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知を探究する「幸いなる魂」はどこまでも晴れやかだ――佐藤亜紀『喜べ、幸いなる魂よ』レビュー【評者:川本 直】 | カドブン
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変わりゆく時代を懸命に泳ぎ渡ろうとするふたりの大きな愛の物語。 新刊【長編小説】佐藤亜紀『喜べ、幸... 変わりゆく時代を懸命に泳ぎ渡ろうとするふたりの大きな愛の物語。 新刊【長編小説】佐藤亜紀『喜べ、幸いなる魂よ』レビュー 書評家・作家・専門家が新刊をご紹介! 本選びにお役立てください。 佐藤亜紀『喜べ、幸いなる魂よ』 評者:川本 直 そのデビューから佐藤亜紀氏は完成された小説家だった。『バルタザールの遍歴』はオーストリア゠ハンガリー二重帝国の公爵家に生まれた一つの体に二つの魂を宿すメルヒオールとバルタザールという貴族の主人公が、ナチス・ドイツの台頭によって荒廃していく黄昏のヨーロッパを流浪しながら第二次世界大戦勃発とともにブエノスアイレスに向かうまでを超絶技巧で描き、「国際舞台にも通用する完璧な小説」と称された。 その登場から圧倒的な完成度を誇る作品を世に問う小説家は稀有だ。そして、『キャッチ=22』で世に出たジョーゼフ・ヘラーのように最初から代表作を書いてしまった作家はデビュー作を超える