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  • 反フェミニズムの論点|小山(狂)

    反フェミニズム(アンチフェミニズム)的言論の盛り上がりが無視できない規模になってきた。少なくない人々がそう感じているようだ。 そこで本稿では、この分野にあまり詳しくない初学者に向け、反フェミニズムとはどのような諸言論によって構成されているのか、可能な限り客観的な視点でまとめてみたいと思う。 筆者の個人的な意見はここでは述べない。あくまで「反フェミニズム」を構成する諸言論の思想地図を作成することが目的である。 それでは始めよう。 ①平等主義からのフェミニズム批判反フェミニズム論壇において現在(2021年4月)活発に議論されているテーマのひとつが、社会的不平等の文脈に基づく異議申し立てだろう。 これらの主張はふたつに大別できるように思う。男性差別に対する異議申し立てと、告発権力の格差に対する異議申し立てだ。 「マスキュリズム」もしくは「弱者男性論」マスキュリズム/弱者男性論とは、男性差別に対す

      反フェミニズムの論点|小山(狂)
    • 「本当の意味で批判的な態度」について考える - メロンダウト

      東さんのツイートがはてブにあがっていた だからいまは本当の意味で批判的なのはどういう態度なのか、原理から考えねばならない。リベラルが「意識の高い」主張をしても人々に届かないのは、それこそが体制順応的だとみな見抜いているから。一言でいえば、反アベといえばちやほやされる世界で、それが批判になるわけがないということです。 — 東浩紀 Hiroki Azuma (@hazuma) 2021年7月4日 右左という枠組みが変質しており、リベラルや保守が語義そのままの意味ではもはや捉えられなくなっているのだと思う。リベラルという言葉が賞味期限切れなんだろうなという印象を強く持つ。東さんが言うところの「リベラルが富裕層で、ナショナリストが庶民」というのは枠組みとしてはどこか間違っているような感じも受ける。 アメリカ西海岸などを念頭に置けばバラモン左翼と呼ばれる人々が富裕層で、ラストベルトのナショナリスト労

        「本当の意味で批判的な態度」について考える - メロンダウト
      • 東浩紀による自伝的経営奮闘記──『ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる』 - 基本読書

        ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる (中公新書ラクレ) 作者:東浩紀発売日: 2020/12/11メディア: Kindle版この『ゲンロン戦記』は、ゲンロンという、SF作家養成や批評家養成スクールを開いたり、批評家や作家や哲学者らの対談イベントを自前のカフェで開いたり配信したりして利益を出している小さな会社を経営していた東浩紀氏の自伝的奮闘記である。経営本であるというと基本的には大成功を収めた人がその華々しい経歴やその経営哲学を語るものだが、本作で描かれていくのは無残な失敗の連続だ。 それも、「それならしょうがねえよな」と同情してしまう失敗、というより理念や理想が先行してそのうえ行動力も伴っているがゆえに実態がまるで追いつかず、「そんなことやっているんですか……」と絶句してしまうような失敗が多。それを真摯に反省し、なんとかしようと奮闘し、また同じような失敗をして落ち込む……という繰り返しが

          東浩紀による自伝的経営奮闘記──『ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる』 - 基本読書
        • トイアンナ氏が決して女性から支持されない理由|小山(狂)

          内容としては(伝統的な)リベラリストの立場からフェミニストによる表現規制に反対し、さらに現代フェミニズムが陥りがちな「慈悲的差別」に対しても批判を投げかけている。 おおむね古典的リベラリストだったらそう考えるべきだろうなという内容が綴られており、個人的に大きな驚きはない。ネット論客であれば青識亜論さんなどとは極めて近しい思想的立場だろう。個人の自由を尊重し、理性を重視し、迷信や不合理な差別に反対するのが古典的リベラルの特徴である。(その反面、社会的弱者の包摂を軽視しがちでもあるのだが) さて、そんなトイアンナ氏の「フェミニズムは女を殺す」記事であるが、現代主流派を形成しているフェミニスト諸氏からは極めて批判的に受容されているようだ。トイアンナ氏を「アンチフェミ」「ミソジニスト」「フェミ叩きに魂を売った」などと批判する反応が多く見られる。 ツイッターのみならず、はてなブックマークでは元ファン

            トイアンナ氏が決して女性から支持されない理由|小山(狂)
          • 第2回 制約と諦めのススメ - 苦しみの執筆論 千葉雅也×山内朋樹×読書猿×瀬下翔太:アウトライナー座談会 | ジセダイ

            思考を階層的に整理することによって、「書くこと」と「考えること」の強力な武器となるツール、「アウトライナー」。普段からアウトライナーを利用して執筆をおこなっている、哲学者・千葉雅也さん、美学者・山内朋樹さん、読書家・読書猿さん、編集者/ディレクター・瀬下翔太さんの4名に集まっていただき、執筆論や思考術などなど、縦横無尽に議論を交わしていただきました。(全3回) この対談が書籍化されました! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 『ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論』 著/千葉雅也、山内朋樹、読書猿、瀬下翔太 カバー装画/あらゐけいいち 定価:1100円(税別) 
レーベル:星海社新書 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章は飛躍していい! 千葉 Twitterの140字って、本当にちょうどいいですよね。絶妙な長さだと思います。 瀬下 連投もおもし

              第2回 制約と諦めのススメ - 苦しみの執筆論 千葉雅也×山内朋樹×読書猿×瀬下翔太:アウトライナー座談会 | ジセダイ
            • 2019年8月19日|ひるにおきるさる

              7月18日に京都アニメーションを襲った放火殺人事件から1ヶ月ほどが過ぎた。犠牲者は35人を数え、加害者とされる人物を含め、現在も多くの身体的・精神的ダメージを負った人々が手当てを受けている最中だという。戦後最大とされる規模の事件ということもあり、その巨大にして凄惨なダメージの内容を、ネットやテレビなどの各種メディアが連日報じ続けている。 それらの詳細はここでは振り返らない。だが、とてつもなく痛ましい事件であることは疑いようもない。被害に遭われた方々が受けた深刻な傷は、想像することすら耐え難い。また、同社が制作していた作品のファンからも、悲しみの声が続いている。現場近くに設置された献花台には、酷暑のなかファンが列を作っている。涙を流している。彼ら彼女らにとってもこの事件は、耐え難いものであっただろう。 筆者も同様である。事件当日の一報を受けてから今日に至るまで、続報を知るたび、周囲の人間がこ

                2019年8月19日|ひるにおきるさる
              • アーキテクチャから文体へ | 濱野智史×宇野常寛 | 遅いインターネット

                濱野智史さんはかつて『アーキテクチャの生態系』で、この国のガラパゴス的に発展したインターネットのもつポジティブな可能性を発見する批評を展開し、衝撃を与えた書き手です。しかしあれから10年余りが経ち、「この国の」インターネットに注目する意味はおろか、インターネットそのものが停滞していると彼は指摘します。そんな濱野さんに「遅い」インターネットという宇野の問題提起をぶつけてみました。 本記事をはじめ、「遅いインターネット」では、現在の速すぎるネット社会の問題とその向き合い方について、様々な観点から特集しています。 停滞の10年の先に、 「遅いインターネット」を始めよう 宇野 濱野さんの著書『アーキテクチャの生態系』が出版されたのは、いまから10年と少し前の2008年のことです。これは、iモード、2ちゃんねる、ニコニコ動画など日本でガラパゴス的に発展したインターネットに、アメリカのそれとは異なる独

                  アーキテクチャから文体へ | 濱野智史×宇野常寛 | 遅いインターネット
                • 【座談会】日常のゆくえ──京アニ事件から『ぼっち・ざ・ろっく!』まで|舞風つむじ × noirse × てらまっと | 週末批評

                  ※本記事は、『Blue Lose Vol.3 特集:10年代』(早稲田大学負けヒロイン研究会、2023)所収の「日常系座談会──フィクションをめぐる状況」を加筆・修正のうえ、転載したものです。なお、取り上げられている各作品の結末についての情報が含まれることがあります。 話:舞風つむじ × noirse × てらまっと 構成:舞風つむじ(早稲田大学負けヒロイン研究会) 舞風つむじ この座談会では、2010年代半ば以降の「日常系アニメ」について考えていきたいと思います。また議論にあたっては、2014年に開催されたシンポジウムの発表原稿を編んだアンソロジー『日常系アニメのソフト・コア』1が叩き台になると思い、同論集の寄稿者であるnoirseさんとてらまっとさんをお呼びしました。 セカンドアフター公式ブログ PDFペーパー『日常系アニメのソフト・コア』目次 – セカンドアフター公式ブログ セカンド

                    【座談会】日常のゆくえ──京アニ事件から『ぼっち・ざ・ろっく!』まで|舞風つむじ × noirse × てらまっと | 週末批評
                  • 芸術にコミットなんてしたくなかった。(しかし、) gnck.net

                    芸術――この場合、諸芸術というのではなく、絵画・彫刻を中心とするファインアート――はたとえば他のジャンルと比べて「公共的」なのだろうか。何故、複数存在するジャンル(そう、たとえば部屋に転がっている、あるいは今やスマートフォンで読まれるマンガや、テレビやインターネットで放送・配信される動画コンテンツたち)のうち、ファインアートだけが特権的に美術館制度や大学制度などの、国家の制度による保護を受けている[1]ように見えるのか[2]。展示されているものこそが「良きもの」であり、その価値を受け入れない者は、「感性の無いもの、悪いもの」とされてしまうのだろうか。そう、美術制度には「権威」が常に張り付いているように見える。 あいちトリエンナーレを巡る「騒動」(展示そのものの主題ではなく、飽くまでその周囲)において度々見ることになった「偏った政治的な主張に公金を使うのはいかがなものか」という発言や態度は、

                    • 漫画(VTuber)研究者の読む『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」~その③~ - izumino’s note

                      どうも、漫画研究者としては『ユリイカ』の2008年6月号にて商業デビューし(初期は「イズミ」名義)、後に『ユリイカ』の2018年7月号でもVTuber論を掲載させていただいている泉信行と申します。 参考:2015年時点までの発表まとめ(PDF) VTuber評論を集めた同人誌である『青春ヘラ』Vol.7への反応記事としては、今回でひとまず最後となります。 漫画(VTuber)研究者の読む『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」~その①~ - izumino’s note 漫画(VTuber)研究者の読む『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」~その②~ - izumino’s note イベントなどでは先月末から今月の21日にかけて頒布されていた同人誌ですが、5月24日から通販が始まっているようですので、可能なら手元に置きつつ、このブログを読んでいただければ、と思います。 前置き

                        漫画(VTuber)研究者の読む『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」~その③~ - izumino’s note
                      • 意識研究の思想地図2020 β版|Daichi G. Suzuki

                        存在論的還元の軸 存在論的還元とは、「この世界の実在物は、もっぱら物理学で扱われる存在(究極的には素粒子と基本相互作用)だけだよ」「生命力とか、精神力とか、そんなものは究極的には実在しない——そのような力があるように見えても、結局は物理学で扱われる存在に落とし込める」という考え方である(列C)。唯物論と言ってもいい。 (※ なお、「存在論」という言葉には少し注意が必要。ここでは「世界がどのような存在者から成り立っているのか」という意味で使われている。別の用法として、「存在者をどのような観点から見るか」という意味で「存在論」が使われる場合もある) これに対して存在論的還元を否定する立場を採る論者は、生命力や霊魂を、世界の根源的な要素として(物理学で扱われる存在以外に)認めようとする(列A)。あるいはプラトンのイデア論のように、心の作用のみを認め、物質世界は仮象に過ぎないとする立場(唯心論)も

                          意識研究の思想地図2020 β版|Daichi G. Suzuki
                        • 五反田で語る「夜の街」──飯田泰之×谷口功一×速水健朗「夜の公共圏はコロナでどう変わるのか」イベントレポート

                          いま「夜の街」という言葉で検索をかけると、ヒットするのはほぼすべてコロナ関連の記事だ。言葉自体は昔からあったにもかかわらず、この語はいまやコロナ禍と切っても切り離せなくなっている。 夜の街というのは、一般にスナック、キャバクラ、ホストクラブ、性風俗店など、接待を伴うサービス業が集まる場所を指す。コロナ禍において、夜の街は感染拡大の「震源地」であるかのように目の敵にされることがしばしばだった。 そんなイメージの一方で、夜の街が人間社会において公共的な役割を担ってきたこともまたたしかだ。 このたびゲンロンカフェでは、『日本の夜の公共圏』(白水社)の編著者であり、スナック研究で知られる谷口功一氏、経済学者の飯田泰之氏、ライターの速水健朗氏を迎え、「夜の街」の歴史、そして未来について語るイベントを開催した。その模様の一部をお届けする。(ゲンロン編集部) 人の欲望を制限する欲望 コロナ禍で表出したの

                            五反田で語る「夜の街」──飯田泰之×谷口功一×速水健朗「夜の公共圏はコロナでどう変わるのか」イベントレポート
                          • テン年代アイドル論、あるいは・・・・・・・・・とはなんだったのか?|scarlet222

                            東京は、あらゆる計画をいつも裏切ったまちだ。(磯崎新『空間へ』) ヨーロッパに幽霊が出る――共産主義という幽霊である。(マルクス・エンゲルス『共産党宣言』) はじめに なぜいま「アイドル論」なのか? テン年代の前半くらいに、アイドル論やアイドル批評といったものが盛り上がりを見せたことがあった。いくつか具体例を列挙してみる。2011年、太田省一『アイドル進化論』。2012年、濱野智史『前田敦子はキリストを超えた』、小林よしのり・中森明夫・宇野常寛・濱野智史『AKB48白熱論争』。2013年、さやわか『AKB商法とは何だったのか』、安西信一『ももクロの美学』。2015年、香月孝史『「アイドル」の読み方』など。 こうしたアイドル論の盛り上がりが生じたそもそものきっかけは、やはりゼロ年代の後半に、AKB48が目覚ましい活躍を見せていたことだっただろう。「RIVER」でオリコンウィークリーチャートの

                              テン年代アイドル論、あるいは・・・・・・・・・とはなんだったのか?|scarlet222
                            • 理論する

                              研究という活動のなかで、「理論(theory)」というのは重要な位置を占めているように思われる。しかし、じゃあ「理論て何ですか?」と問われると、それに答えるのはなかなか難しいかもしれない。「理論」というのが一体何なのかというのは、それほど自明なことではさそうだ。 こういうとき、まずは語源をたどってみることにしよう。OEDによれば「theory」の語源には、ラテン語の「theoria」(テオーリア)や古典ギリシア語の「θεωρία」(テオーリアー)があり、どちらも「見る行為(action of viewing)」に関する語のようだ。このような語源をもとにしてか、明治の啓蒙思想家・西周は「theory」に「観察」という語を充てていた。ちなみにぼくは西周について、文筆家・山本貴光さんの『「百學連環」を読む』(三省堂, 2016)で学んだ。 こうして語源から眺めてみれば、「見る行為」や「見て取るこ

                                理論する
                              • 【読書感想】ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる ☆☆☆☆☆ - 琥珀色の戯言

                                ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる (中公新書ラクレ, 709) 作者:東 浩紀発売日: 2020/12/08メディア: 新書 Kindle版もあります。 ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる (中公新書ラクレ) 作者:東浩紀発売日: 2020/12/11メディア: Kindle版 内容(「BOOK」データベースより) 「数」の論理と資本主義が支配するこの残酷な世界で、人間が自由であることは可能なのか?「観光」「誤配」という言葉で武装し、大資本の罠、ネット万能主義、敵/味方の分断にあらがう、東浩紀の渾身の思想。難解な哲学を明快に論じ、ネット社会の未来を夢見た時代の寵児は、2010年、新たな知的空間の構築を目指して「ゲンロン」を立ち上げ、戦端を開く。ゲンロンカフェ開業、思想誌『ゲンロン』刊行、動画配信プラットフォーム開設…いっけん華々しい戦績の裏にあったのは、仲間の離反、資金のショート、組織の

                                  【読書感想】ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる ☆☆☆☆☆ - 琥珀色の戯言
                                • 『ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる』(中央公論新社) - 著者:東 浩紀 - 鹿島 茂による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

                                  著者:東 浩紀出版社:中央公論新社装丁:新書(288ページ)発売日:2020-12-08 ISBN-10:4121507096 ISBN-13:978-4121507099 「誤配」から生まれる批評的観客一応はビジネス戦記に分類されるのだろうが、本質は哲学書という不思議に面白い本である。 デビュー作でサントリー学芸賞、初の長編小説で三島賞を受賞し、アカデミズムにも地歩を固めて「人生上り調子で、 収入も増えて」いた著者は、なぜかそうしたメインストリームに「強い居心地の悪さ」を感じて、SNSを活用した出版企業を同志たちと起業、メインストリームに代わるオルタナティブ出版社「ゲンロン」を立ち上げる。2010年のことである。「ゲンロン」から出した思想誌『思想地図β』は三万部を売り上げ、順風満帆に見えたが、経理担当者の使い込みという試練に出会う。これで甘さを反省して経営者として目覚めたかというと、そう

                                    『ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる』(中央公論新社) - 著者:東 浩紀 - 鹿島 茂による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
                                  • 第13話 誰かと一緒に生きられない 宇野常寛「水曜日は働かない」|HB ホーム社文芸図書WEBサイト

                                    今月の「水曜日は働かない」は…… 1.久しぶりにテレビドラマの批評を書こうと思った宇野常寛 2.書き始めたら楽しくなって、脚本集を大人買いして読み込んでしまった宇野常寛 3.結局締め切りがギリギリになって泣きながら書いている宇野常寛 そんな今月の連載を、今から詳しくお伝えします。 「宇野常寛の〈水曜日は働かない〉」 ※ ※ ※ 少し前のことだ。『大豆田とわ子と三人の元夫』というテレビドラマを、僕は毎週楽しみに見ていた。脚本は坂元裕二、『それでも、生きてゆく』『最高の離婚』『カルテット』などの作品で知られている。最近では映画『花束みたいな恋をした』で注目を集めた。『大豆田とわ子と三人の元夫』の内容について、かんたんに紹介しよう。ヒロインはタイトルにもある大豆田とわ子という40代の女性で、中堅の設計事務所の雇われ社長をしている。そして「三人の元夫」というタイトルにあるように三回結婚に失敗してい

                                      第13話 誰かと一緒に生きられない 宇野常寛「水曜日は働かない」|HB ホーム社文芸図書WEBサイト
                                    • 日常における遠景──「エンドレスエイト」で『けいおん!』を読む|志津史比古 | 週末批評

                                      ※本記事は、『アニメルカ vol. 2』(アニメルカ製作委員会、2010)所収の志津A「日常における遠景──「エンドレスエイト」で『けいおん!』を読む」を一部加筆・再構成のうえ、転載したものです。 文:志津史比古 夏の雲、冷たい雨、秋の風の匂い、傘に当たる雨の音、春の土の柔らかさ、夜中のコンビニの安心する感じ、放課後のひんやりとした空気、黒板消しの匂い、夜中のトラックの遠い音、夕立のアスファルトの匂い。 新海誠の『ほしのこえ』(2002)で、ノボルとミカコは、日常生活に見出される価値あるもの(「いま・ここ」に生きている実感を凝縮して示している小さな断片)をこんなふうに列挙していく。(『ほしのこえ』がそうであるような)「セカイ系」では、非日常的な状況(「いま・ここ」とは対照的な、時間的・空間的に遠く隔たっているという観念)を持ち出すことで、日常の価値を逆照射しているところがあった。こうした日

                                        日常における遠景──「エンドレスエイト」で『けいおん!』を読む|志津史比古 | 週末批評
                                      • 漫画(VTuber)研究者の読む『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」~その③~|Nobuyuki Izumi

                                        どうも、漫画研究者としては『ユリイカ』の2008年6月号にて商業デビューし(初期は「イズミ」名義)、後に『ユリイカ』の2018年7月号でもVTuber論を掲載させていただいている泉信行と申します。 参考:2015年時点までの発表まとめ(PDF) VTuber評論を集めた同人誌である『青春ヘラ』Vol.7への反応記事としては、今回でひとまず最後となります。 漫画(VTuber)研究者の読む『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」~その①~ 漫画(VTuber)研究者の読む『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」~その②~ イベントなどでは先月末から今月の21日にかけて頒布されていた同人誌ですが、5月24日から通販が始まっているようですので、可能なら手元に置きつつ、このブログを読んでいただければ、と思います。 前置き これらのエントリの草稿としているのは、あくまで「研究目的のメモ」であ

                                          漫画(VTuber)研究者の読む『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」~その③~|Nobuyuki Izumi
                                        • 東浩紀『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

                                          1月11 東浩紀『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ) 8点 カテゴリ:思想・心理8点 批評家であり、思想家でもある東浩紀が立ち上げた株式会社ゲンロンのここ10年の歩みを自身が振り返ったもの。 本書は、まず起業の記録として読めると思います。事業計画の甘さ、会計処理の重要性など、企業を経営するときに降るかかる問題点を教えてくれます。さらに、もう少し広く、「組織論」としても読めます。能力のある仲間を集めても必ずしも組織としては機能しないということを教えてくれます。 そして、著者による現代社会論、特にネット論としても読めると思います。もともと、著者はネットの可能性に大いに期待していた人物ですが、どこが上手くいかなかったのか、今のネットのどこが問題なのかということが見えてきます。もちろん、この10年でネットはさらに影響力を高めており、このネットの問題は、現実の政治や経済ともつながっています。本書を読む

                                          • 20/5/23 PSYCHO-PASSの感想 理念と実践の思想地図 - LWのサイゼリヤ

                                            PSYCHO-PASSの感想 131.アニメ PSYCHO-PASSは見られたことありますか? あったら感想が聞きたいです。 先月に1期を全話見ましたが、面白かったです。 設定がよく作り込まれていてエンタメとして楽しかったし、背景に一貫している思想をいちいち全部説明してくれる感じも僕は好きです。 補足296:ただ、槙島がオーウェルからフーコーまで言及する割にはハイデガーかサルトルを引用しなかったのってなんかズルくないですか? 槙島っていわゆる「自由の刑」を称揚するような割とベタな実存主義者なんですが、それを明示するとキャラクターが浅薄に見えてしまうから、あえて一番クリティカルな思想家の引用を避けたのではないかと邪推してしまいます(一応キルケゴールとニーチェは他の人が引用しますが)。 特に好感度が高いのは、主要登場人物たちの思想について一致する点と異なる点がそれぞれきちんと描かれているところ

                                              20/5/23 PSYCHO-PASSの感想 理念と実践の思想地図 - LWのサイゼリヤ
                                            • キャラクターを「批評的に」扱うために gnck.net

                                              キャラクターを批評的に扱うために 伊藤啓太や松下哲也による新設のアートスペース「関内文庫」にて「藍嘉比沙耶|杉本憲相 メディウムとしてのアニメ」展が開催された。関内文庫はアーカイブを主とする活動を行っていく アートスペースであり、会期は3日間と短いものであったが、現在も展示作品や360°画像をウェブサイトから閲覧することができる[1]。 サイトを見ても分かる通り、関内文庫はかなり小規模なアートスペースであり、藍嘉比、杉本両名の作品も、小品や過去作を中心にしたものであった。関内文庫では、後ほど展示に関する論文 を発表予定であるとのことだが、現在はまだ展示ステートメントが示されているのみである。関内文庫としては、「時間芸術であるアニメ」と「空間芸術である絵画、彫刻」の差異を乗り越えようとする 両名のアプローチを、ポップアートではなく正統(アカデミック)な芸術の問題とする。しかし、アニメ―ション

                                              • クイズ王の語る、知られざる競技クイズ クイズはヒップホップと似てる?

                                                2016年に立ち上げられ、19年には法人化。WebメディアやYouTubeを通じてクイズの魅力や「知ることの楽しさ」を発信してきたQuizKnock(以下、クイズノック)。 クイズや知識、学びとエンタメを結びつけたコンテンツは大きな支持を得て、現在では人気YouTubeとしてのイメージも強くなっている。 KAI-YOU Premiumでは、競技クイズプレイヤーとして活躍してきた代表の伊沢拓司さん、そしてふくらP(福良)さんに、前後編にわたって「競技クイズ」や「現代の教養」についてインタビューを行った。 プレイヤーとして日本テレビの『全国高等学校クイズ選手権』(通称「高校生クイズ」)2連覇を成し遂げ、東大王への出演などクイズ王の名をほしいままにする伊沢さん。 QuizKnockのYouTube進出を提案し、自身も出演しつつユニークな企画や編集を手掛けるふくらPさん。 クイズプレイヤーとしての

                                                  クイズ王の語る、知られざる競技クイズ クイズはヒップホップと似てる?
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