野坂昭如(のさか・あきゆき)が亡くなって1年余り。時代を駆け抜けた異才をしのぶ声は根強い。 作家という枠にはとうてい収まらない人物だった。CMソングの作詞をはじめとしてコント作家、テレビの台本などさまざまな仕事を経験した後、昭和38(1963)年に「エロ事師たち」を発表、昭和43(1968)年「火垂るの墓」と「アメリカひじき」で直木賞を受賞し、作家としての地位を確保した。 しかしその後は歌手、CMタレントとして活躍するかと思えば、「四畳半襖の下張」裁判で被告人として法廷に立ち、政治家をめざして参院選に当選した。もっとも半年足らずで田中角栄批判をして議員辞職、衆院選で新潟三区から出馬して落選した。平成15(2003)年には脳梗塞で倒れるがリハビリにはげみ、創作活動を続けた。平成27(2015)年12月9日、85歳で死去。 多くの人々の心に残る作品というとやはり「火垂るの墓」ではないだろうか。