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いま居る土地で人間は変わる|本屋の時間|辻山良雄
才能は別にして、もう一度人生をやり直すことができるとすれば、ブックデザイナーになりたいと思ってい... 才能は別にして、もう一度人生をやり直すことができるとすれば、ブックデザイナーになりたいと思っているほど、その職業にはあこがれがある。だから、先日まで竹尾見本帖本店で開かれていた装丁展(「BOOKS 水戸部功×名久井直子」)は、わたしにとって格別の面白さがあった。本の内容を汲み取り、直感とロジックからその本に向いた意匠を導き出す仕事の鮮やかさ……。すっかり満足して外に出て、春の神保町を歩く。少し鼻の奥がむずむずとする。 そう言えば、無用之用はこのあたりに移転したんじゃなかったかな? 「無用之用」とはどのような場所なのか、字面だけ見てもよくわからないかもしれないが、片山淳之介さんがやっているれっきとした本屋である。店の裏にある細い階段を上ると、二階の店内からあかりが漏れているのが見えた。よかった、開いている。中に入ると、坊主頭で白いシャツという変わらぬ格好で、彼がいた。 片山さんとはじめて会っ