落雷と祝福 岡本真帆 副題は「好き」に生かされる短歌とエッセイ。 歌人・岡本真帆が愛するものをお題にした連作短歌とエッセイをお送りします。 第11回のテーマは「スキップとローファー」です。 転んでも走れる 読んでいるうちに、つーっと涙が流れていて、気付いたときにはそれがだばだばと止まらなくなっている作品がある。「月刊アフタヌーン」で連載中の『スキップとローファー』だ。頭で理解する前に、感情が溢れてしまうような、そんな瞬間が無数にあるのだ。どうしてそうなってしまうのか、その理由についてしばらく考えていて、だんだん分かってきた。 主人公は、石川県の凧島町から東京にやってきた、岩倉美津未(みつみ)。クラスメイトが数名しかいない田舎町から、官僚になるという夢を抱いて進学校に首席入学した彼女は、家族や友人からは「勉強以外のことはかなりズレている」と言われる女の子。彼女が慣れない東京の土地で奮闘し、周