「安全な水道水だと思っていたので…。まさか、ですよね」 岡山の山あいのおよそ1000人が暮らす小さな地区で、水道水が有害とされる化学物質「PFAS」に汚染されていることがわかりました。 住民からあがる健康への不安の声。 いま、全国各地で“PFAS汚染”が明らかになっています。 全国の自治体ごとに河川や地下水の汚染状況がわかる「“PFAS汚染”全国マップ」を記事の中で紹介しています。 (安井俊樹、神谷佳宏、入江和祈、兵藤秀郷、柳澤あゆみ、林勇志)
「何のことだろう?」と気になるタイトルで静岡新聞が始めた「サクラエビ異変」が4年半の連載を閉じた。駿河湾へ注ぐ富士川流域に暮らす人々を巻き込み、行動に駆り立て、記者はさらに調査を深めて、また一歩進む。「課題解決型報道」としてジャーナリズムの世界でも注目された。その連載を担当した坂本昌信記者(現在、静岡新聞清水支局長)に話を聞いた。 暴かれた国策民営会社、日本軽金属株式会社の悪事 ――2018年春の漁獲減少を契機に、富士川の上流から下流にかけて起きている問題を報じていきました。第1章は「母なる富士川」として上流で問題になっている堆砂問題から始まりましたね。 「静岡新聞では編集局全員でキャンペーン連載のテーマを話し合って決めるのですが、その年はサクラエビの不漁に決まりました。 サクラエビ漁は1894年に富士川河口で、アジの船引き網漁で偶然かかって始まったとされます。現在では静岡県民のソウルフー
熊本県水俣市で1日開かれた水俣病慰霊式の後、環境省が主催した伊藤信太郎環境相との懇談会には、八つの患者・被害者団体が参加した。思いを伝える制限時間は1団体3分間。複数の団体は時間が超えると司会者にせかされ、話し続けるとマイクの音が消えた。団体は「被害者の声に丁寧に耳を傾けて」と憤った。 「最後まで言わせてやれよ」。懇談会の終盤、怒号が飛んだ。高齢男性が亡くなった妻の症状や被害を訴えている最中にマイクの音が消えたからだ。見かねた別の団体が「私たちの時間を使って」と申し出た。 続いて発言した水俣病被害者獅子島の会(鹿児島県長島町)の滝下秀喜会長(64)は、離島の患者が通院する際の交通費の補助などを求める要望書を早口で読み上げた。「懇談会は国のパフォーマンス。丁寧に話を聞く場に改善して」と話した。 水俣病被害者の会の中山裕二事務局長(70)は「マイクの音量を調整したのか」とただしたが、環境省側は
Published 2024/05/07 21:48 (JST) Updated 2024/05/07 23:39 (JST) 水俣病の被害者側と伊藤信太郎環境相の懇談の場で被害者側の発言が制止された問題で、環境省は7日、団体側の発言中に持ち時間の3分を経過したため、発言者2人のマイクの音を切ったと認めた。水俣病対策を担当する特殊疾病対策室長が8日に被害者側に謝罪する方針を明らかにした。伊藤環境相から謝罪の指示があったという。 林芳正官房長官は7日の記者会見で「関係者の意見を丁寧に聞く重要な機会に、不快な気持ちにさせてしまい適切だったとは言えない」とした。 懇談の司会を担当した木内哲平室長は7日、記者団に対し、マイクの運用について事前にアナウンスする予定だったが「読み飛ばした」と説明。発言中に音を切る行為は「不信感を与え、不適切だった」と述べた。今後の懇談については「円滑な運営を検討する」
水俣病の被害者側と伊藤信太郎環境相の懇談の場で被害者側の発言が制止された問題で、環境省は7日、団体側の発言中に持ち時間の3分を経過したため、発言者2人のマイクの音を切ったと認めた。水俣病対策を担当する特殊疾病対策室長が8日に被害者側に謝罪する方針を明らかにした。伊藤環境相から謝罪の指示があったという。 【写真】「怨」と書かれた旗が立つ。水俣病第1次訴訟判決時に熊本地裁前で開かれた「水俣病を告発する会」の集会=1973年3月20日 林芳正官房長官は7日の記者会見で「関係者の意見を丁寧に聞く重要な機会に、不快な気持ちにさせてしまい適切だったとは言えない」とした。 懇談の司会を担当した木内哲平室長は7日、記者団に対し、マイクの運用について事前にアナウンスする予定だったが「読み飛ばした」と説明。発言中に音を切る行為は「不信感を与え、不適切だった」と述べた。今後の懇談については「円滑な運営を検討する
水俣病患者らの団体と伊藤信太郎環境相の懇談の場で、環境省職員がマイクの音を切るなどして団体側の発言を遮った問題をめぐり、伊藤氏は14日の閣議後会見で、1団体3分という時間制限が少なくとも2017年以降は継続していたと明かした。マイクの音を切るという運用方針が始まった時期はわからなかったという。 【写真】水俣病犠牲者をまつる仏壇に焼香し、頭を下げる伊藤信太郎環境相 伊藤氏は8日に団体側に謝罪した後、省内に調査を指示した。書類は残っていなかったが、当時の担当者や懇談時の写真などから把握したという。ただ、3分という制限を始めた理由はわからなかった。 また、マイクの音を切る運用方針については、伊藤氏は「何年前からかまだ不明」とした。環境省は7日時点では、この運用方針は昨年もあったものの、実際には制限時間を超えてもマイクの音を切ることは一度もなかったと説明していた。(市野塊)
Published 2024/05/10 12:22 (JST) Updated 2024/05/10 17:22 (JST) 熊本県の木村敬知事は10日の定例記者会見で、水俣病被害者の発言遮断問題を巡り、伊藤信太郎環境相や環境省職員が懇談後に被害者側から「事実上つるし上げ」に遭っていたと述べた。直後に不適切な発言だったと謝罪して訂正した。 懇談後に被害者側が環境省の対応について抗議していたことについて「大臣も環境省も事実上つるし上げになっていた」と表現。「つるし上げ」の真意について問われると「訂正する。申し訳ない。(被害者側が)非常に厳しい怒りを込めて叱責されていたことを言いたかった」と釈明した。
水俣病と認定されておらず、救済策の対象にもならなかった関西などに住む128人の原告全員を水俣病と認定して、国などに賠償を命じた大阪地方裁判所の判決を不服として、国は10日、大阪高等裁判所に控訴しました。 昭和30年代から40年代にかけて、熊本県や鹿児島県に住み、その後、関西などに移り住んだ128人は、水俣病に認定されていない人を救済する特別措置法で、住んでいた「地域」や「年代」によって救済の対象外とされたのは不当だとして国と熊本県、それに原因企業のチッソに賠償を求めました。 9月27日、大阪地裁は、特別措置法の基準外でも水俣病にり患する可能性があるとする、初めての司法判断を示して原告全員を水俣病と認定し、国と熊本県、チッソに合わせておよそ3億5000万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。 この判決について国は10日、大阪高裁に控訴しました。 控訴した理由について環境省は、今回の判決が、水
一部の物質で有害性が指摘されている有機フッ素化合物の「PFAS」が各地の河川や地下水などから高い濃度で検出され、住民に不安が広がっていることなどを受けて、環境省はPFASの健康影響についての研究を本格化させる方針です。 環境省によりますと、PFASの一部の物質について、アメリカなどの研究では、発がん性や子どもの成長への影響が指摘されていますが、国内では、いまだ十分な科学的知見がないとしています。 こうした中、環境省がとりまとめた令和3年度の自治体の調査では、13都府県の81地点の河川や地下水で暫定的な目標値を超える濃度のPFASが検出されるなど住民の不安が広がっているとして、環境省はPFASによる神経発達や生殖、それに免疫系への影響のほか、発がん性などについて本格的に研究を進め、健康影響を未然に防ぐ対策を進める方針です。 環境省は研究を踏まえて、飲み水などのPFAS濃度を1リットル当たり5
<海洋生物では早くから報告されてきたマイクロプラスチックの健康への悪影響だが、哺乳類の健康への影響、とくに神経症状を調査した研究はほとんどなかった。様々な濃度のマイクロプラスチック入りの水を高齢マウスと若いマウスのグループに飲ませた結果...> 20世紀以降、人工物で分解されにくいプラスチックは、生活の中にどんどん増えています。経済協力開発機構(OECD)によると、2019年には世界で約4億6000万トンのプラスチックが消費され、プラスチックごみが約3億5300万トン発生しました。プラスチックごみは2000年の約1億5600万トンから倍以上に増加しています。 プラスチックごみで、とくに問題視されているのが「マイクロプラスチック」です。ペットボトルやビニール袋などは、自然環境中で紫外線などに晒されて劣化すると破砕・細分化され、概ね直径5ミリ以下の微小な粒子となるとマイクロプラスチックと呼ばれ
全国各地で汚染が表面化しているPFAS(ピーファス、有機フッ素化合物)。大阪では今年9月、府内在住の住民1000人を対象に血中のPFAS濃度を測定する血液検査が始まった。大阪民主医療機関連合会(大阪民医連)などが協力者集めと採血を行い、2000年からPFASの汚染調査を続けている京都大学大学院医学研究科(公衆衛生大学院)が血液分析する。大阪で1000人規模の血液検査は初めて。 製造がストップしても環境中に残留 炭素とフッ素の化合物であるPFASは、水や油をはじく性質があり、フライパン、雨具、スニーカーなどの生活用品から半導体など工業製品の製造工程にまで幅広く使われてきた。現在、1万種類以上あるとされるPFASの中でも、1940~1950年代にアメリカの化学メーカーが開発したPFOA(ペルフルオロオクタン酸)とPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)が、最も世界的に普及した二種類のPFAS
「水俣病被害者救済特別措置法(特措法)」で救済されなかった近畿地方などに住む被害者128人が、国、熊本県、加害企業のチッソに損害賠償を求めた「ノーモア・ミナマタ近畿第2次訴訟」で27日、大阪地裁は原告全員を水俣病と認定し、総額3億5200万円の支払いを命じました。水俣病被害を矮小(わいしょう)化し、全面解決に背を向け続けた国に対し、根本的な政策転換を迫った画期的な司法判断です。岸田文雄政権は判決を真摯(しんし)に受け止め、被害者の全面救済に直ちに踏み出すべきです。 根本的な対策の転換迫る 原告は熊本、鹿児島両県の出身者で、メチル水銀に汚染された不知火(しらぬい)海の魚介類を食べ、水俣病を発症しました。しかし、2009年施行の特措法で救済の対象外にされたり、施行から3年とされた申請期限に申し出たりすることができませんでした。 特措法に基づく救済の対象は▽熊本、鹿児島両県ではチッソ水俣工場がメ
原告128人全員を水俣病患者と認めた9月27日の大阪地裁判決を受け、原告や支援者、弁護団40人は3日、環境省前ですべての水俣病患者の救済を訴えました。原告は国に対して、控訴せず交渉に応じるよう求めています。 原告は水俣病被害者救済法(特措法)の対象外地域出身者や対象外の年齢の人、出身地を離れて特措法を知らず申請しなかった人などです。判決について「対象地域の線引きなどで切り捨ててきた施策の誤りを断罪した」と指摘しています。 原告の本(もと)良夫さん(67)=兵庫県尼崎市=は鹿児島県長島町(旧東町)出身です。町を出たため特措法について知らされず、原告になりました。兄妹は裁判費用が負担できず、また仕事の都合で裁判ができない人もおり、まだ救済されていない人が多くいると指摘。「安心して医療を受けられるよう水俣病患者のための健康保険を求めている」といいます。マイクを持ち、「すべての被害者を切り捨てるこ
「まだ終わっていない」被害者団体の前代表の思い 被害者団体の代表を、2022年まで20年近く務めていた髙木勲寛さん(82)です。 髙木さんは少年時代に、祖母がイタイイタイ病で苦しむ姿や、母親が看病に追われる苦労を間近で見て育ちました。 神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会の前代表 髙木勲寛さん 日本初の公害病 イタイイタイ病 1968年、日本で初めて公害病と認定されたイタイイタイ病。 患者は骨がもろくなって、わずかな動きでも骨折し、「痛い、痛い」と苦しみながら亡くなりました。 医師の診察を受ける患者 骨折して曲がった足 患者の多くは、子どものいる30代半ば以上の農家の女性でした。 患者やその家族は、「病気がうつる」などと、誤解や偏見、差別にも苦しめられてきました。 原因は鉱山の「カドミウム」 イタイイタイ病は、神通川上流にある岐阜県の神岡鉱山から流れ出た「カドミウム」による、川や農地の汚
東京電力福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する計画をめぐり、政府は関係閣僚会議を開き、早ければあさって24日、放出を始めることを決めました。 午前10時ごろから総理大臣官邸で開かれた関係閣僚会議には岸田総理大臣をはじめ、西村経済産業大臣や渡辺復興大臣らが出席しました。 処理水の放出計画をめぐって政府は、先月、IAEA=国際原子力機関から「国際的な安全基準に合致している」と結論づける報告書が出されたことも踏まえ、国内の漁業者などに加え、各国への説明を続けながら、放出を始める具体的な時期を検討してきました。 そして、岸田総理大臣は、放出時期を判断すべき最終段階にあるとして、おとといは原発を視察し、きのうは全漁連=全国漁業協同組合連合会の代表者らと面会して重ねて理解を求めました。 政府は、国内外で計画への理解は進みつつあるとして、安全性の確保や風評対策を徹底していくことを改めて確認した上
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く