多様な働き方を実現する政府の労働改革関連法案が停滞していることに、経済界が懸念を強めている。各国が労働改革に着手するなかで日本の国際競争力の地盤沈下がさらに進むためだ。仕事の成果で給与を決める「脱時間給制度」は、与野党の政争に翻弄されてきた歴史。今回も同じ轍(てつ)を踏みかねないと不安の声が広がる。裁量労働制は労使であらかじめ決めた「みなし労働時間」を働いた時間とする制度。同じ仕事でも短時間で
ついに高度プロフェッショナル制度(=高プロ)を含む「働き方改革」関連法案が一気に強行採決される可能性が高まってきた。 「成果に応じた賃金がもらえる制度」や「柔軟な働き方が可能になる」といった美辞麗句から、「年収1075万円以上の労働者が対応」と、さも一般のサラリーマンには無関係かのような報道が多かったせいで、いまだに誤解している人が多いが、この「高プロ制」、サラリーマンとして働く人ならば誰もが適用範囲になり、今までは労働基準法で規制されてきたさまざまな「労働者保護」がすべて無視して、経営者のやり放題で馬車馬のようにこき使えるようになる極めて危険な制度であることがまったく認識されていない。 ブラック企業被害対策弁護団代表として、常に労働者側にたった弁護活動を行っている弁護士の佐々木亮氏(Twitter ID:@ssk_ryo)に話を聞いた。 「法案の中身を見てもらえば一目瞭然なのですが、この
裁量労働制に関する厚生労働省のデータを巡り、問題となっている「2013年度労働時間等総合実態調査」に、同じ人の残業時間が1週間よりも1カ月の方が短いなど、異常な数値が新たに87事業場で117件見つかった。立憲民主党の長妻昭代表代行が厚労省の資料を精査して発見し、21日の野党の会合で厚労省幹部が報告した。安倍晋三首相は国会で「データを撤回するとは言っていない」と答弁したが、データの信ぴょう性がさらに揺らいでいる。 また、これまで厚労省が「ない」と説明していたデータの基となる調査票が、20日に厚労省本庁舎の地下倉庫から見つかったことも判明。野党の指摘を受けて調べたところ発見されたといい、問題発覚後の調査の甘さが浮かんだ。
加藤勝信厚生労働相は五日の参院予算委員会で、「働き方」関連法案から削除する裁量労働制の拡大に関し、労働者保護につながる規制強化策も削除する考えを示した。裁量労働制は現行でも不適切な運用が問題となっており、野党からは法案に規制強化策を盛り込むよう求める声が上がっている。 検討されていた規制強化策では、自分の裁量で仕事をすることが難しい新入社員らに適用させないよう要件として「勤続三年以上」を追加。裁量制で働く人が出退勤の時間を自由に決められることも明確にする内容を盛り込む予定だった。 さらに、裁量労働制が長時間労働につながりやすいとの指摘を踏まえ「健康確保措置」の充実も明記する方針だった。具体的には、(1)終業から始業までの時間の確保(インターバル規制)(2)労働時間が一定量を超えないようにするための措置(3)有給休暇の付与(4)健康診断の実施-のうち、一つ以上を行うよう企業側に義務付ける内容
働き方改革関連法が参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立したことを受け、安倍晋三首相は29日、「70年ぶりの大改革だ。長時間労働を是正し、非正規という言葉を一掃していく」と首相官邸で記者団に語った。 首相の発言は、長時間労働を抑制するため、成立した法律が残業時間の罰則付き上限規制を設けたことを念頭に置いたものだが、野党が過労死を招きかねないと批判し続けた「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」も2019年4月から導入される。 この制度をめぐっては、年収1075万円以上の一部専門職について労働時間に関する保護から外されることから、働き過ぎにつながる懸念が繰り返し指摘された。首相は記者団に「国会で様々なご議論があったことを受け止めながら改革を進めていきたい」とも述べた。
自民、働き方法案、了承見送り=残業上限「中小企業除外を」 自民党は3日の総務会で、「働き方改革」関連法案の了承を見送った。罰則付きの残業時間の上限規制について、中小企業を対象から外すよう求める意見が出席者から出たためで、次回会合で改めて議論する。政府は6日の閣議決定を目指しており、竹下亘総務会長は臨時総務会の開催も検討する方針だ。 加藤厚労相、東京労働局長の処分検討=発言「甚だ不適切」 会合後、木村義雄参院議員は記者団に「中小企業は人手不足の中で、どうしても残業時間を増やさざるを得ない。どうやって乗り切るのか配慮すべきだ」と強調した。(2018/04/03-16:56) 【政治記事一覧へ】 【アクセスランキング】
<要旨> ●4月17日の東京新聞「こちら特報部」が、働き方改革関連法案に含まれる大胆な規制緩和策である高度プロフェッショナル制度(高プロ)の審議過程に、大きな問題があったことを指摘した。 ●2014年の労働政策審議会に提示されたアンケート調査結果は、「新たな労働時間制度」(高プロ)へのニーズがあることを示すものとして事務局から提示されたが、「今のままでよい」「変えたほうがよい」の二択という不自然なものだった。 ●「変えたほうがよい」の割合が規制緩和を支持しているものと見ることはできない。二択という尋ね方そのものが、高プロの「導入ありき」の審議に沿ったアンケート調査結果を出せるように、意図的にゆがめられたものだったと考えられる。 ●裁量労働制は労働政策審議会に提示したデータに問題があったことによって法案からの撤回に至ったが、高プロも審議過程に問題があったことが明らかになった。 ●「ニーズに応
時間外労働に上限規制を設ける一方、高収入の一部専門職を労働時間の規制から外す制度の導入などを盛り込んだ、働き方改革関連法案について、自民党の総務会で法案審査が行われましたが、中小企業への配慮を求める意見が出され、了承は見送られました。 3日、自民党の総務会で法案の審査が行われ、一部の出席者が「時間外労働に上限規制を設けることは、人手不足の中小企業にとっては脅威であり、配慮が足りない」として、法案の対象から中小企業を外すよう強く主張しました。 これを受けて総務会は、法案を3日了承するのは見送り、改めて議論することになりました。 このあと、竹下総務会長は記者会見で「働き方改革そのものに反対だという意見はなく、必ず議論を収束させなければならない。今週中に法案を国会に提出するには、今週6日に閣議決定することが必要になるので、その前のどこかで総務会ができるかどうかも含めて検討したい」と述べました。
(※この記事執筆後に公開された「労働時間等総合実態調査」電子データを分析したところ、この記事の主要な主張である「一般労働者の1日の労働時間は、階級わけされた法定時間外労働時間数の表に階級値をあてはめて計算したものである」との推理ははずれていたことがわかりました。記事末尾の追記をごらんください。(2018-02-24)) 厚生労働省「労働時間等総合実態調査」(2013) データとされる「1日の法定時間外労働の実績 (一般労働者) (平均的な者)」の表が国会で使われている問題について。 2月9日の国会 (衆議院予算委員会) で質問した山井和則代議士 (希望の党) のツイートで当該表の写真が公開されている。 今日の予算委員会で、長妻議員、今井議員が指摘した疑惑の厚労省調査のデータ(添付)。裁量労働制のほうが一般の労働者より労働時間が短い、と安倍総理が答弁した調査では、1日に平均23時間超、働いて
衆議院で来週にも採決の可能性がある「働き方改革関連法案」。このうち、少なくとも「高度プロフェッショナル制度(高プロ制)」については過労死を増やすため、法案から削除すべきだとして、過労死遺族らが5月16日、厚労省記者クラブで会見を開いた。 全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表は、「過労死遺族は、裁判の中で大変な苦労をして、地獄のような苦しみを味わってきた。こうした悲しみ、苦しみを誰にも味わわせたくない」と語った。 ●労災認定や使用者の責任を問うのが困難になる恐れ 高プロ制は、金融ディーラーやアナリストなど、年収1075万円以上の専門職を、労働時間規制から外すもの。野党や労働者側は「スーパー裁量労働制」や「過労死促進法」などと非難している。 批判が多い「裁量労働制」の場合でも、労働者には仕事の進め方についての裁量があるとされる。また、深夜や休日の割増があることから、使用者側にも労働時間を把
1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。 上久保誠人のクリティカル・アナリティクス 国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。 バックナンバー一覧 安倍晋三政権が今国会の最重要法案と位置付けている「働き方改革関連法案」を巡り、国会が紛糾している。「裁量労働制」について首相が「一般労働者よりも労働時間が短いというデータもある」と答弁した。しかし、この答弁の根拠となった、厚労省提出の比較データが不適切だと判明し、首相が答弁を撤回し、謝罪する事態となった。その後、データの中に不自然な値が多数見つ
<はじめに> 裁量労働制の労働者と一般の労働者の労働時間の比較をめぐるデータの問題が国会で大きく展開を見せている。 筆者は2月21日の衆議院予算委員会の中央公聴会で公述人意見陳述を行い、この問題が政策立案や国会審議をめぐる問題でもあると指摘した。 公述の原稿と国会での配布資料は、立憲民主党のホームページに掲載いただいた。 ●立憲民主党【衆院予算委】「裁量労働制の拡大と高度プロフェッショナル制度の創設は一括法案から外す決断を」上西公述人 筆者はこのYahoo! ニュース 個人の記事で問題を追及してきたので、こちらにも本日の公述人意見陳述の原稿を掲載しておきたい。議事録へのリンクや参照図表などはおいおい追加することとして、まずは原稿を以下に掲載しておく。 なお、公述は20分であるが、その後の質疑の中身も聞いていただければと思う。全体の内容は、衆議院インターネット審議中継から、録画でご確認いただ
過労死遺族らが5月22日13時半から首相官邸前で、今週採決される見通しの「働き方改革関連法案」、とりわけ「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)に反対する座り込みを始めた。安倍晋三首相への面談を求めている。気象庁によると、この日の東京都心の最高気温は27度で、7月上旬並だった。 高プロは、年収1075万円以上の一部専門職を労働時間規制から除外するもの。「全国過労死を考える家族の会」代表の寺西笑子さんは、高プロの導入により過労死が増えるとして、「強行採決はしてはならない」と強い口調で訴えた。 ●労働者が求めているかのような説明に憤り 寺西さんの夫は飲食店の店長で、1996年に過労自殺した。会社からは当初、「店長には裁量がある。勝手に働いて、勝手に死んだ」と言われたという。 寺西さんには、会社の暴言と政府の説明がダブって見える。「政府は、未だに『多様な働き方』など労働者が求めているかのような説
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