#01「庭のパライソ」 イルリヒト ある一家でイヌを飼う事になった。近所から貰い受けた、柴犬のような雑種だった。小学生の長男は室内で飼いたいとねだったが、母に却下され、庭に犬小屋を置くことになった。元来動物好きであった一家の主人つまり父は、”世間一般における外飼いのイヌの大多数が犬小屋の脇に打ち込まれたアンカーに短いチェーンで拘束された状態で極めて不自由に過ごしている”という事を日頃から不憫に思っており(ほんとうは生き物を飼育するという事自体に後ろめたさを感じる性質であった)、我が家のイヌであれば少しでも自由に動き回れるようにしてやりたいと考えた。しかし放し飼いにするにも敷地全てを柵で囲える程の金銭的余裕は無い。そこで正方形の庭の対角に1本ずつ支柱を建てて間に頑丈なワイヤーを張り、そこに片方を輪にしたチェーンを通して、さらにそのチェーンの先端にイヌの首輪に付けたリードを連結するという、いわ