「あれっ!こんなところを間違えてるよ」―。パソコン画面上で何回も確認して間違いがなかったのに、紙に印刷すると原稿のミスが...。こんな経験はだれにでもあるが、その理由がよく分からない。 画面よりも紙のほうが、間違いに気がつきやすい。これは今まで何となく経験してきた真理だ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、リモートワークを始めてからは、より一層それを強く感じる。リモートワークではプリンターが無かったり、あってもその能力不足で印刷に手間取ったり。だから、紙でのチェックを怠りがちになり、ミスが生じて後で大きなしっぺ返しを食らう。 もちろんできる限り間違いを減らし、仕事はスムーズに進めたい。紙と画面それぞれにおける、脳の働き方の違いなどを調べた上で、両者の使い分けを考察してみた。 「分析」の紙vs「パターン認識」の画面 メディア批評の先駆者、カナダのマーシャル・マクルーハン(1911~1980年
「紙」に印刷すると間違いに気づく理由(リコー経済社会研究所)「反射光」と「透過光」の性質の違い。反射光で文字を読む際には、人間の脳は「分析モード」に切り替わる。画面から発せられる透過光を見る際、脳は「パターン認識モード」になるhttps://t.co/Bmfx0Tcr5q— 500drachmas (@500drachmas) 2020年9月15日 これは先月拡散されていた「リコー経済社会研究所」による記事だが、大事なことを先に言うならこの内容に科学的な根拠は何もない。 記事の中身をしっかり読めば、前世紀に行われた研究(つまりCRTディスプレイが液晶へ移行せず、Retinaディスプレイの端末も当然登場していない時代のもの)に対して最新研究のアップデートをしていないし、そもそも「脳科学者」の研究ではないことも分かるはずだ。 話題になっているこれ、本文を読んでもマクルーハンがそう言っています以
誰もが知りたい『鬼滅の刃』大ヒットの理由。 これはどれほど丹念に作品と向き合っても答えは得られない。 なぜなら人の繋がりから生じる偶然の結果だからだ。 なぜ大ヒットしたのかという疑問 この『鬼滅の刃』解説記事に対する反応が興味深い。 このnoteは『鬼滅の刃』の導入を解説したものだ。どうやって読者を1ページ目から引き込むか、その「技術」と「困難」について書かれている。これに対し、ブコメはほぼ批判一色となった。 書いてある内容は決して間違っていないし、かなり細かく説明されている。なのになぜ批判が多いのか。コメントの内容は主に以下の2点となる。 『鬼滅の刃』に限った話ではない 長い 先に後者についてだが、「長い」ということは必ずしも悪ではない。スクロールバーが点になるような記事でも、好意的なコメントが多いこともある。結局のところ「長い」という批判が意味することは、自分の知りたいことが書かれてい
私たちの目は常に膨大な量の視覚情報にさらされています。 脳にとって、これは容易な状況ではありません。 何百万もの色や形、光の加減や視点の変化により、視覚の世界は絶えず移り変わっているのですから。(走りながら撮ったカメラの映像を見てください) にもかかわらず、私たちはブレやノイズのない安定した世界を見ることができます。 これは何世紀にもわたって研究者たちを悩ませてきた視覚科学の問題でした。 そしてこのほど、カリフォルニア大学バークレー校 (University of California, Berkeley・米)の研究で、視覚の安定性を説明する新たなメカニズムが発見されました。 それによると、私たちの脳は、過去15秒間に見たものを統合・平滑化して、整った一つの印象にまとめ上げているとのこと。 一体どういうことでしょうか。 研究の詳細は、2022年1月12日付で科学雑誌『Science Adv
sabakichi @knshtyk 6年間住んでいるマンションの郵便ポストを開ける動作に慣れすぎてもはや完全に無意識で動かしていたのだが、先週ふっと突然どうやっていたのかがわからなくなった。ぼんやりと番号が浮かぶが、順序がわからない。だからここ一週間くらい郵便受けを開けていない。人間は無力 2021-05-02 01:29:50 sabakichi @knshtyk 記憶が消えるのを現象としてここまではっきりと観測したのは初めてかもしれない。意識していない、けれども大切な当たり前のことが消えてしまうというのはかなりの恐怖だと思った。 2021-05-02 01:34:57 sabakichi @knshtyk Spatial Experience Designer|Design Researcher|Visual Artist|空間体験の企画とデザイン|メディア境界領域における身体と空間
はじめにリアルタイム声質変換アプリケーション、Realtime Yukarinを開発し、 OSS(オープンソースソフトウェア)として公開しました。 ここで言う声質変換とは、「誰でも好きな声になれる」技術のことを指します。 好きな声になれる声質変換は夢があって流行りそうなのですが、まだ全然普及していないと思います。 それは現時点で、声質変換を実際にリアルタイムで使えるフリーな仕組みが無いためだと考えました。 そこで、自由に使えるリアルタイム声質変換アプリケーションを作り、ソースコードと合わせて公開しました。 声質変換とは声を変える方法で有名なのは、声の高さや音色を変える手法、いわゆるボイスチェンジャーです。 既存のボイスチェンジャーは、元の声を起点として、変換パラメータを自分で調整する必要があります。 一方ここでの声質変換は、元の声と好きな声を用いて機械学習し、変換パラメータを自動で調整しま
ライトモードだといい感じのグレースケールが、ダークモードにすると特に暗いグレーあたりのコントラストが低くなることがあります。 これは人がカラーとコントラストを知覚する感じ方に関係があります。どのようなメカニズムでそう感じるのか、ダークモードでもいい感じのグレースケールにするにはどうすればよいのかを解説します。 Darkmode by Dan Holick 下記は各ポイントを意訳したものです。 ※当ブログでの翻訳記事は、元サイト様にライセンスを得て翻訳しています。 ダークモードのグレースケールを作成するのが難しいのは、なぜだと思いますか? それは、人がカラーとコントラストを知覚する感じ方に関係があります 👇
埼玉生まれ、神奈川育ち、東京在住。会社員。好きなキリンはアミメキリンです。右足ばかり靴のかかとがすり減ります。(インタビュー動画) 前の記事:恐竜公園がとてもいい > 個人サイト のばなし VRスイカ割りができるまで さて、とにもかくにもVRの空間を用意したい。とは言え、テレビのモニターとPC画面を同期させることもできない筆者には越えるべきハードルが高すぎる。 どうしたものかと困っていたら救世主を紹介していただいた。VRの研究をされている明治大学の橋本直(すなお)先生とゼミの研究生の方々である。 今回お世話になった橋本先生(手に持っているのはVR用スイカ割りの棒) ゲームや機材に囲まれた先生の研究室で「こんなVRの状況を用意すればスイカが叩きづらくなるのでは」と様々好き勝手に話したところ、なんとかなりそうだ、とのこと。 1.実際のスイカとは少しずれた位置にバーチャルのスイカを置く。目で見る
岐阜県各務原市の「川島大橋」が5月、傾いているのがわかり通行止めとなりました。橋の傾きに気づき、通報した男性はいつもとは違う、不思議な現象を体感していました。生活に欠かせない橋の通行止めに、地元住民の生活も一変しました。 各務原市の木曽川にかかる全長約344メートルの「川島大橋」。完成したのは60年ほど前。岐阜市や一宮市方面へ通勤や通学、買い物などで1日約1万台の車や多くの人たちが行き交かっていましたが、橋脚で傾きを確認したため、5月28日から通行止めとなっています。 橋の傾きに最初に気づいた80代の男性。毎朝の日課でこの橋を散歩していた際、不思議な現象が起きたといいます。 「普段ならまっすぐ歩けるんだけど、その日にかぎって右へ右へ寄っちゃうんだよ。自然と3回くらい繰り返した。それはおかしいなと思って」(橋を利用する男性)
YouTubeに公開された7分足らずの動画に世界が衝撃を受けた。 動画に写っているのは、オンラインゲームをプレーするアメリカ人の男性。 その手元にあるはずのコントローラーが、ない。 代わりとなっているのが頭に取り付けられた装置だ。 脳に埋め込んだ電極で脳波の情報を読み取り、ゲームのキャラクターの動きに変換し操作しているのだ。 脳と機械をつなぎ、“念じた”とおりに動かす。 BMI=ブレイン・マシーン・インターフェースと呼ばれる技術の開発競争が、今、世界で激化している。 (大阪放送局 記者 絹田峻) こちらが世界に衝撃を与えた動画。 動画の男性が来日すると知り合いの研究者から聞き、早速インタビューを申し込んだ。 インタビューが実現したのは、2023年10月。 ネイサン・コープランドさん(37)は、「観光で疲れた」などと言いながら、終始笑顔で取材に応じてくれた。 ネイサンさんは18歳のとき、車を
Innovative Tech: このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。 神戸大学塚本・寺田研究室の研究チームが開発した「装着型LEDアレイを用いたベクション誘発手法の提案と評価□」は、自分は静止しているにもかかわらず、あたかも運動しているように感じる視覚誘導性自己運動感覚(ベクション)を誘発させる頭部装着型ベクション提示デバイスだ。 実世界において、いつでもどこでもベクションを誘発できるため、例えばランニング中にベクションを誘発させ楽に感じさせるなどの活用が考えられるという。 ベクションはゲームや映画で没入感を高めるために使用されている他、高速道路の渋滞を防ぐ走光型視線誘導システムや、床に配置した特殊なレンズを用いた公共施設の混雑を解決するシステムとしても活用
まるで透明マント。監視カメラでAIが認識しないアグリー・セーターが作られる2022.10.22 16:0090,468 岡本玄介 目立つ柄だけど社会的に消えます。 伝統的に冬になると欧米人が着る、ダッサい柄の「アグリー・セーター」。マイクロソフトも毎年新作をリリースし、音楽業界ではアイアン・メイデンやガンズ・アンド・ローゼズがオリジナルを作っていましたね。 さて、今年もそろそろアグリー・セーターの時期が到来しようという頃合いですが、ニューヨーク州にあるコーネル大学では、監視カメラでAIが認識しない「アグリー・セーター」が爆誕した模様。『ドラえもん』や『ハリーポッター』では物理的に消える「透明マント」がありましたが、こちらは社会的に透明人間になれる装備となっています。 検出オブジェクトの信頼度を下げる模様デカデカと印刷されている市場のカボチャみたいな模様は、機械学習システムが認証時に用いるス
「あれっ!こんなところを間違えてるよ」―。パソコン画面上で何回も確認して間違いがなかったのに、紙に印刷すると原稿のミスが...。こんな経験はだれにでもあるが、その理由がよく分からない。 画面よりも紙のほうが、間違いに気がつきやすい。これは今まで何となく経験してきた真理だ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、リモートワークを始めてからは、より一層それを強く感じる。リモートワークではプリンターが無かったり、あってもその能力不足で印刷に手間取ったり。だから、紙でのチェックを怠りがちになり、ミスが生じて後で大きなしっぺ返しを食らう。 もちろんできる限り間違いを減らし、仕事はスムーズに進めたい。紙と画面それぞれにおける、脳の働き方の違いなどを調べた上で、両者の使い分けを考察してみた。 「分析」の紙vs「パターン認識」の画面 メディア批評の先駆者、カナダのマーシャル・マクルーハン(1911~1980年
明治大学の総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室とキリンホールディングスは4月11日、減塩食品の味わいを増強させる箸型デバイスを開発したと発表した。このデバイスで独自開発の電気刺激を与えると、減塩食を食べたときに感じる塩味が1.5倍程度に増強されることを世界で初めて確認したという。 ごく微弱な電気を口の中に与えることで、塩化ナトリウムの塩味やグルタミン酸ナトリウムの旨味の基となるイオンの働きを調整。疑似的に食べ物の味を濃さを変えられるという。 40歳~65歳の減塩食を食べたことのある男女36人を対象に、このデバイスの臨床実験を実施。一般食品を模したサンプル(食塩を0.80%含有)と減塩食を模したサンプル(食塩を0.56%含有)を箸型デバイスを使って食べてもらい、どのように塩味を感じたか評価した。
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「数学は役に立つのか?」「微分や積分は役に立つのか?」というのは、たびたびSNS上で目にする話題ですね。もちろん、人間社会において、さまざまな場面で数学や微分・積分が役に立っているのはみなさんよくご存知かと思います。 今日紹介したいのは、人間が発見するよりもはるか昔に、生物がすでに既に微分を活用していたかもしれない というお話です。 たとえば、カブトガニのような生物は、実際に「微分」を活用していたのではないかと言われています。 By Togabi - Own work, CC BY-SA 4.0, Link カブトガニが誕生したのは2億年前ですが、人類が微分を発見したのはせいぜい300年前ですから、人類が活用するよりもはるか昔ということになります。 いったいどんなふうに微分を活用していたのでしょうか。面白い話なので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです! 目次: 1. 物体認識とエッジ
過去の研究により、1秒間の人の脳の活動がスーパーコンピューター・京の40分に匹敵するなど、脳は非常に高度で複雑な情報処理を行っていることが明らかになっています。新たな研究により、脳に入ってくる情報の大半を占める視覚情報が効率的に処理されているのは、脳が「リアルタイムの視覚情報ではなく過去15秒間の映像の集約」を見ているからだということが確かめられました。 Illusion of visual stability through active perceptual serial dependence https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abk2480 Everything we see is a mash-up of the brain's last 15 seconds of visual information https://theco
一度会った人の顔を、時間が経ってもしっかり記憶できる人がいますよね。普通なら覚えられないのに、一度見た人の顔を数多く認識できる特殊な能力は「超認識力」と呼ばれ、その持ち主を英語では「スーパーレコグナイザー(super recognizer)」と言います。 この超認識力とはどんなものなのでしょうか? そんな特殊能力が自分にもあるかどうか知ることができる簡単なテストとあわせてご紹介しましょう。 ↑一度だけ見て、こんなに覚えられる? 超認識力とは何か? まずは、それを示すあるエピソードをご紹介しましょう。1990年代、ある女性がパリの公園で、男性写真家が子どもを撮影している様子を目撃しました。それから10年後、この女性がレストランで偶然このときの男性と遭遇したので、女性は男性に「あなたは写真家で、パリの公園で子供の写真を撮ったことがありますか?」とたずね、男性は驚愕した。そんな出来事が実際にあっ
AIとデータ利活用の進化が著しい現代、シンギュラリティ*と言ってもよい変化が起きつつあります。今後も加速度的に変化する、AI×データ化された社会で必要とされる人間ならではの力とはどのようなものなのでしょうか。 *もともとは物理学における特異点。ここではRay KurzweilがSingularity is Near (2005)で語った「人間が技術の力によって生物学的な限界を超越する時」の意味。 シンギュラリティはすぐそこに ここ3年から5年ほどは、人類とAIの関係にとって歴史的な時期となる可能性が高いです。昨年、Midjourney、ChatGPTと立て続けに強烈なアプリケーションが出てきました。いわゆるGenerative AI(生成系AI)は、現在、大半の質疑についてまっとうな回答を文章で行い、曲をつくったり、マンガのコマを描いたりすることができます。人間がそれに少し手を入れるだけで
『フッサール 志向性の哲学』(青土社、2023年)を、著者の富山豊さんからお送りいただいた。待望の単著といっていいだろう。志向性に関するフッサールの見解について私が論じる次の機会——万事が順調に進めば今年の5月後半には最初の機会がやってくる——に本書を詳しく検討しなければならないことははっきりしているので、まずはざっと一周読んだ。読む前から分かっていたことではあったが、期待させるだけ期待させておいて……ということにはまったくならなかった。待ち望んだ甲斐があった。以下に簡単な感想を記しておく。同書のページ数への参照はアラビア数字だけで行う。 本書はフッサールに関する入門書だが、私の知るかぎり、他のどの類書とも異なっている。ある哲学者についての入門書というものは、その哲学者の思想の全体像を示すのを目的にするのが通例である。それに対して本書は、フッサール現象学の全体像を包括的に示すわけではない。
良書に出会えたので紹介させてください。 今回ご紹介するのは"知覚力を磨く~絵画を観察するように世界を見る技法"です。作者は神田 房江さんです。 リンク 「知覚」という単語、あなたは聞き馴染みがありますか? 私はありませんでした。 ですが、この本を読んだら、あなたは知覚の虜になるでしょう。 この本の最大の魅力は、アート思考で物事をとらえ、判断する力を身に付けることができる点です。 具体的なメリット。実践的な知覚力の身に付け方。これがたった一冊の本で理解できます。 そして、この「知覚」という概念や判断手法は未来の常識になる考え方です。 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか。でも、紹介されていますが、もはや「ロジカルシンキング」による判断はうま味が少ないです。 リンク そんな中、他者と差別化し、新しい発想や創造、判断をするために必要になるのが知覚力です。 「知覚力とはなにか」 「なぜ、知覚
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