公立の博物館・美術館の資料を保管する収蔵庫が限界を迎えている。地域で歴史や文化を学ぶために必要な施設だが、十分な収蔵スペースが確保できなければ、資料や文化財の保存、活用もおぼつかない。一方で、収集を続ける資料を維持、管理するには相応のスペースが要り、経費もかかる。とはいえ、財政に余裕がある自治体ばかりではない。どうすればいいのか。(宮畑譲)
ピナコテーク・デア・モデルネ美術館=2021年5月、ドイツ・ミュンヘン/Hannes Magerstaedt/Getty Images (CNN) 自分の作品を有名な美術館に飾るという夢をほんの一瞬実現したドイツ人の男がいた。 しかし、この野心ある芸術家の離れ業はかえって雇い主と、さらには警察との大問題を引き起こし、チャンスへの期待はわずか数時間で消え失せた。 独タブロイド紙「南ドイツ新聞」や独ミュンヘン警察によると、51歳の展示技術者で自称「フリーランス芸術家」は2月26日、ミュンヘンにあるピナコテーク・デア・モデルネ美術館に自分の絵画をこっそり持ち込み、展示室の壁に飾った。同美術館の展示物に新たに加わったこの作品を発見した警備員は、すぐにその絵画を撤去し、男は解雇された。 男は美術館に勤務していたため通常の開館時間外でも敷地内を出入りでき、自分の絵画を展示していることに気付く者はいなか
メキシコなどで活動した女性芸術家レオノーラ・キャリントンが描いた評価額5億円の絵画が、愛知県に住む個人から愛知県美術館に寄贈され、4月26日から公開されることになりました。 愛知県美術館に寄贈されたのは「シュルレアリスム」の芸術家として活動したレオノーラ・キャリントンが1946年ごろに制作した油彩画「ウルでの狩り」です。 古代メソポタミアの都市国家「ウル」を舞台にやりを持った生き物たちが巨大な角を持つ鹿を狩る様子が表現されていて、美術館によりますとこれまでは海外に住む個人が所有していたため公開されてこなかった作品だということです。 去年秋に愛知県内に住む個人から「絵画を購入して寄贈したい」と申し出があり、美術館が希望した数点の中から、この作品を購入し寄贈してもらったということです。 評価額は5億円で、愛知県美術館の所蔵品としては4番目に高額な作品だということです。 愛知県美術館は「女性作家
ホーム / ニュース・記事 / 美術館はこれまでも抗議活動の場であった。国立西洋美術館で起きた抗議を機に、海外の事例や理論的な積み重ねを解説(文:五野井郁夫)
Photo: Keisuke Tanigawa国立西洋美術館でパレスチナ人虐殺反対のパフォーマンス、警察による介入も川崎重工に対して展覧会参加アーティストなど一部有志が企図 2024年3月11日、「国立西洋美術館」で開催された「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」の内覧会で、パレスチナでのイスラエル政府による「ジェノサイド」に反対の意を示す抗議活動が実行された。公安と見られる警察が抗議活動を制止する場面もあり、緊迫する事態となった。 Photo: Keisuke Tanigawa Photo: Keisuke Tanigawa 国立西洋美術館のオフィシャルパートナーである川崎重工業株式会社が、イスラエルと武器貿易を行うことに対する抗議だが、「展覧会出品作家有志を中心とする市民」によって計画実行されたもので、同館や展覧会主催者にとっては、全くの予想外の出来事であったとい
伊藤若冲の新発見。絵巻《果蔬図巻》を福田美術館が公開京都・嵐山にある福田美術館が、新たに発見された伊藤若冲による絵巻を初公開した。 文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長) 新たに発見・収蔵された伊藤若冲《果蔬図巻》(1791) 今年開館5年を迎える京都・嵐山の福田美術館が、伊藤若冲作(1716~1800)の新発見の絵巻を披露した。 伊藤若冲は言わずと知れた江戸時代の絵師。京都の青物問屋「枡屋」の長男として生まれ、裕福な環境のもと、独学で作品を制作した。その作風は細部まで描き込まれたものが多く、極彩色で彩られた絹本着色の作品や、即興的な筆遣いとユーモラスな表現が特徴の水彩画は、日本美術史上でも異彩を放つ。 今回披露された作品は1791年、若冲が76歳のときに描いた全長277センチ(跋文を加えると332センチ)あまりの絵巻で、《果蔬図巻(かそずかん)》と名付けられた。若冲としては珍し
大阪府の咲洲庁舎地下駐車場に置かれた美術作品。ビニールシートがめくれ、むき出しになった作品もあった=大阪市住之江区で2023年5月、山田夢留撮影 大阪府が所蔵する美術作品を地下駐車場に置くなど不適切に扱った問題で、府は30日、作品の活用や保全を検討する専門家チームの中間報告を公表した。所蔵作品を適切に活用・保全することは「所有者である府の責務」と明記し、予算を十分に確保するよう求める内容。2024年度末までに、安定した保管場所の確保や、劣化した作品の修復などを実施すべきだと指摘した。20年度以降不在となっている府の学芸員の配置なども課題に挙げた。 「アート作品活用・保全検討チーム」は23年8月に発足し、座長は山梨俊夫・前国立国際美術館長が務める。府が咲洲(さきしま)庁舎(大阪市住之江区)の地下駐車場に6年間も置いていた彫刻105点のほか、駅や公園に展示し、劣化した作品など、府所蔵の現代美術
地下駐車場に置かれた鉄製の作品には、さびが発生していた。特に右上のダクトから外気が直撃する箇所は塩素(海塩)の影響とみられる黄色みを帯びたさびが目立つ=大阪府の公表資料から、黒川弘毅さん撮影 「美術作品に直接ステッカーが貼られている」 大阪府が公表した資料には、赤茶色にさびた作品の写真とともに、目を疑うような言葉が記されていた。 所蔵する美術作品を地下駐車場に置くなど不適切に扱った問題で、府は30日、作品の活用や保全を検討する専門家チームの中間報告を公表した。中間報告では、府が咲洲(さきしま)庁舎(大阪市住之江区)の地下駐車場に6年間も置いていた彫刻105点について、さびやほこりなど「保管環境が要因と思われる劣化」があったと指摘した。 ステッカーをはがすと、その部分は周りと比べて、さびが少なかったという。温湿度の変化も調べた専門家は「(作品のさびは)2017年以降急激に進行したと考えられ、
1日に発生した地震の影響で、金沢21世紀美術館では展示室内の天井が落下するなどの被害が確認されています。 【画像】石川県がボランティア特設サイト開設 いまは“受け入れ困難”も…意思ある人は「事前登録してほしい」 金沢市の文化政策課によりますと、1日の地震発生後、施設内にある14か所の展示室で天井のガラス板が落下したり壁にひびが入るなどの被害が確認されているということです。 金沢市では最大震度5強の揺れを観測しています。市は施設を当面休館としたうえで今回被害のなかった区画を優先的に復旧させ、営業再開を目指すとしています。 金沢21世紀美術館は年間100万人を超える人が訪れる人気の観光スポット。独創的な屋外展示作品をはじめ年間を通して数多くの展示会も開催されている。
9月末に閉館した静岡県長泉町の旧ヴァンジ彫刻庭園美術館が、県に無償譲渡(寄付)されることが県議会12月定例会で決まった。美術館を運営する法人がコロナ禍で経営が行き詰まり、県に譲渡を打診してからおよそ2年。民間の力を生かしながら運営していくことで決着した。 同美術館は2002年、富士山を望む2万4千平方メートルの丘陵地に開館した。一帯はベルナール・ビュフェ美術館などともに「クレマチスの丘」と名付けられ、四季の花々が咲く庭園に、イタリアの現代彫刻家ジュリアーノ・ヴァンジの彫刻作品が屋内外に点在する。 かつては年間6万2千人が訪れていたが、コロナ禍で経営が行き詰まり、21年9月期の赤字は約1億3千万円に。同年11月、県に無償譲渡を含む運営支援を要望した。 県は外部有識者による検討会を設置し、施設の評価や活用の方向性、課題を検討した。美術品の賃借関係を解消し、公益性と収益性の両立を図るといった条件
小泉俊己さんが制作した彫刻作品「Voyage」。大阪モノレール公園東口駅に展示されているが、劣化が進んでいた=大阪府吹田市で2023年8月、山田夢留撮影 大阪府吹田市の駅のコンコースに長年置かれた彫刻作品は、劣化が進んでいた。「砂浜に打ち上げられ放置された漂流物」。作者の多摩美術大教授、小泉俊己さんは悲しみ、あきれながら、自分の作品をこう表現する。大阪府所蔵の美術作品が不適切に取り扱われていた問題が、今年明らかになった。私たちの暮らしに、社会に、なぜ美術は必要なのか。パブリックコレクションの信頼性を根底から覆す事態を通じて見えてきた根源的問いを、当事者の一人、小泉さんと考える。【聞き手・山田夢留】 【関連記事】 ミュージアムの「トリアージ」と「終活」 避けるために必要なこと 世界的名作の特別展だけではない 美術館の重要なミッションとは 美術館のコレクションは、人の営みの連なりと捉えることが
11月27日に行われた参議院予算委員会で、インバウンド需要における「稼ぐ力」のポテンシャルについて、観光や食とともに現代アートへの言及が行われた。発言者は参議院議員の吉川ゆうみ、文部科学大臣の盛山正仁、内閣総理大臣の岸田文雄 インバウンド戦略としてアートを活用するのは必要不可欠11月27日に行われた参議院予算委員会で、参議院議員の吉川ゆうみから「現代アートを“稼ぐ力に”」という提言がなされた。 吉川議員は、日本の財源のために地域づくり、観光、農業、漁業を「稼げる」という観点で活発化させるため、政府の支援が必要であると主張。そのなかで現代アートを核にした「稼ぐ力」も重要視すべきと述べた。 アートバーゼルとUBSによるアートマーケットのレポートで、世界の富裕層のアートへの投資配分は5%から20%以上と推定され、富裕層はアート、とくに現代アートへの関心が非常に高いとして、「日本の(海外)富裕層に
(CNN) フランス・パリのルーブル美術館はこのほど、4年前の家財処分中に見つかった「国宝」をコレクションに加えると発表した。 フィレンツェの画家チマブーエの手になる「嘲笑されるキリスト」は2019年、仏コンピエーニュにある高齢女性の自宅で見つかった。女性はこの希少な作品をギリシャの宗教的イコンだと思い込み、台所に保管していた。 絵の発見後に鑑定を依頼されたキャビネ・テュルカンの美術専門家、ジェローム・モンクーキル氏によると、所有者はこの縦25.4センチ、横20.3センチの絵の来歴を知らず、チマブーエの作品だとは思いもよらなかったという。 1280年に描かれた絵は2019年10月、競売に掛けられ、事前推定額の4倍以上となる約2420万ユーロ(当時のレートで約29億円)で落札された。 しかし、フランス政府がこのタイミングで介入し、絵の輸出を阻止するため「国宝」の地位を付与した。 この措置によ
文化庁はマンガやアニメ、音楽や伝統芸能などの若手の担い手を、企画段階から海外展開まで継続的に支援しようと新たに基金を創設することになりました。今年度の補正予算案に必要な費用として60億円を盛り込んでいます。 国内の人口が減少する中、マンガやアニメ、音楽や伝統芸能などの分野で海外展開が重要とされる一方、その実現には特に若手の担い手は時間を要し、継続的な支援が必要だと指摘されてきました。 このため文化庁は若手のクリエーターやアーティストに対し、作品の企画段階から海外での公演や展示まで3年程度にわたって支援するための基金を新たに創設することになりました。 具体的には国際コンクールの受賞者など将来的に活躍が期待される若手の演奏家や作曲家らを起用して海外公演などを行うプロジェクトの支援や、マンガやアニメなどの若手の作家に専門家などが助言し海外での出品や展示を支援するケースなどが想定されているというこ
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