電機業界で「優等生」と呼ばれる企業がある。過去10年で1度も赤字を出していない三菱電機だ。 この10年、同業他社が痛みを伴う構造改革を強いられる中、ファクトリーオートメーション(FA)、自動車機器、電力システム、家電、エレベーター、人工衛星など幅広い事業を展開する同社は、「総合電機」の看板を下ろさずに済んだ。2000年代に不採算の半導体や携帯電話事業を切り離す構造改革を先行して実施。財務の健全性を重視した「バランス経営」で手堅く利益を上げてきた。 だが、技術の進化や社会の変化が速まり、従来のビジネスモデルが通用しなくなっており、バランス経営だけでは今後の成長が見込めない。そうした危機感を強めた杉山武史社長は今年に入り、ある策を講じた。 東京・丸の内にある三菱電機本社26階。東京湾を見渡せる開放感のあるフロアに、ラフな服装をした社員が集う部屋がある。談笑しながら打ち合わせをしているのは、社長