その35 ゾー・ルンド(a.k.a ゾー・タマリス)と『天使の復讐』 猥雑でいかがわしくもカトリック的倫理感に貫かれた特異な作風で知られる映画作家アベル・フェラーラ。彼自身が演じるドリル殺人にとりつかれた男を描いた一般映画デビュー作『ドリラー・キラー』(79)は、笑える程狂った映像センスでカルト的な人気を誇りますが、次作『天使の復讐』(81)もなかなかの怪作です。 本作は二度も違う男に強姦されてしまった発話障害の女性タナの受難と復讐の物語です。心身ともに受けたショックで仕事もままならなくなっていたタナでしたが、路上でしつこくナンパして来た男をとっさに殺してしまってから突如覚醒。女性を食いものにするポン引きやチンピラを情け容赦なく血まつりに上げる連続射殺魔に変貌します。 前作のテイストに『狼よさらば』(74)を足したような内容は新鮮味に欠けますが、ヒロインのゾー・ルンド(本作ではゾー・タマリ