『アンネの日記』は父親によって意図的に編集・削除されていた…浮かび上がる「家父長的」文脈（小川 公代）

実は『アンネの日記』は父親によって意図的に編集・削除されていた……。母親嫌悪という葛藤を抱く思春期の少女たちの姿を見つめ、愛すべき存在としてのケアラーを見出します。『ケアの倫理とエンパワメント』で知られる英文学者の小川公代さん『ケアする惑星』第1章「"ケアする人"を擁護する 『アンネの日記』再読」を再編集してお届けします。「【前篇】母親に対する社会の「敵意」…出版された『アンネの日記』はバージョン（ｃ）だった」からつづけてお読みください。 『アンネの日記』が世に出るまで 1930年代にナチス独裁体制の下でユダヤ人らの迫害が始まり、アンネ・フランクの一家は生活基盤をドイツからオランダに移した。最終的にフランク一家と友人たち8人は2年間アムステルダムの《隠れ家》で息を潜めて暮らしていたが、1944年8月4日にはついにその《隠れ家》がゲシュタポ（秘密警察）に襲われる。 捜査員は彼女らを立たせたま