2021年5月。兵庫県西宮市内の国道171号をマイカーで走っていると、カーナビの「迂回(うかい)路情報」に信じられない文字が現れた。今はなき「西宮球場」――。阪急ブレーブス(現オリックス)に憧れて野球にのめり込んだ私にとっては、あまりに懐かしい響き。時計の針を一気に少年時代に戻された気になった。ただ、こんな疑問もわいてきた。阪急のほかにも南海、近鉄、阪神と、なぜ関西では私鉄がこぞって球団を持ったのか。そして阪神以外は、どうして球場もろとも姿を消してしまったのか。謎めいたナビに導かれるように、跡地に足を運んだ。 1937(昭和12)年に誕生した西宮球場の最寄りだった阪急神戸線西宮北口駅前は、当然ながら街並みが一変していた。私が阪急戦に足を運び始めた80年代後半、球場に通じる駅南側のロータリーにはバスやタクシーがずらりと並び、飲食店などが軒を連ねた。現在、ロータリーは南北に走る今津線の線路を挟