昨年、没25年を迎えた世界的な作曲家・武満徹(1930年-1996年)は、多い時で年間300本以上も映画を観ていたという程の“シネフィル”で知られ、映画愛にあふれたエッセイなどの著作も多い。特に1983年に開館してミニシアター全盛期に人気を集めた「シネ・ヴィヴァン六本木」の映画パンフレット(※アンドレイ・タルコフスキー監督『ノスタルジア』やビクトル・エリセ監督『ミツバチのささやき』など)に掲載された、蓮實重彥との対談は今も語り継がれる伝説となっている。もちろん、武満は現代音楽の世界と同じように、映画やテレビといった“映像のための音楽”の分野にも比類なき業績を残しており、先日も彼がこのジャンルに遺した名曲をセレクトして、第一人者の尾高忠明が指揮するNHK交響楽団の演奏で新たに録音したアルバム『波の盆 武満徹 映像音楽集』がリリースされたばかり。 この度本盤について、かつて洋画の翻訳などに携わ