非正規雇用で所得も低い新しい階級「アンダークラス」が拡大しつつある――。日本社会の現状をそう分析し、警鐘を鳴らしてきた社会学者の橋本健二さん(早稲田大学教授)に、変わりゆく日本のいまを聞いた。 アンダークラスという「リアル」 ――日本社会の分析には「階級」という視点が欠かせない、と長く主張してきました。 「もうかれこれ40年近く前からです。でも、階級論は当時から『古くさい』と評判がよくなかった。『何でそんなことやっているんだ』と言われました。日本は概して中流意識が強い社会。階級という言葉にリアリティーが感じられない、とも言われてきました」 ――それが変わってきたということですね。「アンダークラス」とはどういう人たちを指すのですか。 「非正規雇用の労働者のうち、夫のいるパートの主婦を除く人たち。これが私の定義です。実はアンダークラスという言葉は2006年に発表した本でも使い、分析しましたが、