかもしれない」 トランプ現象やEU離脱は言うに及ばず、世界的にポピュリズムの流れが蔓延している。だが、日本はそうでもない。石原慎太郎や橋下徹は結果的には大きな力はもたなかった。 その背景と理由は何か? 「フィナンシャル・タイムズ」の名物記者、ジョン・プレンダーが分析する。 ポピュリズム運動が起こらない日本 ドナルド・トランプが米国の大統領となり、英国民はEU離脱を国民投票で決め、イタリアでは2016年12月、憲法改正案が国民投票で否決された。 昨今の先進諸国の政治の動きを見ていると、グローバリゼーションやテクノロジーの進歩に取り残された人々たちによって政治が大きく変わろうとしているかのように思える。蔓延しているのは、政界のエリートへの怒りである。 ところがポピュリズムの運動が起きていない先進国もある
「最大の敗者はメディア」 どこから始めたら良いだろうか……。この連載を始めて以来、こんなに筆が重く、進まなかったのは初めてだ。 いくつか理由がある。まず、反省の弁から。今回の米国大統領選挙で、「最大の敗者はメディア」とも言われている。私自身、トランプ勝利を予測できなかった。今もその意味を自問しつづけている。 正確に言うと、トランプ勝利の可能性を頭では理解していたつもりだ。選挙分析で定評あるネイト・シルバーは、投票日直前、「クリントン勝利の確率が3分の2」と予測し、私もそれを番組で伝えていた。ヒラリー・クリントン優勢ではあるが、トランプ勝利も3分の1あるということだ。番組制作陣も「まさか」に備え、2バージョンの構成案を用意してくれていた。 ただ、正直なところ、「最終的にはヒラリーが勝つだろう」と心の中では思いながら、その日を迎えていた。 クーリエ・ジャポンの特集「世界が報じた『トランプ大統領
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