「鮨に甘口ワイン」と聞くと、多くの人が違和感を抱くかもしれません。一般的には「鮨には辛口ワイン」というのがペアリングの常識と考えられているからでしょう。しかし、長期熟成されたソーテルヌという選択肢が、このペアリングに新たな可能性を示しています。ソーテルヌの上品な甘さ、エレガントな酸味、そして香ばしい貴腐香が、鮮魚の風味と驚くほど調和し、鮨の旨味を際立たせるのです。 その魅力を痛感したのが、凛とした緊張感が漂う空間で「シャトー・カイユ1982」と対峙したときでした。バルザック村に位置するシャトー・カイユは、貴腐ワインの名手として知られ、そのワインはメイプル、デーツ、シェリー、バルサミコ、ブラック・ビネガーといった複雑で深みのあるフレーバーをもっています。とくに、やわらかく甘みが強い「水だこ」との組み合わせは、40年以上の熟成を経たソーテルヌのこなれた甘味が水だこの繊細な風味をやさしく引き立て