「重度障害者の受賞者、なぜ“初”なのか考えてもらいたい」芥川賞・市川沙央さん、読書バリアフリーを訴える
工業廃水に含まれた「メチル水銀」に汚染された魚介類。それを食べた人々が、けいれんや言葉のもつれ、感覚障害などの症状を起こし、苦しみながら多くの人が亡くなった。水俣病は、第2次世界大戦後の高度経済成長期の負の遺産で、「公害の原点」とされる。公式に確認されたのは1956年5月。当時、熊本・水俣湾では人々が原因不明の病気に苦しみ、5歳と2歳の幼い姉妹の症状がこの時に保健所に届けられたのが始まりだ。それから67年たったが、救済を求める訴訟はいまだに続いている。 20代半ばの私たちにとって水俣病は、「4大公害病のひとつ」として歴史の授業でただ暗記しただけ。しかし、記者として熊本に赴任し、今も病気に苦しみながら闘う患者と、人生をかけて支援する人々の姿を見て、自分の無知を恥じた。 記者としてどう向き合うべきか、どう報じるべきか。日々話しあい、取材を続けた。関係者に話を聞くうちに、この問題が水俣にとどまら
全身の筋力が低下する難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を患う男性(48)が埼玉県吉川市に対し、障害者総合支援法に基づく重度訪問介護を24時間態勢で給付することなどを求めた訴訟の判決が8日、さいたま地裁(田中秀幸裁判長)であった。田中裁判長は、男性側の訴えを一部認め、市に1日当たり約19時間の給付と損害賠償など約138万円の支払いを命じた。 原告側代理人によると、男性は2015年にALSと診断された。介護を担う妻の負担が大きかったため19年ごろから24時間態勢の訪問介護の給付を求めたが、市は1日約13時間しか認めなかった。 男性は20年に妻と離婚し県内の別の自治体に転居。現在の居住地では十分な介護サービスが受けられているが、本来は吉川市も24時間態勢の給付を認めるべきだったとして、自らが負担した費用の支払いや慰謝料などを求めて21年に提訴した。 判決では「男性の妻が家事や子どもの世話のため
茨城県が行政処分を通知する見通しとなった障害者支援施設=茨城県東海村で2024年5月9日午後1時16分、寺田剛撮影 茨城県東海村の障害者支援施設で施設長や職員が入所者に暴力などの虐待を繰り返したとして、県は月内にも、事業停止に相当する3カ月間の「指定の全部効力停止」の行政処分を通知する方針を固めた。障害者総合支援法に基づく指定取り消しに次いで重い処分。厚生労働省によると、長期の障害者入所施設への適用は異例という。 複数の関係者によると、この施設は重度の知的障害者ら約50人が入所し、10年以上暮らす人が多い。処分した場合、施設が運営の原資となる給付金を受け取れなくなるため、入所者を別の施設に転所させる必要が生じる可能性がある。県は受け入れ施設を調整するため、通知から実際の処分までに猶予期間を設ける方針。 関係者によると、この施設では2020年4月に職員が入所者に暴力を振るっているとの通報があ
少子化で小中高生の数が減る中、障害がある子どもが通う特別支援学校の児童生徒数は増加している。これまで自治体や学校は、足りない教室を確保するため、一つの教室を複数に区切ったり、廊下で授業を行ったりする苦肉の策で学びの場を維持してきた。しかし、障害に応じたきめ細かな対応が欠かせないため、教員の負担は増え、設備や人員といった態勢を増やす必要に直面している。 ただ、国際的には、障害の有無などにかかわらず一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」が主流だ。特別支援教育が「障害のある子どもを隔離している」という指摘も根強く、日本の在り方は国連から批判も受けている。専門家は「特別支援教育が当たり前になってしまうと、あるべき姿から遠ざかるのではないか」と懸念する。学校現場や当事者への取材を通して、教育環境の「あるべき姿」について考えた。(共同通信=重冨文紀) ▽音楽や体育の授業は廊下で…全国で3740の教室が不足
障害者ホーム3軒ともひどかった…連続でやむなく退去、母は途方に暮れた 重度でもOKのはずが、質より量? 障害が重くても入所施設に入るのではなく、地域社会で普通の暮らしができるように。そんな狙いで国は今から6年前、重度障害者向けのグループホーム(GH)の仕組みを作った。障害が重いとその分、支援も大変なので、運営事業者は公的な報酬を多く受け取れる。株式会社など営利法人が相次いで参入し、重度者向けGHは急激に増えた。だが、利用者や家族の中には、入居したものの、結局行き場を失って途方に暮れる人も出ている。なぜそんなことになってしまったのだろうか。(共同通信=市川亨) ▽半年→8カ月→1カ月と転々「もてあそばないで」 「『本人が安らげる場所を確保したい』という願いをかなえることが、なぜここまで難しいのか…」。神奈川県の山根佳恵さん(50代、仮名)はため息をついた。 山根さんの30代の娘、美久さん(仮
松沢病院にある拘束具。今はほとんど使うことがないという=東京都世田谷区の都立松沢病院で2019年11月5日、上東麻子撮影 2016年、石川県の精神科病院に入院していた40歳の統合失調症の男性が、6日間にわたる身体拘束を受け、解除直後に急性肺塞栓(そくせん)症(エコノミークラス症候群)で死亡するという事件がありました。 両親が病院を相手に損害賠償を求めて提訴しましたが、1審の金沢地裁は、医師の主張を認めて原告敗訴。しかし、2審の名古屋高裁金沢支部は一転、精神保健福祉法(正式名称「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」)の規定に基づいて示されている身体拘束に関する要件を満たさないとして約3500万円の支払いを言い渡します。病院は上告しましたが、21年、最高裁判所が上告を棄却して判決が確定しました。 17年には、27歳のニュージーランド人男性が、神奈川県の精神科病院で10日間に及ぶ身体拘束後に
Published 2024/04/29 15:49 (JST) Updated 2024/04/29 15:57 (JST) 知的障害者が働く野菜工場「ソーシャルファーム大崎」(宮城県美里町)は、従業員の月額賃金を、従来の1万8千円ほどから約4倍の7万~8万円に引き上げた。障害者就労施設から一般事業所に移行し、県の最低賃金が適用されたことで実現した。補助金に頼らず、売り上げを増やして収入から賃金を支払う「脱福祉」型の運営により、障害者の待遇改善を目指す。 野菜工場は今年3月、障害者の待遇改善に取り組む日本財団の主導で、一般事業所に移行した。14棟のビニールハウスで年間50トン以上のホウレンソウを生産。大手コンビニや地元スーパーへ販路を拡大し、年間売り上げ4千万円以上を目指す。
Published 2023/08/09 06:01 (JST) Updated 2023/08/09 06:17 (JST) 日常生活の指導や治療を行う「障害児入所施設」に入る子どもの身体障害や精神障害が、虐待によって引き起こされたか、そう推測できるケースが24.9%に上ったとのアンケート結果を、京都府立大の中根成寿教授らのチームが9日までにまとめた。 チームは、施設に入所するのは先天的に障害のある子どもだけでなく「不適切な育成環境により障害を負った子どもがいる可能性がある」と指摘している。 施設には日常生活の指導が主の「福祉型」と、医療的ケアを提供する「医療型」があり、チームは全国260の福祉型施設にアンケートを2020年秋に送付。91施設から2235人分の回答を得た。全国の福祉型施設に暮らす子どもの3割に当たる。 心理的虐待や身体的虐待、育児放棄など直接的な虐待の経験があったと回答が
先月、就航した航空会社のトキエアが利用者向けにホームページで掲載した案内文の内容について、一部の表現が、障害のある人に一律で付き添いを求めていると誤解を招くおそれがあると国土交通省が指摘していたことがわかりました。これを受けて会社は内容を変更し、差別する意図はなかったなどとコメントしています。 先月31日に就航した新潟空港を拠点とする航空会社のトキエアは、会社のホームページに掲載した「お手伝いが必要なお客様」という案内文のなかで、「知的障がい・発達障がいのお客様は付添いの方の同伴をお願いいたします」などと記載していました。 これについて国土交通省が今月8日、障害があることを理由に一律で同伴者の付き添いを求めていると誤解を招くおそれがあると指摘していたことがわかりました。 これを受けて会社が記載内容を変更し、変更後は、知的障害や発達障害がある人の利用について「安全に関する説明を適切に理解出来
働いている障害者の26%が、初めて行った就職活動に「1年以上」かかったことが26日、人材紹介会社「レバレジーズ」(東京)の調査で分かった。1年以上と回答した人の割合を障害別に見ると、知的障害者が42%と最も多かった。 同社の担当者は「障害の特性によって就活や職場で必要な支援は異なるため、それぞれに応じたサポートが必要」と話した。調査は5月に行い、身体、精神、知的障害がある正社員と契約社員の計300人が回答した。 就活にかかった期間を尋ねると、「半年未満」が58%、「半年以上1年未満」が15%、「1年以上」が26%だった。 「1年以上」の人を障害別に見ると、知的障害者の42%に次いで精神が31%、身体が13%。 就活での苦労(複数回答)は、知的では「自分に合う業界や企業、職種が分からない」が最多。精神は「希望する配慮を提供する会社が見つからない」、身体は「希望する仕事内容の会社が見つからない
2022年1月21日、東京・池袋の路上。女の被告(26)は、面識のない82歳の男性に声を掛けた。持ちかけたのは援助交際。2人はそのまま近くのラブホテルの一室に入った。 男性が部屋のシャワーを浴びている隙に、被告は男性の財布からこっそりと3万円を抜き取ったが、気付かれた。とがめられて口論に。被告は持っていたカッターで男性の胸と太ももを突き刺すと、男性は出血性ショックで死亡した。 援助交際は、この時が初めてではない。財布から現金を盗むこともたびたびあった。半年ほど前から、同じようなことを毎日のように繰り返していたという。その背後には、好意を寄せていた男Aの存在があった。客を手配され、稼ぎをむしり取られる毎日。そこから抜け出すことができなかったのはなぜか。半生を振り返ると、その困難さが浮き彫りになった。(共同通信=帯向琢磨、木下リラ) ▽自傷、入院、出産… 2月20日に東京地裁で言い渡された判決
中井やまゆり園に関する職員処分の発表に際し「深くおわびします」と頭を下げる神奈川県幹部=横浜市中区の県庁で2023年5月25日、遠藤和行撮影 神奈川県は25日、利用者への虐待などが明らかになった県立知的障害者施設「中井やまゆり園」(中井町)の男性園長(58)ら園職員8人を含む計23人を同日付で処分したと発表した。外部の調査委員会が指摘した虐待や不適切支援の事案25件を中心に調査し、うち15件で園職員8人の関与を認めた。 処分の内訳は、園長が減給10分の1(3カ月)の懲戒で、園職員3人が口頭訓戒、4人が厳重注意。このほかに管理監督責任として関係する本庁の局長5人▽部長3人▽課長6人▽主幹1人の計15人を文書訓戒や口頭訓戒とした。黒岩祐治知事は給料を自主的に減額する条例改正案を開会中の県議会定例会に提…
2016年に障害者施設で45人が殺傷された「津久井やまゆり園事件」が起きた相模原市が公表した人権条例案の骨子。有識者らによる市人権施策審議会の答申は国籍や障害、性的指向など幅広い差別禁止事由を盛り込んでいたが、市の骨子は対象を外国ルーツの人々に絞り、答申が求めていた救済機関や罰則も見送った。世界の包括的反差別法制に詳しい林陽子弁護士は「答申から大きく後退し、実効性が失われる」と懸念する。(安藤恭子) 林陽子(はやし・ようこ) 1956年生まれ、茨城県出身。79年早大法学部卒。83年弁護士登録。2015〜17年日本人初の国連女性差別撤廃委員会委員長。今年7月から市川房枝記念会女性と政治センター理事長。
北海道江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」(樋口英俊理事長)が運営するグループホームで、結婚や同棲を希望していた知的障害者が不妊手術や処置を受けていた問題で、意思決定への配慮が不十分だったとして、北海道が近く施設側に運営改善を文書指導する方針を固めたことが16日、道関係者への取材で分かった。処置を強制した事実は確認できなかったとしている。 道関係者によると、20人の入所者のうち、13人が不妊処置を受けていた。5人は処置を受けず、2人は有無が不明だった。処置を入所の条件にはしていなかったと結論付けた。 問題が発覚した昨年12月から障害者総合支援法に基づき、監査を実施していた。入所者や保護者、職員など計56人を聴取した。入所者からの相談などの記録がないものがあったといい、文書指導では記録するように求める。 あすなろ福祉会を巡っては、1998年ごろから、結婚や同棲を希望した男女が不妊処置を受け
相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害され、職員を含む26人が重軽傷を負った事件からきょうで7年です。事件が衝撃を広げたのは、実行犯の元施設職員・植松聖死刑囚が「障害者には生きる価値がない」と許し難い姿勢に固執していたことです。障害者への差別と偏見が横行する風潮の中で起こされた事件を深刻に受け止める指摘が相次ぎました。いまも障害者の人権や尊厳が保障されている社会とは言えません。少数者に対する差別的言動も繰り返されています。事件が突き付けた重い課題と向き合い続ける必要があります。 国連の委員会からの勧告 「優生思想および非障害者優先主義に基づく考え方に対処する観点から、津久井やまゆり園事件を見直し、社会におけるこうした考え方の助長に対する法的責任を確保すること」 昨年9月、国連の障害者権利委員会が日本政府に対して行った総括所見(勧告)の一節です。 障害者の尊厳を尊重し、
障害者がホテルや旅館で宿泊を断られるのをどう防ぐか。「迷惑客」の宿泊拒否を可能にする改正旅館業法の施行を前に、そんな議論が厚生労働省の検討会で進んでいる。障害者の社会的障壁を取り除く「合理的配慮」の浸透がカギだが、現状では宿泊現場での認知度は高いとは言えない。障害者団体は研修の必要性を訴える。(井上峻輔) 合理的配慮 障害者にとっての社会的障壁を取り除くのに必要な工夫や調整のこと。バリアフリーのような不特定多数を対象とした環境整備ではなく、一人一人に合わせた個別対応を指す。障害者本人の申し出に基づき、公的機関や民間事業者が過重な負担とならない範囲で提供する。公的機関には義務づける一方、民間事業者については努力義務にとどめてきたが、2021年に成立した改正障害者差別解消法により、来年4月からは民間事業者にも義務化される。
「何をされるかわからない」「襲われる」……。相手が障害者と見るや、こうした過剰でまちがった「不安」をぶつける人がいる。ごく普通の住宅街で起きている、不寛容の現場を歩いた。 暴走する住民たち 「なぜ住民感情に配慮しないのか!」 「町内会の全員が賛成しなければ、(施設の開設は)やらせない!」 昨年10月、神奈川県横浜市金沢区の集会所で、住民のひとりがまくし立てた。町内で開設目前となっていた知的障害者向けグループホームへの猛抗議を始めたのだ。 経緯を調査した横浜市障害福祉保健部の担当者は語る。 「グループホームの運営会社は別の地域でも実績があり、大半の住民は開設に好意的でした。町内会の役員たちも、入居者と良好な関係を築きたいと考えていました。 そこで役員会に運営会社の担当者を招いたのですが、役員ではない住民が現れて、怒声を上げ始めたのです」 同市は障害福祉計画に基づき、毎年40ヵ所の障害者グルー
兵庫県姫路市立小学校の特別支援学級で男性教諭(41)から暴言や体罰を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、男子児童2人と保護者が18日、姫路市に計2000万円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁姫路支部に起こした。児童側は「生きる価値なし」などの暴言が繰り返されたことで「安全なはずの学校で日常的に虐待され、著しい精神的苦痛を受けた」と訴える。 教諭は市立城陽小学校に勤務し、2018年から特別支援学級の担任だった。一連の暴言・体罰は21年6月に「お前なんか必要ない」などと言い、児童の腕を振り回したことをきっかけに発覚した。県教委は児童6人に対する計34件の行為が「著しい非行」に該当すると認定。教諭を懲戒免職とした。
Published 2023/10/06 11:47 (JST) Updated 2023/10/06 12:05 (JST) 京都地方法務局(京都市上京区)が昨年4月、足が不自由で松葉づえを使う男性が相談に来た際に立たせたまま対応したとして、大阪法務局が人権侵犯を認定したことが6日、京都地方法務局への取材で分かった。人権擁護を扱う法務局が人権侵犯の認定を受けるのは異例。 京都地方法務局によると、男性は昨年4月、相談のために人権擁護課を訪問。その際、松葉づえを使っているのに、立ったままの状態で対応させられた。男性はその後、法務省に人権救済を申し立てた。 大阪法務局は調査の結果、人権侵犯があったと認定。京都地方法務局に改善を求めるとともに、障害者差別解消法への理解を深める研修を実施した。
Published 2023/07/27 21:35 (JST) Updated 2023/07/27 21:53 (JST) 名古屋市の河村たかし市長は27日、木造復元を目指す名古屋城のバリアフリーに関する6月の市民討論会で、差別的な発言を受けた車いすの男性と面会したと明らかにした。運営の不備を認めて「配慮に欠けた」と謝罪もした。市は近く討論会の課題を検証する有識者会合を設置。結論が出た後、木造復元の議論を本格化させる見通し。 河村氏によると、今月26日に男性宅を訪れ、約2時間話し合った。男性は「検証結果が出た後、正式な謝罪を受けたい」としている。 討論会は6月3日に開かれ、男性が「今まであった昇降機をなくすのなら、障害者排除としか思えない」と訴えたところ、一部参加者が「我慢せえ」と反論するなどした。
「クスリを一度に40錠飲んだ。ふわふわして不安が消えた」オーバードーズの恐怖 若者がハマる背景に、孤独感や対人関係 東京都出身の和氣さなえさん(35)は約10年前、夜になると寝られない日が続いた。交際相手の浮気を知ったためだ。彼からLINEの返信が来なくなり、不安に襲われた。病院で診察を受けると、睡眠導入剤や精神安定剤が処方された。当初はそれで眠れたが、耐性が付いたのかしばらくするとまた不眠になった。 「少し多めに飲んでみようかな」 服用する量を増やし始め、気付いたら一度に飲む量は40錠。飲むと「ふわふわした気分と、強い自分になった感覚」になり、手放せなくなった。彼とは数年後に別れたが、オーバードーズはその後も続いた。 気分を高揚させるため、市販の薬や処方薬を過剰に摂取するオーバードーズ。近年、救急搬送される若い世代が増えている。東京消防庁管内での搬送人数は年間1000~1500人。その半
病気への偏見をなくす一歩にしたい。患者の訴えに、社会は耳を傾けなければならない。 糖尿病の呼称を「ダイアベティス」に変えるという案が発表された。医療者と患者で作る日本糖尿病協会などが、変更の必要があると判断した。 病名に「尿」という言葉が入っているため、「イメージが悪い」との指摘があった。遺伝や貧困も発症に関わっているにもかかわらず、「患者は皆、暴飲暴食をするような自己管理ができない人だ」と、レッテルを貼られることが少なくない。 協会の調査によると、「不利益を受けた」と感じたことがある患者が8割近くいた。健康に不安があるとして、職場で不当な扱いを受けたり、生命保険に入れなかったりすることもあるという。 こうした風潮が広がり、病気を隠して適切な治療を受けず、重症化することが懸念される。 以前は、健康な人よりも寿命が短く、「不治の病」と見なされていた。しかし、効果的な薬が開発され、日常生活に支
神奈川県内で重度障害者向けグループホーム(GH)を運営する事業者が、国の運営基準に違反して入居者を急に退去させた疑いがあるとして、県が障害者総合支援法に基づき、この事業者のGH2カ所に立ち入り検査に入っていたことが2日、分かった。 事業者は、同県厚木市の一般社団法人「ワイズ・インフィニティ・エイト」。同県藤沢市と伊勢原市で重度者向けの「日中サービス支援型」GHを1カ所ずつ運営している。 関係者によると、昨年、藤沢市のGHに入居した知的障害の女性にスタッフがうまく対応できず、女性の行動が不安定になったため、入居から1カ月余りでGH側がすぐに退去するよう求めたという。女性は両親のいる自宅に戻らざるを得なくなった。 国の運営基準は「事業者は利用者の希望を踏まえた上で、退去後の生活環境や援助の継続性に配慮し、必要な援助を行わなければならない」と定めており、基準に違反している可能性がある。 同法人の
日本手話で「結婚」は、「男性」を意味する親指と、「女性」を意味する小指を近づけることで表現する=中嶋真希撮影 ゲイを公称する手話講師、川端伸哉(活動名・かえで)さん(44)が、ツイッターにこんなメッセージを投稿した。 「『結婚』を男女ではなく、指輪で結婚にしませんか?」 日本手話では、「男性」を意味する親指と、「女性」を意味する小指を近づけることで「結婚」を表現する。それを、指輪をはめる表現に変えてはどうか、という提案だ。 5月11日に投稿すると500以上の「いいね」が付き、「私も使おうと思います」「結婚の自由を全ての人に」などのリプライ(返信)も寄せられた。 かえでさんはなぜ、手話を変えたいと考えたのか。ろう者であり、性的少数者。二つの「マイノリティー」を生きる、かえでさんの思いを見つめたい。 「男性は男性らしく」悩んだギャップ かえでさんが「難聴」と診断されたのは生後6カ月を過ぎた頃だ
あすなろ福祉会の本部が入る障害者福祉施設「あすなろ学園」=北海道江差町で2022年12月19日、三沢邦彦撮影 施設「同居認めず」59.5% 北海道江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」のグループホーム(GH)で、知的障害者カップルに不妊処置が求められていた問題を受け、道は22日までに所管する全てのGH(札幌市所管分を除く)やその利用者を対象にした結婚などの実態調査結果を公表した。これまでに結婚・同居したいと思った人は31・1%、子どもがほしいと思った人は24・4%だった。一方、同居可能な部屋がある施設は6・6%にとどまった。【石川勝義】 対象は、399事業所と利用者8741人で、274事業所(68・7%)と5123人(58・6%)が回答した。回答した利用者の内訳は男性62・8%、女性34・3%だった。
4月1日の改正障害者差別解消法施行に伴い設置された内閣府の相談窓口「つなぐ窓口」に約半年間で障害者や事業者などから計1163件の相談が寄せられたことが、内閣府の集計で判明した。改正法で新たに事業者に対して合理的配慮義務が課せられたが、差別に関する画一的な基準は示されておらず、障害者、事業者双方とも対応を模索している状況が浮かんだ。 内閣府は2023年10月16日に窓口を設置した。差別を巡るトラブルなどを解決するため、一元的に相談を受け付け、内容に応じて自治体や各省庁などの担当窓口に取り次ぐようにした。設置は試行で期間は25年3月までとされており、メールと電話で対応している。 内閣府は3月31日までの約半年間の相談件数を集計し、今月10日に資料をホームページに公表した。1163件の相談者別の内訳は、支援者や家族を含む障害者側817件、事業者209件、その他137件。月ごとの相談件数は増加傾向
おととし、川崎市の住宅で精神疾患があったとみられる37歳の長男を拘束し、必要な治療も受けさせずに死亡させた罪に問われた父親に対し、横浜地方裁判所は、死亡させた罪については無罪とした一方で、「公的支援を受ける機会は何度もあり、長期間監禁した行為は悪質だ」として、監禁の罪について執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。 川崎市麻生区の横山直樹被告(71)は、おととし、長男の雄一郎さん(37)を4か月間にわたって自宅に監禁した上、必要な治療を受けさせず死なせたとして、保護責任者遺棄致死と監禁の罪に問われました。 28日の判決で、横浜地方裁判所の足立勉裁判長は「父親が、死亡につながる長男の症状を見ていたという事実は認められないことなどから、医師の診察が必要な状態だと認識していたとは言えない」として、保護責任者遺棄致死の罪については無罪としました。 一方で「約10年の長きにわたり長男の対応に明け暮
市民団体「心の旅の会『市民精神医療研究所』」事務局の寺沢暢紘さん=浜松市中区で2020年6月19日午前11時44分、福沢光一撮影 「あるわあるわと、びっくりした」。精神障害者の会議傍聴などを制限する条項を独自に全国調査した市民団体「心の旅の会『市民精神医療研究所』」事務局の寺沢暢紘(のぶひろ)さん(78)が振り返る。差別をなくそうと活動してきた寺沢さんには、条項がどんどん見つかることが信じられなかった。 関連記事・精神障害理由に会議傍聴など禁止、全国で333件 静岡県の保健所職員だった寺沢さんらは1991年、地元・静岡の市町村を対象に精神障害者のさまざまな行為を制限する条項を調べ、123件の存在を把握。県などに条項の撤廃を申し入れた。旧自治省(現総務省)などは全国の自治体に見直しを通知した。 その後、日本は2014年、障害に基づくあらゆる差別を禁じた障害者権利条約を批准したほか、16年には
国が2013年から生活保護の基準額を引き下げたことに反対する市民デモがこのほど、京都市中京区であった。生活保護を受給する障害者ら約100人が「国は生存権を保障しろ」などと声を上げながら行進した。 基準額の引き下げを巡っては、全国29地裁で減額処分取り消しを求める訴訟が提起されている。21地裁で判決が出ており、11地裁が処分取り消しを認める一方、京都や大津など10地裁が請求を棄却し、判断が分かれている。 この日は、19年から毎年デモを行っている「生活保護の改悪に反対する人々の会」の代表(62)=南区=が「障害者も健常者も関係なく(引き下げ反対を)訴えよう」と市役所前で呼びかけた。京都訴訟の尾藤廣喜弁護団長は「生活保護制度は最低賃金や就学援助の基準などと関連しており、国民の生活基盤に関わる」と強調した。参加者らは横断幕を掲げ、市役所前から四条河原町交差点までの約1キロを歩いた。
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