兼平雄樹さんは、10年以上にわたって同潤会アパートを撮り続けている写真家である。 同潤会アパートは、昭和初期に東京、横浜の16カ所に建設された鉄筋コンクリートの集合住宅である。防災理念や都市中間層への住宅供給という目的で建設されたモダンでユニークな建築として知られている。80年の時を経て古色を帯びた外観と、当時の最新技術や未来への志向をこめられたモダニズム建築としての魅力によって多くの人の興味を引きつけてきた。 すでに2カ所を除いてほとんどの同潤会アパートは取り壊されてしまったが、映画やコマーシャルなどの「舞台装置」として数え切れないほどの映像として記録されてきた。ぼく自身も何回か三ノ輪の同潤会アパートなどを撮りにいったことがある。産業遺産や廃墟やレトロ(懐古趣味)的な建築への興味は一種のブームとなっており、同潤会アパートもそうした文脈でとらえられている側面があり、被写体としては消費しつく