2023年の本誌12月号に「手術無しで性別変更……割れる世論」という記事が掲載された。全国紙各紙でも、23年10月25日の最高裁大法廷での、戸籍上の性別変更に必要とされている生殖不能要件を憲法違反とした決定に対する性同一性障害者の見解などが特集され、合わせて世論の動向をかなり把握できる資料となった。著者は形成外科医として男女の性別に関する手術も行ってきた経緯もあり、この問題についての関心は決して小さくない。 男女の定義から考える最高裁の判決様々な意見が入り乱れる中で、置き忘れられている議論があることを私は指摘したい。それは男と女の定義は何かということである。 性同一性障害特例法は、男女の定義から外観的なものや機能的なものを除外していない。つまりこの法律は、古典的で世間的な男女の定義である身体的な特徴に基づいて戸籍上の男女を決めている。これに対して最高裁は、戸籍上の男女は本人の自己認識で決ま