以前,私どもは多系統萎縮症(MSA)では食道の機能障害により,食道内の食べ物の停滞が生じ,場合によっては逆流して誤嚥性肺炎や窒息による突然死の原因となりうることを報告しました(Taniguchi H, et al. Dsyphagia 2015).今回,当科の大野陽哉先生と國枝顕二郎先生が食道機能障害についてさらに検討し,「遠位食道痙攣(distal esophageal spasm:DES)」という現象が生じうることを初めて明らかにしました. 症例は74歳男性.3年前に起立性低血圧にて発症し,同時に胸に食べ物が詰まった感じ,食後の反復性嘔吐を呈しました.小脳性運動失調が認められ,MSA-Cと診断しました.ビデオ透視による嚥下検査では,下部食道狭窄と食道内のバリウム停滞が認められました. 内視鏡検査では下部食道の過収縮が認められました. さらに高解像度食道マノメトリー検査では下部食道の早期