三島由紀夫が死んで今年の11月で50年になる。その前年、1969年の5月に三島は東大の駒場キャンパスの900番教室で単身東大全共闘との「討論」に臨んだ。逸失していたと思われていたその時の映像が最近TBSの倉庫から発見された。それを再編集して、関係者たちのコメントを付したものが劇場公開されることになった。 69年の5月に私はお茶の水の予備校に通っていた。「三島が駒場に乗り込んだ」ということは予備校でもすぐに話題になった。一月後に新潮社から出た討論本をむさぼるように読み「君たちが一言『天皇』と言えば、私は諸君と共闘する用意がある」という三島の驚くべき発言はそこで知った。でも、18歳の私にはその三島の真意が奈辺にあるのかがわからなかった。 それからずいぶん経って、日本未公開のポール・シュレイダーの『ミシマ』を観た。映画のクライマックスは駒場での東大全共闘との討論の場面だった。緒形拳演じる三島は黒