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GPT-4o
tjo.hatenablog.com
以前「Ads carryover & shape effects付きのMedia Mix Modeling」という記事で取り上げたベイジアンMMMのtechnical report (Jin et al., 2017)ですが、当時RStanで実装されていたものが4年の時を経て時代の趨勢に沿う形でPythonベースのOSSとしてリリースされています。 それがLightweight MMM (LMMM)です。ベイジアンモデリング部分はNumPyroによるMCMCサンプラーで実装されており、さらにはモダンなMMMフレームワークにおいて標準的とされる予算配分の最適化ルーチンも実装されています。全体的な使い勝手としては、まだ開発途上の部分もあるので時々痒いところに手が届かない感があるものの、概ねRStanで実装したものと似たような感じに仕上がっているという印象です。 ということで、LMMMがどんな感
もう9年も前のことですが、沖本本をベースとした計量時系列分析のシリーズ記事を書いていたことがあります。その中で、密かに今でも自分が読み返すことがあるのがVAR(ベクトル自己回帰)モデル関連の記事です。 なのですが、仕事なり趣味なりでVARモデルを触っていると「あれ、これってどうなってたんだっけ」という事項が幾つか出てきて、しかも上記の自分のブログの過去記事を当たっても出てこないケースがちらほらあるんですね。 ということで、今回の記事ではネタ切れで新しく書くことが思い付かないのでVARモデル周りで「最近になって調べて行き当たったこと」を備忘録的に補遺として書き留めておくことにします。とはいえ微妙に技術的な話題を含むので、いつもながらですが誤りなどありましたらコメントなどでご指摘くださると助かります。 CanadaデータセットでVARモデルを推定しておく 面倒なので、{vars}パッケージに同
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに収まる気配が全く見られず、この記事を書いている2022年8月9日時点でも日本はオミクロン系統BA.5変異株を主体とする第七波に見舞われている有様です。東京でも毎日のように2万〜3万人という新規陽性者数が報告され続けていて、各種報道でも「検査体制の飽和(破綻)」が叫ばれるような事態となっています。 で、検査体制が飽和していて「真の陽性者数」が分からないとなると、実際にはどれくらいコロナの感染拡大が深刻化を正確に見積もるのも難しいということになります。そこでオープンデータからある程度真の陽性者数を見積もることが出来ないかなと考えていたら、灯台下暗しということで身近にありました。Googleトレンドの検索トレンドデータです。これである程度特徴的な検索ワードのトレンドを見ることで、実際の感染拡大状況がどれほどのものか見積もれるのではないか
(Image by Wokandapix from Pixabay) 個人的な観測範囲での話ですが、データサイエンティストという職業は「21世紀で最もセクシーな職業」として刹那的な注目を集めた第一次ブーム、人工知能ブームに煽られて火がついた第二次ブーム、そして「未経験から3ヶ月で人生逆転」ムーブメントと折からのDXブームに煽られる形で沸き起こった第三次ブームを経て、何だかんだで社会に定着してきた感があります。 で、このブログを始めた頃からの連綿と続くテーマになっていますが、いつの時代も話題になるのが「データサイエンティスト(になるに)は何を勉強すべきか」ということ。7年前から恒例にしてきた「スキル要件」記事では、基本的には「どれも必要な知識(学識)」であるという前提で分野・領域・項目を挙げてきました。少なくとも、最初の3回ぐらいはそういう認識でスキル要件記事を書いていた気がします。 ところ
経済セミナー2022年6・7月号 通巻726号【特集】経済学と再現性問題 日本評論社Amazon 最近は計量経済学・統計学方面の方々との交流が多いんですが、そのご縁で『経済セミナー』の2022年6・7月号が再現性問題を取り上げていたと知り、入手して読んでみました。特集部分の目次を以下に引用すると、 特集= 経済学と再現性問題 【鼎談】再現性の問題にどう向き合うか?……川越敏司×會田剛史×新井康平 心理学における再現性の危機――課題と対応……大坪庸介 経済学における再現性の危機――経済実験での評価と対応……竹内幹 フィールド実験・実証研究における再現性……高野久紀 健全な研究慣習を身に付けるための実験・行動経済学101……山田克宣 再現性問題における統計学の役割と責任……マクリン謙一郎 という内容で、幾つかの分野にまたがって論じられています。特に、このブログ含めて個人的に度々お世話になってい
何だか不均衡データ補正の話題は毎回tmaeharaさんからネタを頂戴している気がしますが(笑)、今回も興味深いネタを拝見したので試してみようと思います。 深層学習時代の class imbalance 対応が面白い。適当にバランシングしたデータセットで十分学習した後にフルデータセットでファインチューンするのがいいらしい。なんだこれ。— ™ (@tmaehara) 2022年5月11日 端的にまとめると「under/upsamplingで均衡させた改変データセットで学習したNNを、改めて全データセットでfine-tuningすれば不均衡データ補正が上手くいく」という論文があるらしく、しかも割とうまくいくので採用している後発論文が少なからずあるようだ、というお話です。 tmaeharaさんが引用されていたのはこちらの論文なんですが、IEEE公式サイトのものは僕は読めないので適当にarXivで探
TL;DR 10年前の落ちこぼれポスドクが今は立派なデータサイエンティストになれたっぽいので、ポエムを書きました。業界事情の振り返りと、仕事の話、知名度が上がることの良し悪し、キャリアの話などを綴っています。 時が経つのは早いもので、落ちこぼれポスドクだった僕が企業転職をし、データサイエンティストになって今日で10年が経ちました。自分の中ではデータサイエンティストに転じたのはついこの前のことのように思える一方で、あまりにも多くの様々な体験をしてきたせいか「もっと時間が経っている気がするのにまだ10年しか経っていないのか」という気もしています。 今でも時々SNSで話題に上る回顧録を書いたのが3年前のことなんですが、それ以降は相変わらず同じく現職に留まり続けていることもあり、有体に言えばそれほど大きく変わったことはありません。なので、新たに3年間の振り返りを書くのではなく、回顧録で書き漏らした
(Image by Arek Socha from Pixabay) 江添さんがこんな記事を書かれていました。個人的な感想ですが、面白い観点だなと思った次第です。 この記事では、江添さんが取り上げた論文についての直接の議論はあえて避けます*1。が、江添さんが提起した問題をより一般化して、SOTAに限らず「ある何かしらのメトリクスで評価される」分野の研究をどう見たら良いか?という問題についてちょっと考えてみようと思います。 メトリクスで評価される結果「僅かな改善」ばかりが繰り返される世界 メトリクスの改善は僅かかほぼ無いが「質」には大きな差があるケースもある 最後に 追記 メトリクスで評価される結果「僅かな改善」ばかりが繰り返される世界 今や機械学習のSOTAレースはその代表例になった感がありますが、メトリクスを競い続けた結果「僅かな改善」ばかりが多数繰り返される世界というのは意外と珍しくあ
この記事は、別にちょっとした理由があってR版Kerasで自前のDNNモデルをfine-tuningしたいと思ったので、調べて得られた知識をただまとめただけの備忘録です。既にやり方をご存知の方や、興味がないという方はお読みにならなくても大丈夫です。ただし「このやり方間違ってるぞ」「その理解は誤っている」的なご指摘は大歓迎どころか大募集中ですので、コメントなどでご一報ください。 Fine-tuningとは R版Kerasのドキュメントに書いてあること Rコードと実験結果 Fine-tuningとは 前々から雰囲気では理解していたんですが*1、雰囲気しか知らないが故に適切なまとめ方が分からないのでこちらのブログ記事から引用させていただくと、 ファインチューニングとは、学習済みモデルの一部もしくはすべての層の重みを微調整する手法です。転移学習では、学習済みモデルの重みを固定して用いますが、ファイン
Kaggleはすっかりただの野次馬の一人になって久しいんですが、しばらく前に行われたPetFinder.my - Pawpularity Contestというコンペで優勝者がSVR(サポートベクター回帰)を使ったことが話題になっていたというのを聞いて、NN全盛のこのご時世に意外だなと思ったのでした。 しかし、よくよく考えてみればかのVapnik御大がかつてSVMを考案する際にベースとしたアイデアはNNとは方向性の違う代物だったわけです。故に、例えばSVMとNNとがどのような点で異なるかが「見える化」出来れば、SVMが復権するための条件のようなものが見えてきそうです。 ということで、久しぶりに「サンプルデータで試す機械学習シリーズ」をやってみようと思います。実はDNNについては6年前にも似たようなことをやっているのですが、SVMとDNNとでサンプルサイズを変えながら比較するというのはやったこ
(Image by MasterTux from Pixabay) あまりこういう私事はブログでは書いてこなかったのですが、今後の備忘録も兼ねて記事として書き留めておこうと思います。 Twitterなどでは既に書いている話ですが、タイミング悪く実家の親父が危篤になった時期に並行して、僕は深部静脈血栓症(Deep Venous Thrombosis: DVT)という厄介な病気に罹っていると診断されました。45歳という年齢にしては珍しい病気ですが、かつて元サッカー日本代表の高原直泰選手も22歳で発症したというのを覚えていて、若い人でも罹り得るということは知っていました。 事の発端は4月半ば頃で、最初はふとした調子に右膝をグッと動かしたら何か膝の裏〜ハムストリングの筋を違えた感じがあったのでした。その数日後に夫婦で2泊3日で大阪旅行に出掛けてUSJと大阪城を歩いたんですが、しばらく膝裏が腫れて痛
今回の記事はいつものようにネタが見つからなくて困ったので窮余の一策としての与太話です。話題はこのブログで時々やっている「データサイエンティスト&関連職に関するGoogle Trendsを用いた意識調査」です。 ちなみに、某協会が学生向けのアンケートで意識調査を行った結果が最近報じられていて、SEやコンサルタントなど他職種と比べた場合にどれくらいの立ち位置にあるかの参考になるかもしれません。 対象となる職種 完全に独断と偏見に基づきますが、今年のスキル要件記事で定義した「データサイエンティスト」「機械学習エンジニア」「データアーキテクト」の3つと、さらに後二者の言い換えもしくは類似概念とされそうな「データエンジニア」「AIエンジニア」の2つを加えた、計5つを今回の調査対象としました。 特に「データエンジニア」についてはやはり「データアーキテクト」という語がいわば玄人の間で使われているのに対し
近年様々な議論もあるようですが、依然として「統計的仮説検定」を初めとする統計分析においては「p < 0.05」なるp値が得られるような「有意差」もしくは「有意性」が重視される業界は世間には数多く、有意な分析結果が得られなくて困っている人々は少なくないようです。 そこで、そんな人々のためになるようなハウツー本的な書籍をこの度上梓しました。題して『今日からはじめる達人p値ハッキング』ということで、p-hacking及びそれ以外の様々な「有意な分析結果を得るためのテクニック」をまとめてあります。以下に目次を挙げておきます。 目次 第1章:何故貴方の分析にはp < 0.05が必要なのか 第2章:全てのサンプルを使うことをやめよう 第3章:サンプルをもっと増やしてみよう 第4章:p < 0.05が得られるような仮説を設定してみよう 第5章:検定手法を使い分けてみよう 第6章:p < 0.05が大変な
計量経済学 ミクロデータ分析へのいざない 作者:末石 直也日本評論社Amazon データ分析業界の友人から「読んでみたら物凄く良かった」と勧められて買ったのが、こちらの一冊。同名の書籍は沢山あるので、ここでは著者の末石先生のお名前を取って「末石本」と呼ばせていただきますが、これが本当に物凄く良くて感嘆させられるばかりでした。 ということで、門外漢が書いて良いものかどうか迷うところですが簡単に書評をまとめてみました。特に操作変数法を中心とする因果推論・自然実験まわりの確かな知識を得たい人にはお薦めだということを最初に書き添えておきます。なお、いつもながらですが僕の理解があやふやなため書評の中には怪しい箇所もあるかと思いますので、お気付きの方はコメント欄なりでご指摘くださると幸いです。 本書の内容 第1章 線形回帰とOLS 第2章 操作変数法 第3章 プログラム評価 第4章 行列表記と漸近理論
少し前の話ですが、現在COVID-19の感染が拡大している地域で実施される「蔓延防止等重点措置(まん防)」に効果があったかどうかについて、計量経済学的な観点に基づいた政策評価レポートが公開されて話題になっていました。 追記 本日午前中に元のレポート自体が更新されていたようで*1、今回の記事はその更新を反映していない点悪しからずご了承ください。 で、結論はともかくその手法とアプローチについては色々と議論が起きているようです。例えば、上記のブログ記事では実際に東京都のデータで追試をしてみて、もう少し異なるやり方があるのではないかと指摘しています。 この辺は僕にとっても同様で、普段から同様のデータ分析を広告・マーケティング分野で手掛けている身としては「自分ならこうしたい」と思われるポイントが幾つかあり、折角データソースや背景となる行政措置の詳細などがレポート中で明記されているのだから、いっそ自分
(Image by mohamed_hassan from Pixabay) この記事は毎年恒例のスキル要件記事の2022年版です。昨年版は以下のリンクからご覧ください。 最初に正直に書いておくと、スキル要件自体は昨年版までとほぼ一緒で、大きなアップデートはありません。今回はまず最初に3職種の定義とスキル要件を並べた上で、それに解説を付すという形にしようと思います。 データサイエンティスト 定義 スキル要件 機械学習エンジニア 定義 スキル要件 データアーキテクト 定義 スキル要件 コメントなど 最後に データサイエンティスト 第一次ブームからそろそろ10年になりますが、この「データサイエンティスト」という語だけは変わらず生き残っているところを見るに、依然として期待も幻想も含めて注目され続けている職種といっても過言ではないでしょう。ただし、10年かけて多種多様な業界に浸透していったことで、
(Image by ElasticComputeFarm from Pixabay) 今年も恒例の推薦書籍リストの季節がやって参りました。……なのですが、相変わらず続くCOVID-19の影響*1でデータ分析業界及び隣接分野の新刊書を読む機会が減ったままにつき、例年とほぼ同じラインナップになっている点、予めご容赦いただければと思います。 初級向け5冊 総論 R・Pythonによるデータ分析プログラミング 統計学 機械学習 中級向け8冊 統計学 機械学習 テーマ別14冊 回帰モデル PRML 機械学習の実践 Deep Learning 統計的因果推論 ウェブ最適化 ベイズ統計 時系列分析 グラフ・ネットワーク分析 SQL コメントなど 初級向け5冊 初級向け書籍リストはあまり出入りがないのが通例ですが、今回も微妙に入れ替わりがあります。 総論 AI・データ分析プロジェクトのすべて[ビジネス力×
前回の記事でも触れましたが、ここ最近いわゆる需要予測系のマーケティングモデル(特にMedia Mix Modeling: MMM)を手掛けることが増えています。 この手の統計モデルは経済学で言うところの「実証分析」に当たると思われ、一般には「予測」よりも「説明」に用いられることが多いです。より具体的に言えば、回帰モデルを推定した上で個々の変数のパラメータを比較して、例えば「デジタル動画広告をもっと強化した方が良い」というようなマーケティング上の示唆を得る、というような目的で用いられます。 ところが、これまた前回の記事で触れた通りでそれらのモデルに基づく「説明」には、どうしても「羅生門効果」の問題が生じ得ます。即ち、同じデータセットに対して似たような性能を示す回帰モデルが複数並び立った場合、どのモデルの「説明」を優先すべきか?という問題です。これは純粋に統計的学習分野の問題として捉えればある
(Image by Mediamodifier from Pixabay) 実はもう1年以上前のことなのですが、LinkedInで以下の記事を見かけて「おー、ようやくこういう意見が公の場に出てくるようになったんだな」と思ったのでした。原文は英語ですが、短い文章なので英語が不得手な方でも各種翻訳サービスなどを使えばサクッと読めるのではないかと思います。 で、何故そういう感想を抱いたのかというと「個人的にはもう2017年ぐらいからほぼ同じことを考えていたから」です。しかし、広告マーケティング業界(特にオンライン広告)では長年に渡り「個々の顧客にone-to-oneで訴求できることこそが最重要」という考え方が主流となってきていて、近年のパーソナライズド広告や見ようによってはレコメンデーションもその流れに沿って隆盛を誇ってきたアプローチとも言えます。そこに満を持して一石を投じる形になったのが、上記
(Image by qimono from Pixabay) 年月が過ぎるのは早いもので、2021年もあっという間にわずかな日数を残すのみとなってしまいました。ということで、恒例の1年の振り返りとともにちょっとした年末の気付きをポエムにまとめてみようと思います。 ワクチンの普及がもたらした希望と、そこに立ちはだかった因果推論の壁 犬は狼にはなれないが、狼は犬にもなれる 来年に向けて ワクチンの普及がもたらした希望と、そこに立ちはだかった因果推論の壁 今年は単に2年前に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが続いたというだけでなく、デルタ株という変異株が猛威を振るい、あたかも「新たに別の感染症がパンデミックに至った」が如き別次元の展開を見せた年でした。 しかし、結果だけ見れば最終的には新型コロナワクチンがその威力を発揮し、こと日本に関してはデルタ株が猖獗を極めた第
ディープラーニング 学習する機械 ヤン・ルカン、人工知能を語る (KS科学一般書) 作者:ヤン・ルカン講談社Amazon 11月に入って勤務先のオフィスが本格的に再開されてから、久しぶりに会社のメールルームを覗きに行ったところ、届いていた(つまりご恵贈いただいていた)のがこちらの一冊です。Deep Learningの三開祖の一人にして2018年度のチューリング賞受賞者の一人でもある、ヤン・ルカン御大その人が著した『ディープラーニング 学習する機械』です。 本書は日本語版が出た直後から絶賛する声が聞こえてきていて、興味はあったのですが気を逸した感が否めなかったので、こうしてご恵贈いただけて有難い限りです。講談社サイエンティフィク様、まことに有難うございます。 ということで、早速ですが簡単にレビューしていこうと思います。 本書の内容 特に個人的に印象に残った点 全てのアルゴリズムに関する記述が
(Image by katielwhite91 from Pixabay) 先日のことですが、大変に面白い記事を読みました。 この記事では「データサイエンティスト職のインターンに応募してくる若いエンジニアや学生向け」の話題として語られていますが、全体として読むとそもそも論としての「学術・技術的な側面から見た場合のデータサイエンティスト」と「泥臭い現場で働く実務者としてのデータサイエンティスト」との違いについて良くまとめられた文章だ、という感想を持ちました。 ということで、この良記事に触発された形である上にこのブログでは既に散々語り尽くされてきた議論でもありますが、改めて僕なりの「両者の間の垣根を越えて真に活躍できる」「実務者としてのデータサイエンティスト」とはどうあるべきかについて、一通り書いてみようと思います。 データ分析の現場の泥臭さは、外から見るよりもしんどい 理想を言えば、チームプ
「誤差」「大間違い」「ウソ」を見分ける統計学 作者:デイヴィッド・サルツブルグ共立出版Amazon しばらく前に共立出版様からご恵贈いただいたのがこちらの『「誤差」「大間違い」「ウソ」を見分ける統計学』。お気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、原著者デイヴィッド・ザルツブルグは『統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀』で知られる生物統計学者で、その彼の近著です。なお本書の訳者の一人竹内惠行氏は『統計学を拓いた〜』の翻訳も手がけており、同じチームによるいわば「続編」的な一冊と言って良いかと思います。 前著は割と分厚い「統計学史」についての「読み物」という雰囲気の強い一冊でしたが、本書はそれに比べると古今東西の統計学がキーワードとなった幅広い分野における実例を挙げつつ、同時に統計学の具体的なポイントについての解説を加えていくというスタイルで書かれており、いわば統計学テキスト
多重共線性(multicolinearity)の代表的指標として頻繁に用いられるVIF (Variance Inflation Factor)というと、Rでは普通に{car}とか{usdm}とかのパッケージに実装された関数があるのでそれらを利用すれば良いのですが、ちょっと訳あって自分で実装してみることにしました。ということで、備忘録的に書き残しておきます。 定義 実装 動作確認 追記 定義 普通にWikipedia記事を読めばおしまいです。 (ただし番目の説明変数に対するVIFとする:は番目の説明変数に対して残りの説明変数全てで線形回帰モデルを推定した際に得られる自由度調整前の決定係数) ちなみに他のどの資料を読んでも全く同じことが書いてあるので、これで十分だと思われます。 実装 定義の字面だけ見ると瞬殺に見えますが、Rだとlm関数が愚かにもformula式しかモデル定義を受け付けない(低
第一次データサイエンティスト・ブームから8年以上が経つわけですが、結構不思議なのが今でも「何故データ『サイエンティスト』という名前なのか?彼らは研究者ではないのだからおかしい」という議論が定期的に沸き起こる点です。 その理由は色々ありそうですが、つい最近ではこちらのNHKの報道特集でフィーチャーされたのが大きかったのかもしれません。つまり、それまで「データサイエンティスト」という語を知らなかった人たちがこのようなメディア報道に触れて初めて知るたびに、上記のような疑問を持つ人たちが現れては各所で議論になるという流れが繰り返されているということなのでしょう。 ということで、いつも通りネタ切れで書くことがないので今更ながらですが「何故データ『サイエンティスト』と呼ばれるのか?」という疑問に対する、僕なりの回答をざっくり書いてみようと思います。なお、恒例ながら事実誤認や理解不足の点など記事中にあり
少し前のことですが、こんな話題がありました。 自分がこれまで現職で手がけた機械学習ソリューションでは 1. そもそも「予測」ではなく「説明(解釈)」をアウトプットにする 2. クラス分類確率の高いものだけアウトプットし、低いものは「未定」扱いにして捨てる などという形で実務の現場で使ってもらってます。精度勝負をしないのも一つの解かと https://t.co/NmZJCPnue2— TJO (@TJO_datasci) 2021年8月29日 実際問題として「ある目的のために機械学習システムを開発し、非常に高精度のものが出来上がったが、結局色々あって実戦投入されなかった」という話は、自分の身の回りでも業界内の伝聞でも事欠きません。 しかし、機械学習と言えばどちらかというと「より精度の高いモデルを追い求める」試み、もう少し下世話に言うと「精度勝負」によって、連綿と発展してきたという歴史がありま
今月はモデルナワクチンの2回目接種*1やら仕事でも負荷の高い分析業務やら、はたまた執筆*2やらでネタ切れなのもあってあまりブログ記事を書けていなかったので、最近話題になった件について簡単に論じてみようかと思います。元ネタはこちらです。 これはイスラエルで公表されたCOVID-19ワクチンの重症化防止効果に関する統計について、いわゆる「シンプソンのパラドックス」が見られるのでそれを補正する必要があると指摘するブログ記事です。この件について僕が引用しながらボソッと放言したところ、思いの外大きな反響があったのでした。 イスラエルで起きている、「ワクチンが効いていないように見える」シンプソンのパラドックス。年齢で調整するとこうなるという分かりやすい解説https://t.co/gQrATCNzS7 pic.twitter.com/JI8Gq8h0Lk— TJO (@TJO_datasci) 202
(Image by Pexels from Pixabay) 僕自身がデータサイエンティストという肩書きを与えられて働くようになった9年前から、一貫して問題意識を持ち続けてきたのが「データサイエンティストをどう育成すべきか」についてでした。その後、この9年の間に質の良し悪しや量の多寡はともかく多くのデータサイエンティスト向け技術講座・資料が沢山世に出るようになり、一見その育成体制はそれなりに整ってきたように見えます。 以前議論していた「何故戦力になるレベルのデータサイエンティストが育たないのか」4項目を発掘して面白かった 1. 実戦可能レベルになるまでの学習量が多過ぎる 2. 『知っている』から『使いこなせる』への溝が深い 3. コミュニケーションで死ぬ 4. ビジネス価値と結びつけて自走するところに溝がある— TJO (@TJO_datasci) 2021年6月1日 しかし、当事者たちか
ふと思い立ってこんなアンケートを取ってみたのでした。 頻度主義統計学における「95%信頼区間」の95%というのは、以下のどちらだと思いますか— TJO (@TJO_datasci) 2021年7月16日 結果は物の見事に真っ二つで、95%信頼区間の「95%」を「確率」だと認識している人と、「割合」だと認識している人とが、ほぼ同数になりました。いかに信頼区間という概念が理解しにくい代物であるかが良く分かる気がします。 ということで、種明かしも兼ねて95%信頼区間の「95%」が一体何を意味するのかを適当に文献を引きながら簡単に論じてみようと思います。なお文献の選択とその引用及び解釈には万全を期しているつもりですが、肝心の僕自身が勘違いしている可能性もありますので、何かしら誤りや説明不足の点などありましたらご指摘くださると有難いです。 頻度主義において、95%信頼区間の「95%」は「割合」を指す
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