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【書評】トラウマとイデオロギー──マルレーヌ・ラリュエル『ファシズムとロシア』評|乗松亨平
本書にとっては厳しいタイミングでの出版となった。だがこの厳しいタイミングだからこそ、読まれるべき... 本書にとっては厳しいタイミングでの出版となった。だがこの厳しいタイミングだからこそ、読まれるべき本である。 本書の原題は「ロシアはファシストか」である。これは修辞疑問であって、現代ロシアの政治体制をファシズムとは呼べないというのが著者の主張だ。欧米(やロシア)では絶対悪に等しい「ファシスト」というラベリングによって思考停止に陥ることを諫め、ロシアを西側と連続した反リベラリズムの潮流のなかで捉えるように説く。 著者はロシアの右派研究の世界的第一人者であり、時代の先端を捉える詳細かつ旺盛なそのリサーチは、評者もつねづね参照してきた。その視野が現代だけでなく過去にも広がっていることは、『ゲンロン7』に訳出された、ユーラシア主義とロシア宇宙主義の交錯の歴史を見渡す論文「運命としての空間」からも明らかであろう。本書は著者が積みあげてきたリサーチを凝縮したいわば「ベスト盤」となっており、ロシアの現体制
2022/04/18 リンク