「最後の山窩」 「序」 最初にお断りしておきますが此の物語は「山窩」というものをご存じ ない若い人に実在していた証拠として書き残しておくものです。 実録そのものではお読み頂いて面白いものではありませんので、興味を お持ち戴くために多少脚色をいたしましたことをお許し下さい。 これを書くにあたり「田中勝也著 サンカの研究」という著書を岡野さん から拝借し記憶を新たにしました。 神代時代から続く サンカという 一定の戒律を持った自由人が、つい五十年程前まで日本全土に存在して いたことを知って頂ければ幸甚です。 註・ナデシというのは山窩(サンクワ)の一つで特に竹や藤蔓を用いた細工 を業とする者を言います。 「山釣りへの道」 私は魚釣りの好きな少年であると同時に鉱物にも興味を持っていまし た。 何故鉱物に興味をもつようになったのか、それは今思うに釣り道具 屋へ行く道筋に鉱物の標本を作る作業場があった