日本で「リベラル」を自称する人々の思想的背景は、大学で習うような伝統的な哲学や倫理学とは関係がなく、社会運動をしていく中で培われたモノだと言って良いと思う。この傾向に問題を感じる「リベラル」もいるらしく、その主張を正当化するために倫理学方面の議論を参照しようとしているのだが、浮いた感じの議論になっていて宜しくない。流行りものに取り付かれていて、伝統的議論からの乖離してしまっている。少しはまともな議論が出来るように、簡単な文献を紹介してみたい。 1.『倫理学の話』 最初に読むべきは『倫理学の話』だ。2015年11月に発売された新しい本で、かなり意欲的な構成になっている。倫理学者が書いていて、記述が平易で、辞書的に使える。功利主義など伝統的な議論はもちろん、ロールズ、リバタリアニズム、「NHK ハーバード白熱教室」に出演していたサンデル教授のコミュタリアン、そしてデリダまでが──普通の話をして