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TSMC(台湾積体電路製造)。 国際情勢と世界経済を左右する戦略物資となった半導体、その製造世界シェアの60%を担う世界最大のファウンドリ(半導体受託製造)だ。スマートフォンやパソコン、AI(人工知能)向けに必要な先端半導体に限れば、そのシェアは90%以上に達する。今や世界で最も重要な企業の一角を占める存在となり、株式の時価総額も世界トップ10入りを果たした。
2024年4月11日付の英Economist誌が、ウクライナが戦争に負ければ何が起きるのかを論じるコラムを掲載し、恐怖が欧州に浸透することとなろうと述べている。 昨年のウクライナの反転攻勢の希望は失せ、このところ支配するのは恐怖である。 もしウクライナが敗北すれば、それは西側にとって屈辱的となろう。米国と欧州は、過去2年、道義的・軍事的・財政的支援をウクライナにしてきた。この支援の提供を時に躊躇したことが事態を悪化させた。 ウクライナの領土がロシア領に塗り替えられれば、力は正義なりという理念が固まるであろう。元北大西洋条約機構(NATO)事務局長ジョージ・ロバートソンは「もし、ウクライナが敗れれば、われわれの敵が世界秩序を決めるであろう」と警告した。特に台湾の人々にとっては不幸なことになろう。 ウクライナの隣国による支援の速度は米国よりも遅かった。しかし、ゆっくりだが着実に、彼等は可能な限
【6兆円の血税投入という衝撃】政府はガソリン補助金をいつまで続けるつもりなのか?補助金投入で失う産業競争力、脱炭素との逆行も かつて途上国を旅すれば、物価を安く感じた。もちろん外国人用のレストランなど別体系の料金も多くあるが、タクシー料金、街中で買うミネラルウォーターなど、多くのもの、サービスの価格を安く感じた。 今日本に来ている外国人は、かつて私たちが途上国で感じた物価の安さを実感しているに違いない。昨年米国出張時にシカゴの電車の駅で購入したミネラルウォーターは5ドルを超えていた。日本はミネラルウォーターが1ドル以下で買え、10ドル以下でファストフードではなく、レストランのランチが食べられる国なのだ。そう日本は物価では途上国並になってきたのだ。 失われた30年間収入と需要は伸びず、規制改革などにより供給は減らなかったのでデフレになった。最近の円安により輸入品の価格は上昇しているが、その典
「ガールズ&パンツァー」、通称「ガルパン」という日本のアニメ作品がある。ウィキペデイアの説明を引用させていただくと、「戦車同士の模擬戦が伝統的な女性向けの武道として競技化され、戦車道と呼ばれて華道や茶道と並ぶ大和撫子の嗜みとして認知されている世界を舞台に、戦車戦の全国大会で優勝を目指す女子高生たちの奮闘を描くオリジナルアニメ。兵器である戦車を女子高生たちが運用するという、男性のアニメファンにアピールするようなミリタリーと萌え要素を併せ持ちつつも、死者の出ない戦闘とスポーツものの約束事を踏襲した物語が描かれ、戦争と死といった背景から切り離された戦車戦を描いている」。 個人的には、この作品をごく断片的にしか観たことがないのだが、戦車同士が実戦さながらに砲撃を交わしながら、不思議と死傷者は出ない設定になっているようである。 思えば、我が国においては、戦乱の時代が去り、太平の世となった江戸時代以降
米大リーグ、ジャイアンツからフリーエージェント(FA)となっていた筒香嘉智外野手が古巣・DeNAベイスターズに復帰することが決まった。球団が16日、正式に発表した。 筒香選手は2019年オフにメジャーに挑戦し、レイズへ移籍。思うような結果を残せず、近年はマイナーや独立リーグでのプレーが続いた。ドジャースの大谷翔平選手を筆頭に、大型契約を勝ち取る日本人選手がいる一方、今季からメッツに移籍したメジャー2年目の藤浪晋太郎投手、日本ハムからポスティングシステムでメジャー挑戦した上沢直之投手はマイナースタートとなった。 「実力社会」でもあるメジャーは、同時に「契約社会」でもある。実力次第で夢もビッグマネーも手にできる“アメリカン・ドリーム”が目前にあっても、すでに体現した成功者たちが好待遇での契約を勝ち取っており、そこに割って入ることは容易ではない。立ちはだかるのは「契約の厚い壁」だ。 厳しい「40
【いじめ自殺を防ぐ1枚の診断書に全国から殺到】現役精神科医が語る「法と医者は使いよう」、学校の対応が遅いと言われるのはなぜ? いじめ防止対策推進法は、実によくできている。眠らせておくには惜しい。いじめの防止に関わるすべての職種が、その目的のために使えばいい。 同法は、その「基本理念」として、第三条に「いじめの防止等の対策」は、「いじめが児童等の心身に及ぼす影響その他のいじめの問題に関する児童等の理解を深めることを旨として行われなければならない」としている。医師、とりわけ、精神科医は心身の専門家である。だから、精神科医がこの法に触れてはいけない理由はない。使うべきである。 また、児童・生徒とその親御さんにおかれては、精神科医をもっと使ってほしい。「法と医者は使いよう」、それが、筆者の意見である。 本連載の2023年2月1日に記した「1枚の診断書がいじめ自殺を防ぐ 医師だからできること」は、さ
経済政策論議には、物価が上がればなんとか下げろ、円安になれば輸入物価が上がるからなんとか上げろ、国民は好景気を感じられない、富の分配が不公平になっている、というようにばらばらな政策目標の達成を求める議論が多い。政府もそれに呼応して、石油元売会社に補助金(燃料油価格激変緩和補助金)をばらまいてガソリン・軽油価格をある程度抑え込んだ。ここで日頃ばらまきはいけないという財政学者の発言は聞かれない。 また、政府は、円安に対しても介入するぞと発言している。市場に任すべき金利を押さえつける日銀はけしからんという一部金融学者も円安に介入して円高にすることには発言がない。 取材しないで書く記事をコタツ記事、コタツにいて書ける記事というそうだが、経済理論にもデータにも依拠しないコタツ経済評論が多いのではないか。 経済政策を個別に考えては矛盾する コタツ経済評論が蔓延するのは、最終的に経済政策の目標を明示せず
〈iPhoneでも、テスラのEVでも〉世界のハッキング大会で次々に発覚、プログラムの脆弱性を見つけられない日本は蚊帳の外 3月20から23日にかけて、カナダのブリティッシュコロンビア州バンクーバーでハッカーが腕を競う「ポーンバンクーバー(Pwn2Own Vancouver) 2024」が開催された。Windows11やテスラ自動車などのゼロデイの脆弱性(未知の脆弱性)が発表され、賞金73万2500ドル(約1億1200万円)とテスラモデル3が授与されている。 ゼロデイの脆弱性とは、パソコンやスマートフォンに内蔵されたソフトウェアや機器を制御するファームウェアなどのプログラムの瑕疵(脆弱性)について、製品提供者(ベンダー)がその脆弱性の存在に気付いていない状態をいう。修正プログラムが配布されていないため、インターネット上の「ダークウェブ」などで高値で取引され、サイバー攻撃に利用される。 日本で
中国がデフレに陥ったのではないか。 昨年来、ささやかれている懸念だ。確かに2023年通年の消費者物価指数(CPI)は0.2%にまで落ち込んだ。 気づけば、万年デフレと揶揄されてきた日本と逆転している。日本が「失われた30年」からようやく抜け出そうとしている今、代わりに中国が長い長い停滞に入りつつあるのではないか……。中国では不安が広がっている。 中国のデフレ傾向はマクロ経済の視点から需要不足のあらわれとして説明されることが多いが、企業や消費者の視点から見ると過去10年以上にわたって続いてきた中国の発展モデルの“到達点”である。2010年代の中国の飛躍を支えてきた、この発展モデルは中国に何をもたらそうとしているのか。 “中国流”に巻き込まれたスタバ 米スターバックスの23年10~12月期決算が中国で話題となった。中国市場での平均客単価が前年同期比9%減と大きく減少したためだ。4~6月期は1%
小林製薬の紅麹サプリメント(機能性表示食品)を摂取した人に死者を含む健康被害が次々に発生している。新聞やテレビの報道で機能性表示食品の実態や同社の責任を問う報道が目立つが、国の食品安全行政の根本的なあり方を問う指摘はほとんど見られない。新聞やテレビでは報じられていない真の課題をえぐり出す。 公表の遅れで被害拡大 小林製薬は3月22日、自社が製造する「紅麹」成分を配合した機能性表示食品のサプリメントを摂取した人13人に腎障害などが発生し、5製品の自主回収を実施すると公表した。同26日に「3年間、紅麹サプリメントを摂取した人が腎疾患で死亡した」と公表してからは特に関心が高くなり、同社の責任を問う報道が連日、繰り広げられている。 どのメディアも一致して指摘しているのは会社の対応の遅れだ。「自主回収まで2カ月 情報共有されず被害拡大」(産経新聞3月27日)、「紅麹被害対応後手 公表から2か月超」(
近年、世界中で「キャンセル・カルチャー(コールアウト・カルチャー)」が盛んになっている。先進国を中心にポリティカル・コレクトネスが声高に叫ばれて久しい中、それに反する言動は、社会から強く非難されるようになった。政治的に「誤った」人物や企業、作品といった対象は、SNSなどを中心にたびたび炎上し、ボイコットや不買運動によって謝罪や撤去に追い込まれたり、社会的な地位や仕事を失うなど次々と「キャンセル」された。 こうした「キャンセル」の動きは、すでに日本でも珍しくない。たとえば昨年も、KADOKAWAから出版予定であった本『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』が出版中止に追い込まれる事件もあった。 無論、差別などの不当な扱いは社会から強く否定されるべきものだ。それを訴える手段の一つとして、「キャンセル・カルチャー(コールアウト・カルチャー)」には一定の合理性も正
米アカデミー賞の授賞式が10日あり、アウシュヴィッツ強制収容所とホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を題材とした英作品「関心領域」が国際長編映画賞を受けた。ジョナサン・グレイザー監督は受賞スピーチで、パレスチナ自治区ガザで続く戦争に焦点を当て、ユダヤ人としての自分たちの存在やホロコーストが、ガザでの占領行為に「乗っ取られていることに異議を唱える」と述べた。 イギリス作品が国際長編映画賞を受けたのは初めて。アカデミー賞では5部門にノミネートされた。 「関心領域」はドイツ語映画で、アウシュヴィッツ強制収容所のルドルフ・ヘス所長の家族に焦点を当てている。ヘス所長は1940~1943年にアウシュヴィッツを運営し、その間、推定110万人が殺害された。うち約100万人はユダヤ人だった。 グレイザー監督は受賞スピーチで、製作スタッフへの感謝を述べると、事前に用意した原稿を読み上げた。 「私たちの選択はすべて、
獲れる魚の減少が止まらない。農林水産省統計によると、1984年に1282万トンだった漁業・養殖業生産量は、以下右肩下がりを続け、2022年現在で386万トンと、過去最低を更新した。国連食糧農業機関(FAO)統計によると、世界では漁業・養殖業生産量は右肩上がりを続け、直近のデータである21年現在史上最高の2億1837万8000トンを記録したのとは対照的である。 魚が獲れなければ、当然漁業者の収入はままならない。農林水産省「漁業経営に関する統計」によると、22年度現在沿岸漁船漁業漁家の漁労所得は僅か136万円である。なり手不足のため漁業者数は急速に減少しつつあり、農林水産省「漁業構造動態調査」によると、10年に20万2880人だった漁業就業者は、わずか12年で約4割も減少し、12万3100人となっている。 趣旨は良くできている「積立ぷらす」 多くの漁業者が漁獲量と収入の減収に苦しむなか、漁協の
☆JR東海「京都キャンペーン」30周年! CM・ポスターでおなじみの風景とあの名作コピーが1冊に! 最高に美しい京都がここにある―― 2023年秋に30年目を迎えたJR東海「京都キャンペーン」。 テレビCMや駅構内で目にしたポスターから四季折々の美しい写真と軽妙洒脱なコピーを79点厳選し、1冊の写真集にまとめました。 新旧ナレーターの長塚京三さんと柄本佑さん、コピーライターの太田恵美さんからはキャンペーンの秘話も。 ページをめくって30年分を堪能しているうちに、また京都に行きたくなる―― そんな気持ちになること間違いなしです。 *同時発売の『そうだ 京都、行こう。 御朱印帳BOOK』は、本書中の春・初夏・夏の部分を抜粋した小型サイズの写真集であり、オリジナルの御朱印帳が分冊になった箱入りの商品です(セット販売品・分売不可)。 【本書の目次】 はじめに 春(渡月橋、醍醐寺、高台寺、平安神宮ほ
野党共和党の予備選挙では、ドナルド・トランプ前大統領が初戦の中西部アイオワ州から勝利を重ねて、快進撃を続けている。多くの州で党員集会および予備選挙が開催される3月5日の「スーパーチューズデー」では、中でも注目される大票田の西部カリフォルニア州が「比例配分」ではなく、「勝者総取り」を採用したため、トランプ前大統領が169の代議員を全て獲得して、共和党大統領候補指名を確実にすると見られる。 その後、共和党予備選挙は3月12日に南部ジョージア州、同月19日に南部フロリダ州や中西部イリノイ州、オハイオ州など重要州で選挙が実施される。3月にトランプ前大統領は、共和党大統領候補に必要な1215の代議員数に達する可能性が高い。 本選に入っても、トランプ前大統領のこの勢いは止まらないのだろうか。「もしトラ(もしもトランプが大統領になったら)」から「ほぼトラ(ほぼトランプが大統領)」を経て、「確トラ(確実に
日経平均株価が22日、終値が3万9098円を付けて34年ぶりに最高価格を更新した。バブル絶頂期の1989年12月29日の大納会の3万8915円を付けたあと、年明けの取引開始から暴落に転じた日本の株価が失われた30年を取り戻しかにみえる。 年明けからの急速な株価の上昇の理由として、メディアは新しい少額投資非課税制度(NISA)の導入や日本企業の業績回復とドル建てでみて割安感が出たために外国からの買い入れが膨らんだことなどを挙げている。前回のバブルとは異なるというものである。果たしてバブルの崩壊の悪夢は再来しないのだろうか。 「投機」はなぜ起きるのか? ジョン・K・ガルブレイスは名著・『新版 バブルの物語』(電子版、2019年・鈴木哲太郎訳)のなかで、投機に参加するふたつのタイプの人がいると述べている。 「第一のタイプは何らかの新しい価格上昇の状況が根づいたと信じるようになり、市価は下がること
米国・サンフランシスコは、ゴールデンブリッジやチャイナタウン、ケーブルカーで日本人には馴染みのある観光地だが、最近は治安の悪化が盛んに報道されている。そこで、年末から年始にかけて現地を踏査してみた。 ダウンタウンでは、明らかに治安が悪くて足を踏み入れないほうがよいと思われる通りと、市民や観光客が普通に行きかっている通りとに分かれる。市内周辺部では、良好に管理運営されている地域もある。通りや地域によって明暗が分かれるのはなぜだろうか。 高いオフィス空床率と物価 サンフランシスコに行くと誰でも最初に訪れるのがダウンタウンにあるケーブルカーの出発点だろう。ここは今日でも世界各地からの観光客であふれ、明るく華やかな雰囲気である。 しかしその近くではデパートやフーズマーケットが閉店し、シャッターが閉められている。ちらほらと開店している店もあるが、閉店した小売店も多い。 シリコンバレー銀行の倒産はあっ
サバが不漁に喘いでいる。「漁業情報サービスセンター」の統計によると、2023年のマサバ・ゴマサバ水揚量は21万トンと、19年の41万トンからほぼ半減した(図1)。昨年まで12年連続水揚げ日本一だった銚子漁港は、その座を釧路に明け渡した。イワシとともに水揚げの主力であるサバの水揚げが昨年の3万トンから1万7千トンへの半減したことがその要因だ。 青森県八戸市に本拠を有する水産加工業者も、今年早々青森地裁に自己破産を申請している。負債額は約2億1600万円。コロナ禍による受注減とともに八戸港でのサバの水揚げ不振が引き金になったという。各地の漁業者から「サバが獲れない」との声が聞こえる。 サバ資源への楽観的な評価 これまでわが国で実施されてきたサバに対する資源評価は楽観的なものだった。水産基本法第15条は「国は、水産資源の適切な保存及び管理に資するため、水産資源に関する調査及び研究その他必要な施策
筆者が「霞が関で殉職しない方法 睡眠奪う労働は人権侵害」を書いて以降、霞ヶ関、永田町界隈から多くの反響をいただいた。そのなかには、「官僚の現状について、理解していただいてありがとう」という肯定的な意見もあったが、メンタルクリニック受診歴のある元・職員からは、「薬でごまかすだけで、頼りにならなかった」という意見も寄せられた。 筆者は、すべての精神科医を弁護する立場にはないが、ひとこと、言い訳を申し上げておく。精神科は元来、「精神障害者」御用達であった。一方、霞ヶ関の官僚諸氏は、いかなる意味でも「精神障害者」ではない。当然ながら、誰一人「患者扱い」など求めていない。ここにミスマッチの原因がある。 官僚は精神医学にとって「規格外」 筆者が霞ヶ関人を診ることができるのは、環境に恵まれたからにすぎない。外勤先は、国家公務員共済組合連合会虎の門病院出身の精神科医(現・理事長)が立ち上げたクリニックで、
2024年1月13日、台湾で総統選挙および立法委員選挙の投開票が行われ、頼清徳・現副総統および蕭美琴・前駐米代表の正副総統候補が総統選を制し、民進党としては異例の政権3期目に突入する。他方、立法院では国民党が議席を大きく伸ばし、第一党に返り咲いた。しかし、二大政党がともに立法院の過半数を構成しない中、キャスティングボードを握ったのは、若年層の支持を得て、躍進した民衆党である。決定的な勝者も敗者もなき結果だった。 この結果は、中国にとって「最悪」ではないにせよ、「最良」でもなかった。なぜなら、中国は明らかに反頼清徳・反民進党の立場で台湾選挙に干渉したからだ。 23年末、習近平国家主席は「祖国統一は歴史の必然」と強調し、国務院台湾事務弁公室は頼候補を「頑固な台湾独立工作者」「戦争メーカー」と批判した。その姿勢は言葉だけに終わらず、野党系支持者の投票先の分散を防ぐため、有権者の約5%の票を有する
ニューヨークの下町あたりのダイナー、つまり深夜営業のレストランのカウンターが舞台のようである。暗いガラス窓を背にしてソフト帽をかぶった背広の男と紅いドレスを着た茶色の髪の女が、コーヒーカップを前にして座っている。向かいのカウンターの端にやはり帽子をかぶった男が一人いるだけで、他に客はいない。大きなコーヒー・サーバーを置いた卓の内側では白い給仕服の男が一人、立ち働いている。
泉 房穂 Fusaho Izumi 前明石市長 1963年兵庫県明石市二見町生まれ。県立明石西高校、東京大学教育学部卒業。日本放送協会(NHK)、テレビ朝日、石井紘基衆議院議員の秘書を経て、1997年に弁護士資格を取得。2003年に衆議院議員となり、11年から23年まで明石市長を務める。 もちろん、民間には民間の良さがあるが、この世の中、全てが民間だけでは成り立たない。儲からないことでも必要なことは山ほどあるからだ。行政サービスはその典型である。 人は生まれた瞬間から人によって支えられながら生きている。人間は集団で生き、社会をつくる。社会を運営していくためには、みんなのために使うお金と、みんなのために働く人たちがいる。それが税金であり、公務員だ。両者はまさに社会の基盤である。 私はまた、増税反対派ではなく、小さな政府派でもない。中負担高福祉派である。公務員がしっかりと汗をかいて知恵を絞り、
2023年の年末カニ商戦は好調でした。これはカニの輸入価格が大幅に下がったことにあります。大幅に下がった理由は、米国が2023年6月下旬からロシアのウクライナ侵攻の制裁として、ロシア産水産物の輸入禁止に踏み切ったためです。 このため、ヒートしていた国際買付け競争が落ち着き、タラバガニも含めカニの輸入価格が大きく下がったのです。しかし、現在の状況は一時的に過ぎません。 このままでは需要増加による買付け競争再開で、価格は再び上昇傾向になるでしょう。そこで、ポテンシャルはあるものの、とてももったいない国産ズワイガニの資源管理の話をしましょう。
昨今、人への健康被害の恐れが指摘される有機フッ素化合物(PFAS)が各地で検出されたとの報道が目立つようになり、不安が高まっている。だが、PFAS問題は今に始まったことではない。汚染を最初に告発したのは遡ること四半世紀前、米国のビロット弁護士だった。 米国東部にある化学メーカーのデュポン社の廃棄物埋め立て地近隣で牛が病気になった。農家から相談を受けたビロットは1999年にデュポン社を提訴し、同社の内部資料を入手して、廃棄物にPFASの一種であるPFOAが含まれることを見つけて和解金を獲得した。続いて、2001年にビロットは汚染地域の住民の集団訴訟を起こした。設置された科学委員会は7年間の疫学調査の後、PFOAは腎臓がんなど6つの疾患と関連する「可能性が高い」と判断し、17年に総額6億7070万ドルで和解した。この経緯は映画化され、ビロットは「デュポン社の悪夢」と呼ばれ、PFASは「恐ろしい
筆者は「家計の円売り」こそ円相場、ひいては日本経済にとって最大のリスクではないかと考えてきた。昨年11月には本コラムへの寄稿『経常収支黒字でも進む円売り 資産運用立国で加速するか』でも取り扱った経緯がある。周知の通り、年初から盛り上がりを見せる円安・株高の背景として新たな少額投資非課税制度(以下、新NISA)の稼働を契機として変化する家計の運用行動があるとの論調が目立っている。 実際のところ、こうした議論は正しいのか。現在入手可能な情報から判断する限り、新NISAによる家計行動の変化は円安には直接的な影響がある一方、日本株上昇には間接的な影響があると言えそうである。以下で簡単に現状を把握してみたい。 日本株高水準の正体 先に日本株上昇について触れておくと1月18日に東京証券取引所が発表した1月第2週(9〜12日)の投資部門別株式売買動向によると、個人投資家は年末を挟んで5週連続で売り越しだ
なぜ自分は、この列に並んでいるのか? その先に何があるかも分からない。そして最後尾も見えない。でも、列から抜けるわけにはいかない。そのため、前後に並ぶ人との間には緊張感が漂う。この展開で思い出されたのは、安部公房の『壁』だった。読者としては、物語から何か意味を読み取ろうとするが、それが正しいのかどうか分からない。しかし、そこに解はなく、自らが置かれた状況によって変わるのかもしれない。何度でも読み返すべき小説だと思う。 沸騰する地球
新年から地震、航空機衝突と大きな災難に見舞われたが、ウクライナとガザではクリスマスも新年もなく戦争が続いている。 戦争は多くの人を不幸に追いやるが、間接的な影響まで考えるとエネルギー価格の上昇を通し、世界中の人に災いをもたらしている。ロシアのウクライナ侵略は、欧米によるロシア産原油・石油製品と石炭の禁輸を招き、欧州諸国は天然ガス購入量も削減した。結果は、石炭と天然ガス価格の高騰だった。 しかし、こんな時にも儲けのネタを探すエネルギー商人がいる。 ロシアのウクライナ侵略を受け、欧米諸国はロシア産化石燃料を対象に制裁措置を導入した。対ロシア制裁に加わっていない国は、欧米市場を失ったロシアから安く原油を購入し石油製品に加工した後、欧州諸国に販売するビジネスを作り出した。産油国の中にも、ロシア産原油を輸入し自国の消費に当て、自国産の原油を輸出する国が登場した。 ロシアへの制裁を行っている米国も欧州
昨年末、2024年度予算が閣議決定した。うち水産予算は前年度補正を併せて3169億円と、過去最高だった前年の3208億円(前年度補正含む)をやや下回るものの、3100億円台を維持した。18年度まで水産予算は2300~2400億円程度であったが、同年末に国会を通過した漁業法の改正に歩調を合わせ、予算は一気に増額した。 漁業法の改正で目指されたのは、科学的な資源管理に基づく水産資源の回復と水産業の持続的な発展であると言える。これまで国が資源評価対象としていたのは計50魚種で、漁獲総枠(「漁獲可能量(Total Allowable Catch: TAC)」と呼ばれる)を決めて管理を行っていたのは8種に過ぎなかった。 水産庁によると、資源評価対象を23年度までには200種程度に拡大(22年3月現在192種)するとともに、資源評価方法についても過去数十年のトレンドから「高位」・「中位」・「低位」と分
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