『お別れホスピタル』(NHK総合)は、日の出前、5時40分の光景から始まった。まだ互いを知らない本庄(古田新太)と辺見(岸井ゆきの)が、同じ景色を見て、煙草を吸う。辺見の髪を揺らす海風と、辺見の手から吹き飛んで本庄によってキャッチされたピザのチラシの画像から伝わってくる僅かな温もりによって、寒く、それでいて凛とした早朝の空気感が手に取るようにわかる。 この第1話冒頭約3分間に、本作の全てが集約されていると思った。「仕事終わったら行こうと思って」いるピザ屋のチラシと、出勤途中であることがわかる慌ただしさから漂う辺見の「働いている人にとっての日常の一部」感。 『 彼女にとって、日の出の光景は、その後も療養病棟で誰かが亡くなり、翌朝新しい患者を迎えるという過程が繰り返されるごとに何度も映し出されることからわかるように、決して珍しくない光景だろう。それだけ彼女の日常は、誰かの死とともにあるというこ