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内田樹の検索結果241 - 280 件 / 426件

  • 三島由紀夫対東大全共闘から50年 - 内田樹の研究室

    三島由紀夫が死んで今年の11月で50年になる。その前年、1969年の5月に三島は東大の駒場キャンパスの900番教室で単身東大全共闘との「討論」に臨んだ。逸失していたと思われていたその時の映像が最近TBSの倉庫から発見された。それを再編集して、関係者たちのコメントを付したものが劇場公開されることになった。 69年の5月に私はお茶の水の予備校に通っていた。「三島が駒場に乗り込んだ」ということは予備校でもすぐに話題になった。一月後に新潮社から出た討論本をむさぼるように読み「君たちが一言『天皇』と言えば、私は諸君と共闘する用意がある」という三島の驚くべき発言はそこで知った。でも、18歳の私にはその三島の真意が奈辺にあるのかがわからなかった。 それからずいぶん経って、日本未公開のポール・シュレイダーの『ミシマ』を観た。映画のクライマックスは駒場での東大全共闘との討論の場面だった。緒形拳演じる三島は黒

    • 政治の季節 - 内田樹の研究室

      三島由紀夫の没後50年ということで、いろいろな企画がなされている。これは三島由紀夫のドキュメンタリー映画のパンフレットに書いた文章。 昨日の寺子屋ゼミで「政治的とはどういうことか」について話したのだけれど、その話をしている。 ある時代が政治的であるということは、人々がかまびすしくおのれの政治的意見を語り、政治的組織に属し、運動をするという外形的な兆候を指すのではない。例えば、今の日本でもメディアには政治を語る言説があふれているし、党派的にふるまう人はそこらに数えきれないほど存在するけれども、私は現代日本人を政治的とは見なさない。現代日本は「非政治的な季節」のうちにあると思っている。 それは「政治的」であるというのは、自分個人の生き方が国の運命とリンクしているような「気がする」ということだからである。 個人的な定義なので、別に一般性を要求しているわけではないけれども、私はそう思っている。 現

      • 内田樹「『高齢者の集団自決』の提言 日本の国運の衰退の解決にはならない」〈AERA〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース

        哲学者の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、倫理的視点からアプローチします。 *  *  * 若い経済学者が高齢化について「唯一の解決策ははっきりしている」として、「高齢者の集団自決」を提言したことが話題になっている。「人間は引き際が重要だと思う」ということも、「過去の功績を使って居座り続ける人がいろいろなレイヤーで多すぎる」ということも事実の摘示としては間違っていない。でも、この人が「解決」と呼んでいるものは、やってもたぶん「解決」にはならないと思う。 似たようなロジックでかつてドイツは「ユダヤ人問題の最終的解決」を企てた。問題そのものをなくすことで問題が解決できると信じてホロコーストを始めたのである。だが、いくらユダヤ人を殺してもドイツの国運は向上しなかった。やむなく、「チャーチルもルーズベルトもスターリンも世界ユダヤ政府の走狗(そうく)だ」と「

          内田樹「『高齢者の集団自決』の提言 日本の国運の衰退の解決にはならない」〈AERA〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
        • 内田樹 on Twitter: "今政府は「戦争ができる国」に国家改造しているわけですけれど、これは「ほんとうに戦争をする気がある」からそうしているわけじゃなくて、「そのうち戦争になるぞ」と言っておくとふだんなら通るはずのない無理が通るという「成功体験」に味をしめたからじゃないですか。"

          今政府は「戦争ができる国」に国家改造しているわけですけれど、これは「ほんとうに戦争をする気がある」からそうしているわけじゃなくて、「そのうち戦争になるぞ」と言っておくとふだんなら通るはずのない無理が通るという「成功体験」に味をしめたからじゃないですか。

            内田樹 on Twitter: "今政府は「戦争ができる国」に国家改造しているわけですけれど、これは「ほんとうに戦争をする気がある」からそうしているわけじゃなくて、「そのうち戦争になるぞ」と言っておくとふだんなら通るはずのない無理が通るという「成功体験」に味をしめたからじゃないですか。"
          • ちくま学芸文庫版 加藤典洋「敗戦後論」の内田樹氏による解説 - jmiyazaの日記(日々平安録2)

            ちくま学芸文庫版の「敗戦後論」は2015年の刊行である。1997年に講談社より刊行された原著の出版から20年近くたっている。 本書には2005年刊のちくま文庫版「敗戦後論」に付された内田樹氏による「卑しい街の騎士」という解説と、2015年刊行のちくま学芸文庫版のためにかかれた「1995年という時代と「敗戦後論」」という伊東祐史の解説の二つの解説が付されている。1997年といえば今から22年前だから、わたくしが50歳くらい、 この「敗戦後論」は原著の刊行当時の論壇ではほとんど袋叩きという感じで、その悪評を見ていて、それほどの言われ方をするというのはどんな本なのかなと思って手にとってみたと記憶している。「敗戦後論」「戦後後論」「語り口の問題」の三つの論文をおさめた本であるが、わたくしには「戦後後論」での太宰治やサリンジャー、「語り口の問題」でのアーレントを論じた部分が面白く(要するに、政治の議

              ちくま学芸文庫版 加藤典洋「敗戦後論」の内田樹氏による解説 - jmiyazaの日記(日々平安録2)
            • コロナが学校教育に問いかけたこと - 内田樹の研究室

              感染がまだ収束していない段階で、「ポストコロナ期に社会はどう変わるか」を問うのはいささか前のめりの気もする。でも、そういう未来予測を行うことはたいせつなことだと私は思っている。いまの時点で「予兆」として見えて来たもののうちいくつかはのちに現実化し、いくつかはそのまま立ち消えになる。何かは実現し、何かは実現しない。「起きてもよいはずのこと」のうちいくつかは起こらない。なぜ「起きてもよいこと」は起こらなかったのか、それを思量することは私たちの社会の基盤をかたちづくっている「不可視の構造」を手探りするためには有効な作業だと私は思う。 歴史家は「起きたこと」について「それはなぜ起きたか」を説明してくれるが、「起きてもよかったのに起きなかったこと」については何も教えてくれない。歴史家の仕事ではないからよいのだが、私は気になる。いまコロナ感染爆発の渦中にあって、いくつかの社会的変化の予兆が見えている。

              • 安倍政権を総括する - 内田樹の研究室

                辞任後に『週刊金曜日』に寄稿したもの。 政権の功罪について、私から指摘したいのは一つだけにしておく。それは「道徳的インテグリティ(廉直、誠実、高潔)」の欠如ということである。 政治指導者は道徳的なインテグリティを具えているべきだと私は思っている。少なくとも、そのような人間であると国民に信じ込ませる努力をするべきだと思っている。安倍政権の最大の特徴は、このような努力をまったくしなかったことである。 それどころか、権力者であるということは、道徳的な規範に従う必要がないということだという「新しい判断」をメディアを通じて全国民に刷り込んだ。私はこれ安倍政権のもたらした最大の災禍だったと思う。 私たちは今はもう政治家であれ、官僚であれ、財界人であれ、指導者たちが「国民全体の福利」をめざして行動しているということを信じていない。彼らは自分の仲間、手下、支持者、縁故者、そしてもちろん自分自身の利益のため

                • コロナ禍で未知のマイナス成長期へ 内田樹「五輪、万博、リニアなどはむしろ害に」 | AERA dot. (アエラドット)

                  内田樹(うちだ・たつる)/1950年、東京都生まれ。思想家・武道家。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、合気道凱風館館長。近著に『街場の天皇論』、主な著書は『直感は割と正しい 内田樹の大市民講座』『アジア辺境論 これが日本の生きる道』など多数 ※写真はイメージ(gettyimages) 哲学者の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、倫理的視点からアプローチします。 【対談】岩田健太郎×内田樹 明かしたコロナ対策の実情 *  *  * コロナ禍の経済への打撃は予想を超えて大きい。IMF(国際通貨基金)は2020年の世界経済の成長率はマイナス3.0%と予測。世界恐慌以来の数字である。米国はマイナス5.9%、ユーロ圏はマイナス7.5%、日本はマイナス5.2%。感染が年末までに終息しなければ、21年も

                    コロナ禍で未知のマイナス成長期へ 内田樹「五輪、万博、リニアなどはむしろ害に」 | AERA dot. (アエラドット)
                  • 倉吉の汽水空港でこんな話をした。 - 内田樹の研究室

                    2021年1月17日に倉吉の汽水空港という不思議な名前の書店に招かれて、お話と質疑応答をした。私の講演部分だけ採録。 ここ汽水空港がこの地域の文化的な発信拠点となっているようですが、同じようなことが今日本各地で起こっています。共通項は、壁に本棚、コーヒーが飲める木造のスペースということでしょうか。新しい時代のモデルというのはイデオロギーとか理念とかではなく、実はイメージなんじゃないかと思います。手触りとか、匂いとか、そういうものにリアリティがあれば、イメージは浸透力を持ち現実変成力がある。 何かトレンドが起きるときは、イメージが先行するんです。大学にポストを得て初めて授業をした日、僕はツイードのジャケットにダンガリーのシャツ、黒いニットタイにボストンの眼鏡といういでたちで教壇に立ちました。授業の後に学生から「そんなに着込んで暑くないですか?」と訊かれて、四月中ごろにどうしてオレはこんな格好

                    • 自分のヴォイスをみつけるためのエクササイズ - 内田樹の研究室

                      ずいぶん前になるけれども、自分のヴォイスをまだみつけていない青年がいた。彼が自分のヴォイスで自分について語れるようになることが急務であるという状況だったので、3年ちかくにわたって「作文の個人授業」をした。最後の課題に返信がないままこの文通は中絶したが、それはたぶん彼がもう「エクササイズ」を必要としなくなるだけ自分の文体をしっかり手にしたからだろう。あるいは最後の課題が彼にはとても書きにくいものだっただけの理由かも知れない。 作文の会というところで「自分のヴォイスをみつける」という演題で話すことになったので、HDの筐底から昔のやり取りを掘り出して読んでみた。彼からの課題の「答案」は抜いて、私が出した課題だけをここにリストしておく。 作文教育について一助となるといいのだが。 O川さま こんにちは。内田樹です。 今日は遠いところを来てくれてありがとうございました。 君に必要なのは、身体と、言葉の

                      • 岩田健太郎医師「ロックダウンと言い続けた理由」 内田樹との対談で明かしたコロナ対策の実情〈AERA〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース

                        新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が7都府県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県)に発出されて3日が経った。期間は5月6日までの1カ月間。10日午後には、愛知県も独自の緊急事態宣言を出した。各都府県の知事が住民の外出自粛要請などの措置をとる。ただ強制力はなく、あくまで「要請」となる。 【対談の続きが掲載される「AERA」はこちら】 そんな中、以前から外出を控える要請の必要性を強く提唱していたのが、神戸大学病院感染症内科の岩田健太郎教授だ。記憶にも新しいクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」内の感染対策をYouTubeで配信したことがきっかけで、新型コロナウイルスに対しての世間の目と意識は大きく変わった。その後もツイッターなどのSNSを通じて、あえて「ロックダウン」の言葉を用いて喫緊の規制を求めてきた。 週刊誌「AERA」では4月3日(金)、岩

                          岩田健太郎医師「ロックダウンと言い続けた理由」 内田樹との対談で明かしたコロナ対策の実情〈AERA〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
                        • えらてんさんとの対談本の「まえがき」 - 内田樹の研究室

                          もうすぐ晶文社からえらてんさんとの対談本(司会は中田考先生という濃い布陣)が出ます。その「まえがき」を書きました。予告編としてお読みください。 みなさん、こんにちは、内田樹です。 今回は矢内東紀(akaえらてん)さんとの対談本です。司会は中田考先生にお願いいたしました。これがどういう趣旨の本であるかについて、最初にご説明したいと思います。ちょっと遠回りしますけれど、ご容赦ください。 だいぶ前のことですが、大瀧詠一さんがラジオの『新春放談』で山下達郎さんを相手に、「ほんとうに新しいものはいつも『思いがけないところ』から出て来る」と語ったことがありました。ポップミュージックについての話でしたけれども、僕はあらゆる領域にこの言明は当てはまると思いました。「ほんとうに新しいもの」はつねに「そんなところから新しいものが出て来るとは誰も予想していなかったところ」から登場してくる。 音楽だけではなく、美

                          • 内田樹「日本社会の生きづらさに“現状維持”を望む若者 負のスパイラルの始まりだ」 | AERA dot. (アエラドット)

                            哲学者 内田樹 ※写真はイメージ(gettyimages) 哲学者の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、倫理的視点からアプローチします。 *  *  * 「若者ほど内閣支持」という見出しを見て胸を衝かれた。毎日新聞が11月7日に行った世論調査によると、内閣支持率は全体で57%だが若い世代ほど高い。18~29歳では支持率が80%、30代が66%。以下しだいに下がって、80歳以上が45%で最低。 首相の日本学術会議新会員の任命拒否についても、18~29歳は「問題だとは思わない」が59%に達した。 今の日本は若いほど政府の主張に理解を示していることがわかる。年齢が低いほど現状肯定的になり、変化を嫌うというような現象を私は70年生きてきてはじめて見た。 識者によると、若い人にとって今があまりに生きにくい時代なので、「これ以上悪くならないように」という願いが彼

                              内田樹「日本社会の生きづらさに“現状維持”を望む若者 負のスパイラルの始まりだ」 | AERA dot. (アエラドット)
                            • 内田樹「林業の成長をめざすための法律が、日本の国有林を禿山にする」〈AERA〉

                              哲学者の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、倫理的視点からアプローチします。

                                内田樹「林業の成長をめざすための法律が、日本の国有林を禿山にする」〈AERA〉
                              • 内田樹が語る「コロナ禍という大義名分で“暴力性をリリース”する人々」 | 文春オンライン

                                新型コロナウイルスのパンデミックという未曾有の事態は、日本社会をどう変容させたのだろうか。長期にわたる行動制限下で社会に鬱積したもの、危機的状況下で陰謀史観にひかれる危うさとは? 新著『コロナ後の世界』を上梓した思想家・内田樹さんの特別インタビュー。 内田 新型コロナウイルスの拡大によって日本社会のあり方が変わったというよりは、もともとから存在した日本社会の欠点が可視化されたんだと思います。すでにあちこちにひびが入っていたシステムの不備が露呈した。 市民の相互監視もその一つです。休業要請が出ているのに開けている飲食店に嫌がらせをしたり、緊急事態宣言中に県外から来た車を傷つけたりする人たちがわらわらと登場してきた。「いまならそういう私的制裁をやっても許される」と思う人たちが暴力的にふるまうことを「世間の空気」が許してしまった。これはほんとうに危険なことだと思います。 ――自粛警察による、“不

                                  内田樹が語る「コロナ禍という大義名分で“暴力性をリリース”する人々」 | 文春オンライン
                                • 「人口減少社会の病弊」 - 内田樹の研究室

                                  あるマイナーな媒体から上のような標題で寄稿依頼された。一般の方のお目にとまる機会がなさそうなので、ここに再録しておく。でも、書いているのは「いつもの話」である。 というタイトルを編集部からご依頼された。論じて欲しいトピックとして「子どもを産み育てる社会的環境がなぜ整備されないのか」、「このままではどのような将来が想定されるのか」、「解決策はあるのか」が示された。 そういう寄稿依頼を受けておいてほんとうに申し訳ないのだけれど、実は「人口減」を「病」というふうに考えること自体に私は反対である。「反対」というのはちょっと言い過ぎかも知れないので「懐疑的」くらいにしておく。「人口減」は果たして「病」なのであろうか? 若い方はご存じないと思うけれど、「人口問題」というのは、少し前までは「人口爆発」のことであった。1975年にローマクラブが「成長の限界」というレポートを出したことがあった。このまま人口

                                  • 内田樹氏、「断韓」を中刷りにした週刊ポストに怒ったわけ(ニュースソクラ) - Yahoo!ニュース

                                    ――それは戦前の絶対君主的国家に帰るということですか? 内田 絶対君主的な国家にはなりません。なりたくてもなれない。戦前なら「天壌無窮の皇運を扶翼すべし」とか「八紘一宇」とか「大東亜共栄圏」とか、国策を飾るイデオロギーがあったけれど、いまの日本が目指している独裁体制にはイデオロギーがありません。しかたがないから、74年前に敗戦で放棄したはずの大日本帝国のイデオロギーを拾い上げてきて、使い回ししている。 でも、そういう誇大妄想的なイデオロギーがかつてはそれでも使い物になったのは、大日本帝国が主権国家であり、植民地帝国であり、世界有数の常備軍を有した大国だったからです。今の日本は、そのどれでもありません。アメリカの属国である日本に超国家主義のイデオロギーを掲げられるほどの力はありません。 日本が国家目標として掲げることができるのは「金」だけです。だとすると、モデルとなるのはシンガポールになる。

                                      内田樹氏、「断韓」を中刷りにした週刊ポストに怒ったわけ(ニュースソクラ) - Yahoo!ニュース
                                    • 『日本習合論』ちょっと立ち読み - 内田樹の研究室

                                      『日本習合論』の販促のために、第一章の一部、共感主義について書いたところを再録しました。ちょっと立ち読みしていってください。 世を覆っている共感主義の基本にあるのは先ほど来僕が指摘している「多数派は正しい」という信憑です。多数派に属していないということは「変なこと」を考えたり、しているからであって、それは多数派に合わせて矯正しなければならない。そういうふうに考える人がたくさんいる。若い人にも多く見かけます。でもね、そういうのを「事大主義」と言うのです。 あるインタビューで「じだいしゅぎ」と言ったら文字起こし原稿には「時代主義」と書かれていました。なるほど、「時代の趨勢(すうせい)に逆らわない」から「時代主義」なのか。インタビュアーは若い人でした。熟語は知らないけれど、造語能力はあるなあと思いました。 でも、「じだい主義」の「じだい」は時代じゃなくて事大です。「大(だい)に事(つか)える」。

                                      • 内田樹さんが中高生に伝えたい、ポストコロナ期の仕事について|じんぶん堂

                                        記事:晶文社 内田樹編『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』 書籍情報はこちら 最初に仕事の話をします。これから仕事はどうなるかということです。 中学生高校生にとって喫緊の問題は、「これからどういう専門分野の知識技術を身につけて、先行きどういう仕事に就いたらいいか?」ということです。政治がどうなるとか、経済がどうなるとか、人口減少がどうなるとかいう大きな話をするより先に、順序としてはより身近な就職の話から始めましょう(でも、ほんとうを言うと、就職の話をきちんとするためには、未来のほとんどすべての領域についてある程度たしかな予測を立てておかないといけないんです)。 みなさんの多くはこれから受験を控えているわけですけれど、どんな専門領域に進学「したい」のかという「好き/嫌い」とは別に、どんな専門領域に進学したら「食える/食えない」ということを考えていると思います。もちろん「好きなことをして食える

                                          内田樹さんが中高生に伝えたい、ポストコロナ期の仕事について|じんぶん堂
                                        • アメリカ大統領選を総括する - 内田樹の研究室

                                          ある媒体にインタビューを受けて、アメリカ大統領選について総括的なコメントをした。少し言い足りないところがあったので、それを追加して、前半だけ採録しておく。 当選確定後、バイデンは自分に投票しなかったトランプ支持者にもひとしく配慮すると約束しました。トランプに投票した人は7380万人。浮動票を除いてもトランプのコアな支持者が今もアメリカ国内には数千万人いるということです。バイデンは彼らの立場や要求にも配慮しながら統治を進めなければいけない。困難な仕事になると思います。 それはアメリカ社会はどのようなものであるべきかについて、その「アイディア」によって現在の国民的分断がもたらされているからです。僕はそれを「自由」と「平等」のどちらをアメリカの本質的な理念に掲げるか、その選択の違いによるものではないかと考えています。それについて少し説明します。 まず第一に確認して欲しいことは、そもそもアメリカの

                                          • 内田樹氏、「断韓」を中刷りにした週刊ポストに怒ったわけ(ニュースソクラ) - Yahoo!ニュース

                                            神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏に『週刊ポスト』の嫌韓的記事の特集を入り口に、横行する排外主義などについて聞いた。内田氏は背景に、中国など独裁国家の経済的成功があるという。(聞き手は角田裕育) ――今回の『週刊ポスト』の嫌韓的排外主義的な記事の見出しに憤りを表明し、今後は一切寄稿しないと宣言されました。しかし『週刊ポスト』関係者は記事の内容は数号前から変わっていないのにと考えているようです。 内田樹氏(以下内田) 週刊ポストの実売は35万部、記事の詳細にまで眼を通す人は多くありませんが、新聞広告の見出しや中づり広告はその数十倍の人の目に触れます。そして、多くの人は見出しで世論の潮目を判断する。 日本には五十万の在日韓国・朝鮮人の人がいます。「韓国なんていらない」という文字列を見たら、どれほど不安な思いに駆られるか。見出しだけで判断するな、記事の詳細を読んでから文句を言えという人がいますが、

                                              内田樹氏、「断韓」を中刷りにした週刊ポストに怒ったわけ(ニュースソクラ) - Yahoo!ニュース
                                            • 日刊ゲンダイ「コロナ後の世界」 - 内田樹の研究室

                                              「コロナ禍によって、社会制度と人々のふるまいはどう変わるのか?」ここしばらく同じ質問を何度も向けられた。「変わるかも知れないし、変わらないかも知れない」というあまり役に立たない答えしか思いつかない。でも、それが正直な気持ちである。 2011年の3・11の後にも「これで社会のあり方も人々の価値観も変わるだろう。変わらないはずがない」と思ったけれど実際にはほとんど変わらなかった。環境が激変し、新しい環境への適応が求められても「変わりたくない」と強く念じれば、人間は変わらない。そして、生物の歴史が教えるのは、環境変化への適応を拒んだ生き物の運命はあまりはかばかしいものではないということである。 今の日本ははっきり言って「はかばかしくない」。それは環境が大きく変化しているにもかかわらず、日本人集団がそれに適応して変化することを拒んでいるからである。 日本人が直面している最も直接的な環境的与件は人口

                                              • Mからの手紙 - 内田樹の研究室

                                                旧友のフランス人M***から久しぶりのメールが届いた。不思議な内容の依頼だった。僕たちは昔ある大学でフランス語の教師として一緒に働いていた。うちの娘と同年のお嬢さんがいて、娘たち二人はすぐに仲良くなった。それもあってそれから家族ぐるみで付き合うようになった。僕が神戸に移った年に「フランスに遊びにおいで」と誘ってくれたので、一夏を彼の故郷に近い南仏の海岸で過ごした。 彼は日本を舞台にした「伊藤さん」という短編集を書き上げており、それを日本で出版したいというので、僕がそれを翻訳することになった。その夏は海岸で二人で草稿の上で「これはどういう日本語に訳したらいいんだろう」というようなことを話していた。 『伊藤さん』はウェルメイドな短編集だったけれど、無名のフランス人の小説を出版してくれるところは日本には見つからず、その本は結局フランスの出版社から出ることになった。残念ながら、それほど注目されず、

                                                • 憲法の話 - 内田樹の研究室

                                                  以下に引用するのは、2007年の憲法記念日に毎日新聞に寄稿した文章である。書いてから14年経つけれど、憲法をめぐる政治状況も言論状況も1ミリも深化していないことに愕然とする。 改憲の動きが進んでいる。一部の世論調査では、国民の6割が改憲に賛成だそうである。大学のゼミでも「もうすぐ憲法が改正されるんですよね」とあたかも既成事実であるがごとくに語る学生がいて驚かされた。 九条第二項の政治史的意味についての吟味を抜きにして、「改憲しないと北朝鮮が攻めてきたときに抵抗できない」というような主情的な言葉だけが先行している。 私は改憲護憲の是非よりもむしろ、憲法改定という重大な政治決定が風説と気分に流されて下されようとしている、私たちの時代を覆っている底知れない軽薄さに恐怖を覚える。 改憲とは要すれば一個の政治的決断に過ぎず、それが国益の増大に資するという判断に国民の過半が同意するなら、遅滞なく行うべ

                                                  • 村上文学の意義について - 内田樹の研究室

                                                    毎年この時期になると村上春樹さんのノーベル文学賞受賞を祝う「予定稿」を書く。最初に頼まれたのは15年ほど前になる。この世に「予定稿」というものがあることをその時に知った。たしかにニュースが飛び込んできてからでは長い原稿を書く余裕はない。だから予定稿が用意される。これは没になってもちゃんと原稿料は頂ける。「去年と同じものでも構いませんよ」と担当記者は言ってくれるのだが、それでは相済まないので、毎年ちょっとずつヴァージョンアップしたものを書き送る。 以前、『村上春樹にご用心』という本を出した時に、その前年に書いた予定稿をそのまま掲載したことがある。そのようなふざけたものを活字にするなとある文芸評論家にずいぶん叱られた。でも、「起きたこと」について「どうしてそれは起きたのか」を解釈するのと同じくらいに「起きてもよかったはずなのに起きなかったこと」について「どうしてそれは起きなかったのか」について

                                                    • 教育と産業のメタファー - 内田樹の研究室

                                                      福島みずほさんとオンラインで対談した時、「教育を語る語彙は、その時代の基幹産業で用いられる語彙が流用される」という話をした。農業が基幹産業だった時代には、教育は農業の用語で語られ、工業の時代には工業の用語で語られる。そして、最近になってついに教育が金融の用語で語られるようになった。むろん無意識にやっていることだけれども、教育の制度設計をしている人間たちは、自分たちがどれくらいに限定された語彙と限定された思考を強いられているのか気づくべきだと思う。 その配信を見ていた朴東燮先生から、この論件についてまとめて書いたものを読みたいというリクエストがあったので、いま校正中の想田和弘監督との対談本の当該箇所を抜き出して送った。それをここに採録しておく。 大学に初めて導入されたときから、シラバスは日本の教育に合わないと思いました。欧米の人にとっては有効かも知れません。でも、日本の教育は伝統的な「なんと

                                                      • 韓国メディアの悩み - 内田樹の研究室

                                                        3年ぶりに講演旅行のために韓国を訪れた。手続きがずいぶん煩瑣になったが、久しぶりに韓国の友人たちと久闊を叙すことができた。 二泊三日で二都市での講演というハードなスケジュールだったが、今回はソウルでのインタビューのあと、新聞記者たちとの懇談会というイベントがあった。ご飯を食べながら、若い女性記者たち6人と韓国のメディアの現況をめぐっておしゃべりをした。 そのうち記者たちからのあれこれの質問に私が答える「身の上相談」タイムになってしまった。どの質問もとても面白かった。日韓のメディアが直面している問題は本質的には同じものだと感じた。 最初の質問は「リテラシーの低い読者にも分かるように書け」と先輩記者から指示されるのだが、そうするとどんどん記事が薄っぺらなものになってしまう、どうしたらよいのかというものだった。 同じことを私もよく言われた。難しい言葉を使い過ぎる。ふつうの読者にも分かるように書き

                                                        • 終らない南北対立 - 内田樹の研究室

                                                          こちらはその地方紙に8月に書いたもの。南軍旗について。 少し前に、米国防長官が軍関連施設での「南軍旗」の使用禁止を通達した。BLM運動の広がりを受けて、奴隷制度存続を掲げた南部連合軍旗の軍施設内での掲揚は人種差別を肯定するものと受け止められかねないと判断したのである。 政治的には正しい判断だと思うけれど、私が記事を読んで驚いたのは、いまだに軍施設内で南軍旗が掲揚されていたことを知ったからである。 ハリウッド映画では、南軍旗が壁に掲げてあるバーでは必ずカントリー音楽が流れ、テンガロンハットをかぶってブーツを履いた男たちが、マルボロを吸い、瓶から直接ビールを飲んでいる。都会から来た車を煽ったり、若い女性を拉致したり、撃ち殺したりするピックアップトラックにはたいてい南軍旗のステッカーが貼ってある。 そういう映画的定型になじんできたせいで、南軍旗というのは米国内どこでも後進性や暴力性の記号とみなさ

                                                          • 特集ワイド:菅政権発足3カ月 「株式会社化」する日本 思想家・内田樹さん | 毎日新聞

                                                            議論避け、逆らえば左遷 「長期的には日本全体の国益を損ねる」。思想家で武道家の内田樹・神戸女学院大名誉教授(70)が今年10月、菅義偉政権の日本学術会議任命拒否問題を巡り、記者会見で述べた言葉である。政権発足から3カ月で内閣支持率は急落し、短期的にも民心が離れつつあるように見える。内田さんは、この状況をどう捉えているのだろうか。 喫緊の課題である新型コロナウイルス対策を巡り、専門家が強く求めていた「GoToトラベル」の一時停止について、菅首相はようやく年末年始を対象外にすると決断した。「感染対策と経済対策の二兎(にと)を追う者は一兎(いっと)をも得ずの典型例で、目的と手段の関係性が明らかでない。対策がない、ビジョンがない、哲学がない」 毎日新聞と社会調査研究センターが今月実施した全国世論調査で、内閣支持率が11月の57%から40%に大幅に下落し、報道各社の世論調査でも支持率は軒並み落ち込ん

                                                              特集ワイド:菅政権発足3カ月 「株式会社化」する日本 思想家・内田樹さん | 毎日新聞
                                                            • 内田樹氏『自粛しろ』に違和感…「他人に向かって命じる権利も罰する権利も誰にもない」(中日スポーツ) - Yahoo!ニュース

                                                              フランス文学者で神戸女学院大名誉教授の内田樹氏(69)が29日、自身のツイッターで、他人に向けて「自粛」を求めることについて強い違和感を訴えた。 「GWを迎えて『外出自粛』が言われていますけれど、どうしても遠出しなければならない事情の人だっているはずです」と大型連休中に急を要する長距離移動をする場合の行動の在り方について懸念した。 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言では外出自粛要請までに限定されており、欧米諸国のように罰則規定のある外出禁止令を発動することはできない。そこで「『自粛』は自己決定することです。他人に向かって『自粛しろ』と命じる権利も罰する権利も誰にもありません」と訴えた。

                                                                内田樹氏『自粛しろ』に違和感…「他人に向かって命じる権利も罰する権利も誰にもない」(中日スポーツ) - Yahoo!ニュース
                                                              • 移民の大量受け入れ、あなたはどう考えますか?──内田樹の凱風時事問答舘「これで日本も安心だ」

                                                                国交省の試算によれば、2050年の日本の総人口は約9700万人で、3000万人も減少する。労働力人口の急激な落ち込みを穴埋めするには、移民しかない!?街場の知的怪物、ウチダ先生がお答えします。 国交省の試算によれば、2050年の日本の総人口は約9700万人で、3000万人も減少する。労働力人口の急激な落ち込みを穴埋めするには、移民しかない!?街場の知的怪物、ウチダ先生がお答えします。

                                                                  移民の大量受け入れ、あなたはどう考えますか?──内田樹の凱風時事問答舘「これで日本も安心だ」
                                                                • 内田樹が観た、ドラマ『Pachinko パチンコ』──日本を舞台にしながら、日本で黙殺される理由とは?

                                                                  内田樹が観た、ドラマ『Pachinko パチンコ』──日本を舞台にしながら、日本で黙殺される理由とは? 在日コリアンの歴史を数世代にわたり描くドラマ『Pachinko パチンコ』を内田樹さんが観た。日本人が目を背けてきた歴史を明るみに出すエンタメ作品が示すものとは。

                                                                    内田樹が観た、ドラマ『Pachinko パチンコ』──日本を舞台にしながら、日本で黙殺される理由とは?
                                                                  • 複雑系と破壊のよろこび - 内田樹の研究室

                                                                    年頭にはよく「今年はどうなる」という予測を求められる。予測が外れても失うほどの知的威信もないので、気楽に予測を語ってきた。十年スパンの国際情勢についての予測などはそこそこ当たるけれど、一年くらいのスパンでの政治についての予測はだいたい外れる。それは政治が複雑系だからである。 「複雑系」というのは「北京で蝶がはばたくと、カリフォルニアで嵐が起きる」というカラフルな喩えから知れるように、わずかな入力差が巨大な出力差として現象するシステムのことである。そして、政治や経済は複雑系である。 ロシアのウクライナ侵攻はプーチン大統領の脳内に兆した「主観的願望」がスイッチになった。冷静なテクノクラートが側近にいて「大統領、それほど簡単にウクライナは降伏しませんよ。長期戦になるとロシアは失うものが多すぎます」と諫言していれば、プーチンも再考したかも知れない(しなかったかも知れない)。でも、この選択によって世

                                                                    • ホ・ヨンソン『海女たち』書評 - 内田樹の研究室

                                                                      ホ・ヨンソンの詩集『海女たち』についての書評を西日本新聞に寄稿した。済州島の海女たちを主題にした詩集である。伊地知さんに頼まれて書くことになったのだが、ほんとうに詩について書くのは苦手なのである。歌道に暗いのである。 私は韓国文学についてほとんど何も知らない。まして詩は私のもっとも苦手とする分野である。だから、日本の詩歌についてさえ一度も書評を書いたことがない。どうしてそんな人間に書評を依頼してきたのか、よく理由がわからない。おそらく訳者の姜信子さんとのご縁だろうと思う。姜さんは「かもめ組」という三人組(浪曲の玉川奈々福さん、パンソリの安聖民さんとのトリオ)で、私の主宰する凱風館で浪曲とパンソリのジョイントコンサートをしたことがある。 韓国文学には無縁の人間だが、さいわい済州島には二度だけ行ったことがある。一度は講演のために、二度目は済州島の生活文化にもその地の痛ましい歴史にも詳しい大阪市

                                                                      • 内田樹「万博中止と政権交代は毎日一回唱えます。言葉って繰り返してゆくうちに呪力を発揮します」 : 痛いニュース(ノ∀`)

                                                                        内田樹「万博中止と政権交代は毎日一回唱えます。言葉って繰り返してゆくうちに呪力を発揮します」 1 :名無しさん@涙目です。(愛媛県) [US]:2024/05/18(土) 12:06:11.31 ID:dIpYd3kS0●.net 「万博中止」と「政権交代」は毎日一回は唱えて、Twitterに書いておくようにします。言葉って繰り返してゆくうちに固有の「呪力」を発揮しますから。 https://t.co/kxJVeMoZRH— 内田樹 (@levinassien) May 16, 2024 4: 警備員[Lv.5][新苗](茸) [PT] 2024/05/18(土) 12:07:00.94 ID:4INwlCf10 宗教かな 12: 警備員[Lv.40][苗](ジパング) [ニダ] 2024/05/18(土) 12:10:19.20 ID:xVI+lMuo0 痴の巨人 13: 名無しさん@

                                                                          内田樹「万博中止と政権交代は毎日一回唱えます。言葉って繰り返してゆくうちに呪力を発揮します」 : 痛いニュース(ノ∀`)
                                                                        • 内田樹 on Twitter: "竹田恒泰控訴人による山崎雅弘さんへの控訴審判決がさきほどありました。控訴審も完全勝訴でした。いくつかの点では原判決よりさらに踏み込んだものでしたので、120%勝訴とご報告してよいと思います。 ご支援くださった方に感謝申し上げます。詳細についてはのちほど。"

                                                                          竹田恒泰控訴人による山崎雅弘さんへの控訴審判決がさきほどありました。控訴審も完全勝訴でした。いくつかの点では原判決よりさらに踏み込んだものでしたので、120%勝訴とご報告してよいと思います。 ご支援くださった方に感謝申し上げます。詳細についてはのちほど。

                                                                            内田樹 on Twitter: "竹田恒泰控訴人による山崎雅弘さんへの控訴審判決がさきほどありました。控訴審も完全勝訴でした。いくつかの点では原判決よりさらに踏み込んだものでしたので、120%勝訴とご報告してよいと思います。 ご支援くださった方に感謝申し上げます。詳細についてはのちほど。"
                                                                          • 日本の研究力の低下 - 内田樹の研究室

                                                                            日本の研究力低下が止まらない。国際的に影響力のある論文ランキングで、日本は10位から12位に下がり、スペイン、韓国に抜かれた。日本の大学の学術的発信力はこの四半世紀ひたすら低下し続けている。2018年の科学技術白書も「わが国の国際的な地位の趨勢は低下していると言わざるを得ない」と認めたが、その後効果的な手立てを打てずにここまで来てしまった。論文数も、科学技術関連予算も、博士課程進学者数も、海外派遣研究者数も、あらゆる指標が日本の教育行政が失敗していることを示しているが、政府は教育コストの削減を止めようとしない。 2015年に学校教育法が改定されて、大学教授会の権限が大きく殺がれた。大学は学長・理事長に権限が集中する「株式会社のような」トップダウン組織になった。それによって大学の組織運営は画期的に効率化するはずだった。たぶん「効率化」はしたのだろう。ひたすら人員を減らし、予算を削り、短期的に

                                                                            • 日本共産党に期待すること - 内田樹の研究室

                                                                              という題で「赤旗」から寄稿依頼があった。こんなことを書いた。 日本共産党に期待することはいくつかある。せっかくだから他の人があまり言わなそうなことを書く。 第一に「論理的であること」「知性的であること」にこだわり続ける政党であること。 今の日本社会は底の抜けたような反知性主義のうちに頽落している。いくら嘘をついても、デタラメを言っても、食言しても、政治家にとってまったくダメージにならないという時代がもう10年近く続いている。 日本共産党だけはこの俗情に結託しないで欲しい。嘘をつくと顔が赤くなる。論理的でない言葉を言おうとすると舌がこわばる。そういう「かたくな」な政党であって欲しい。そういう政党が一つくらいは必要である。 第二に世界史的な存在であること。 離合集散を繰り返す諸政党を見ていると、いったい彼らがどういう綱領的課題を実現したくて政治をしているのかがわからなくなる。 日本共産党はこの

                                                                              • 島薗進『教養としての神道 生きのびる神々』(東洋経済新報社) - 内田樹の研究室

                                                                                島薗先生の神道論の書評を頼まれた。東洋経済新報社のサイトに掲載されたものである。 本題に入る前に、私事について少し話すことにする。私がどういうふうに神道に接近してきた人間であるか、それを明らかにしておきたい。私は神道に対してニュートラルな立場の人間ではない。その偏りを明らかにしておかないといけないと思う。 私は合気道という武道を二十代から修行していて、大学でも学生に教え、門人も取っている。長く公立の体育館の武道場を借りて稽古をしていたのだが、何となくもの足りない。神棚がないからである。公立の施設は「政教分離」の建前があるから、すべての宗教的な要素が排除されている。でも、それでは困る。神棚でなくてもよい。禅語を記した扁額でもよい。十字架でもいい。道場である以上、超越的境位に通じる回路がないと場として成り立たない。 「道場」というのは、もとは仏道修行の場のことである。そして、武道というのも、原

                                                                                • 内田樹「五輪マラソン札幌案で露呈した“最悪の場合”を考えない人たち」〈AERA〉

                                                                                  内田樹(うちだ・たつる)/1950年、東京都生まれ。思想家・武道家。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、合気道凱風館館長。近著に『街場の天皇論』、主な著書は『直感は割と正しい 内田樹の大市民講座』『アジア辺境論 これが日本の生きる道』など多数※写真はイメージ(gettyimages) 哲学者の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、倫理的視点からアプローチします。 *  *  * 国際オリンピック委員会のバッハ会長が、マラソンの会場を札幌市に移す案を提示した。寝耳に水の東京都はこれに反発して、時間のさらなる前倒しや被災地への会場移転を逆提案している。都知事が「北方領土でやればどうか」と捨て台詞を吐いて外交問題にまでなった。もう収拾がつかない。 アスリートが質の高いパフォーマンスを達成するために真

                                                                                    内田樹「五輪マラソン札幌案で露呈した“最悪の場合”を考えない人たち」〈AERA〉