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1997年出版の作品。著者紹介には「国内外のホテルに勤務。現在は翻訳下請業に従事」とある。まだ乙川さ... 1997年出版の作品。著者紹介には「国内外のホテルに勤務。現在は翻訳下請業に従事」とある。まだ乙川さんが専業作家になっていない頃の作品だ。前年にオール讀物新人賞を受賞し、本作では時代小説大賞を受賞している。 冒頭の章は陸奥国が舞台。一関藩三万石の田村家の勘定方の二人が小料理屋で酒を酌み交わしている。妻を亡くしてから長く独り身を通してきた江坂惣兵衛は、もとは武家らしいここの女将といずれ一緒になりたいと思っていて、今日はそれを同僚の林房之助に話そうと心づもりしていた。 ところが林がその女将の前身を覚えていたことから思わぬ展開になり、林の刀から女将をかばった江坂は命を落としてしまう。江坂の次男の与惣次は長く苦しい仇討の旅の末に林房之助を討つが、国元に帰ってみると、兄は公金横領の罪で切腹、江坂家は廃絶となっていた。 家を失った与惣次は江戸に出て、男たちに絡まれている女「おいと」を救ったことからその
2021/09/08 リンク