『贖罪』は非常に告白と似た構成の作品である。『告白』と同じようなものを、というオーダーがあったのか、それとも湊かなえはこういった一人称形式の小説しか書けないのか、どちらかは分からないが、この分野において第一人者となれるほど湊かなえの腕が優れているか?といえば少なくとも技術の面において、首を傾げざるを得ない。一人称の叙述で、更に手紙やインタビューといった特殊な場面でのそれだけで作品を構成する、というのはなにも湊かなえがはじめたものではない。そして伏線や文章技術において、湊かなえが著しく上回っているということもない。こういった構成にはまだまだ伸びしろがあって、あと5作ぐらい同じような作風で勝負しても湊かなえは大丈夫であるとは僕は思うが、しかしそれは固定ファンが様式美として満足する、という『告白』大ヒットの一側面に支えられたものであることは間違いないだろう。 というと、『告白』のヒットはたまたま