サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
掃除・片付け
www.newsweekjapan.jp/obata
11月30日の議会証言で世界の市場を慌てさせた米FEDのパウエル議長(写真は7月15日) Kevin Lamarque-REUTERS <市場の乱高下はオミクロン株のせいだけではない。売り逃げるなら今だ> 株式市場は乱高下が続いている。 すべてはオミクロン株のせいだと見るのは、まったくの素人で、投資家たちは、すべてパウエル発言に動揺している。 オミクロンが報告されたときは、これで利上げが遠のく、テーパーリングペースも速まるどころか、ゆっくりになる、だから、むしろ株式市場にはプラスというポジショントークまで広まっていた。 ところが、パウエルは、インフレは一時的、という判断を変更すると言い、むしろ利上げは早い段階で必要となることまで示唆した。 さらに、追い討ちをかけるように、オミクロン株は、むしろ現在のインフレ懸念を強めかねない、なぜなら今のインフレはCOVID-19によるものであることは明ら
選挙公約だから? 所得制限をつけるかつけないか、問題はそんなことではない(総選挙前の党首討論会で) Issei Kato-REUTERS <10万円給付、所得制限で自公が綱引き──どちらも正しくない気はするが、正解がわからない人へ> 今必要なのは経済政策ではなく、社会政策なのだ。 何度も主張しているが、誰も、少なくとも政治家とメディアは誰も理解していない。 第一に、日本の景気は良い。世界の景気はもっと良い。そして、日本の景気はこれからさらに良くなる。現在、景気のための経済対策をすることは、意味がないだけでなく、逆効果だ。 第二に、世界ではインフレが進んでいる。日本では、統計には現れないが、現実にはインフレが進行している。企業が忍耐強いのと、消費者が値上げに異常に敏感、ヒステリックに反応するので、値上げに見えないように、値上げしている。コスト削減で耐え、そして、質を低下させ、労働を疲弊させて
<矢野次官が与野党のバラマキ合戦に噛み付いていなければ、衆院選の結果は恐ろしいものになっていたかもしれない> 衆議院選挙が終わった。 一番の驚きが、自民党が予想以上に善戦したことだった。 これは、矢野康治財務次官の「バラマキ批判」論文が影響した結果だと思う。 なぜか。 余りに有名になった「バラマキ批判」論文とは、財務省の現役事務次官である矢野康治氏が、月刊誌『文藝春秋』11月号に寄稿した「このままでは国家財政は破綻する」という論文だ。冒頭を以下に引用する。 「最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない、ここで言うべきことを言わねば卑怯でさえあると思います。数十兆円もの大規模な経済対策が謳われ、一方では、財政収支黒字化の凍結が訴えられ、さらには消費税率の引き下げまでが提案されている。まるで国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話
「感染状況次第では五輪中止もありうる」という当たり前の一言さえタブーで言えない異常さ Issei Kato-REUTERS <コロナ危機が始まって一年、既得権益との戦いも国民的な議論もなく、ただただ戦いから逃げてきた結果、日本は大変なことになっている> 私は、日本に絶望した。 第一に、コロナ危機はいまや日本だけだ。世界ではコロナ危機は過去のものとなり、いまだに苦しみ、先が見えていないのは、インドと日本だけだ。 第二に、オリンピックなどという不要不急、重要性の低いイベントに国が囚われてしまっている。物事の優先順位がつけられない国は、普通は、滅亡する。歴史においてはそうだった。 第三に、専門家も政治家も嘘ばかり付いている。意図的な嘘なのか、物事をあまりに知らなくて間違っているだけなのか、よくわからないが、いずれにせよ、当たり前のことすらまったくわかっていない。間違ったことを言い続けている。 誰
ナスダックのサインの前でコインベース上場記念のセルフィーを撮る社員(4月14日、ニューヨーク) Shannon Stapleton-REUTERS <ビットコインがバブルであることは、ビットコインの支持派、反対派ともに合意している。合意がないのは、そのバブルが崩壊するのはいつか、ということだ> 私は、今年崩壊すると思う。理由は、上がりすぎたからだ。 歴史的に、バブル崩壊の理由は、ほとんどすべてのケースにおいて上がりすぎたことが原因である。急激に上がったということは、急上昇の局面で買った人々がいるということだ。彼らが保有し続ける理由はただひとつ。上がり続けると信じているからであり、そして、その信仰が実際の上昇によって裏付けられるからだ。 逆に言えば、その裏づけが消えればパニックになって、投売りをする。投売りは投売りを呼び、暴落は一瞬で起こる。 唯一持続可能なバブルは、次々と新しい買い手が現れ
<コロナ感染のリバウンドが懸念されるなか、国は地方のGoTo政策に対する支援を再開するという。いったい何がしたいのか> GoTo トラベルとイートを再開するとのこと。 なぜ、あえて、もっとも感染を広げるリスクがある行動を税金で刺激して、コロナ収束を遅らせることがしたいのか。 県内で、感染の広まっていないところに限るというが、宮城と仙台市の事例が出た直後に、なぜなのか。 学ばないというより、わざとコロナを広めたいらしい。 飲食店、旅行業界は確かに経済的な影響が大きいが、経済的なマイナスは広く広がっている。経済対策を打つなら、費用対効果ならぬ、感染リスク対効果で高いものからやればよい。 どんな経済活動も、行動も感染リスクを高めるだろうが、それほどでもないものと一番広げるものとあり、なぜ、もっとも広げるものからやるのか。しかも、税金を使って。 一方で、東京圏では、緊急事態宣言を解除しても、飲食店
今度の下げは一時的ではすまない可能性が高い(2月26日、東京) Kim Kyung-Hoon-REUTERS <米国の長期金利が急上昇したのを合図に、アメリカでも日本でも株価が暴落した。とくに何のサプライズもない、期待通りで理論通りという珍しいケース。だからこそ、本物だ> 2月26日、日経平均株価は1200円以上の暴落となった。 何も驚くことはなく、バブルが弾けただけである。 この暴落が継続して、まっさかさまなのか、乱高下をしながら下がっていくのか、または、一度盛り返してから、さらに激しい乱高下を伴い下がっていくのか、いずれにせよ、バブルは弾けたか、弾けつつある。 バブルが弾けたのは当たり前のことで、バブルは弾けるからバブルなのである。しかし、これはバブルは弾けて初めてわかる、という世間の常識とはまったく違う。むしろ正反対だ。投資家たちは、全員、バブルの最中にバブルであることを知っている。
コロナで経済は大変なのになぜ株価が上がり続けるのか、と普通は疑問を感じるが Kim Kyung Hoon-REUTERS <投資家の期待値によって膨れ上がり、コロナ危機の現実と乖離したバブルは、各国政府の財政出動が尽きれば崩壊する> (本誌「コロナバブル いつ弾けるのか」特集より) 株価が上がっている。日経平均はバブル崩壊後の最高値を更新し、30年ぶりの高値となった。 2000年4月の日経平均構成銘柄の大幅な入れ替えにより、ずれが生じているから(概算では日経平均は2000円程度、2000年以前よりも低くなっていると言われている)、20世紀の基準では日経平均3万円を実質的には突破している。そして、まだその勢いが止まる気配はない。 この株価はバブルなのか、という問いの答えは、明らかにイエスで、問題は、いつ、どのように弾(はじ)けるか、という点に移っている。これは意外に難しく、バブルと分かってい
ロクな仕事もしないまま、GoToトラベルの全国停止に追い込まれたように見える菅首相(12月14日の記者会見) Hiro Komae/REUTERS <「国民のために地道に働く」と言っていたはずの菅総理は、なぜかGoToという飛び道具を持ち出して経済を刺激しようとしたが、すべては裏目に出た> GoToトラベルのいまさらの一時停止が、やっと決まった。 そもそもGoTo自体がいかなる意味でも誤った政策であることは当初から再三述べてきたが、ここまでちぐはぐになってしまったのは、誰のせいなのか。 まず第一に、過剰なコロナ対応が4月5月に行われたことが、根源だ。 8割人出を減らすという無意味なことが行われ、新型コロナの危機に陥っていない東京がNYやロンドンを越えて、何十万人も死者が出ると脅し、善良で愚かな人々を恐怖に落としいれ、その後、そのトラウマで新型コロナは何よりも怖い、という前提が確立してしまっ
<国の新規感染者は遂に2500人を超えた。今こそ、もともと 間違っていたGoTo政策をやめて病院や保健所の充実に金を使うべきだ> 全国の新型コロナウイルスの感染者が初めて2500人を超える感染拡大の中で、政府はGoToトラベルやGoToイートの運用を見直すと発表した。感染地域への旅行予約や、食事券発行の一時停止などを検討するという。いっそ全廃すればいいのだ。続けなければならない理由が何かあるだろうか? 何もない。 継続しているのは、感染リスクはどうでもよくとにかく経済を戻したいと思っているか、もしくは、自分の決めた政策に文句を言われるのが嫌か、耳の痛い諫言を聞くのが嫌か、どちらかしか考えられない。 GoToは、どう考えても、即刻終了すべきだ。 理由は3つ。 第一に、GoToの役割は終わった。唯一意味のあった役割は、自粛しすぎていた日本の消費者たちに、遠慮せずに旅行や外食に行っていいんだよ、
<テレビ生出演で、日本学術会議の任命拒否問題について三度「説明拒否」の姿勢を繰り返した菅首相。やはり首相向きではない?> 安倍首相については、私は、アベノミクス猛反対、ただし、そのほかは、普通という評価をしてきた。しいて言えば、相対的にはまともな首相候補が少ない中で、ましな方だ、という意味でプラスの評価をしてきた。 世間は、アベノミクスに対する評価がプラスだったから、トータルでは安倍政権は強い支持を受けたが、躓いたのは、森友事件だった。 しかも、それが傷になったのは、安倍氏が、私の妻が関係したら総理を辞める、と野党の煽りに乗ってしまい、やってしまった失言がすべてであった。 あの失言さえなければ、野党もあそこまでしつこく攻めなかっただろうし、財務局の書き換えも起きなかっただろうし、自殺者も出なかっただろう。 安倍政権側に立てば、非常にもったいない、ささいなミス、しかも、子供じみた野党のけんか
5月26日、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が解除され、客が戻ってきた上野の居酒屋 Issei Kato-REUTERS <GoToイート食事券も飲食店への家賃補助も、人気店や馴染みの店の足を引っ張り、質の悪い店を助ける政策だ> GoToイートの不手際や、不正に近い濫用がワイドショーの話題になっているようだが、そうなるに決まっている。何のために、外注しているのかよくわからない。 しかし、それ以前に、GoToイートということ自体が間違っている。 GoToトラベルも、このキャンペーンが終わったら需要が反動減となるので、本当に目先の一時しのぎに過ぎず、キャンペーンがなくても来るような顧客を失うだけなのでよくない、という議論は前回したが、GoToイートはさらに悪い。 500円や1000円をループして永遠に利用するセコイ客の被害は、そのような客で店が溢れ、店はむしろ儲からなくなる。 これ
菅首相は学術会議が出した推薦リスト�も見ていないと語った(写真は9月16日、菅内閣発足) Issei Kato-REUTERS <6名を拒否した理由が定かでないなら、残り99名が「合格」したのはなぜか。政府の説明の不明瞭さは、学問的実績への無関心さを示している> 学術会議の話は大した話ではない。 政府が要らないというなら、廃止すればよい。 学問の自由とかそういう問題ではなく、まず第一に、政府は学問なんてどうでもいいと思っているということが再度はっきりした、ということだ。 6人を拒否した理由を説明すれば、別に政府の任命だから、ああ政府に気に入られてないのね、ということで構わない。理由がないと、政府がどういうのが好きでないのか、わからないから、国民としても、政府は何を目指しているのか、わからない。 しかし、それよりも問題なのは、99名を任命したのだが、彼らのことは、では気に入っているのか、評価
<携帯料金や日本学術会議人事への政治介入で、「働く内閣」の関心は権力行使そのものであることが露呈した。これは経済政策も中央集権化して失敗した共産主義国家と同様の帰結になる危険性があることを意味する> 携帯料金に政治介入するという憲法違反、共産主義国家のような統制経済が始まった。これは、中国でもいまややらないレベルの統制で、これでビジネスが育つわけがなく、日本の市場経済は終わりだと思っていたが、実は、それ以上で、経済だけでなく、社会も、日本は中国以上の統制国家になりつつあるようだ。 日本学術会議への人事介入は、戦後の日本の歴史ではあり得ないこと。安倍政権時の憲法改正議論や、敵地攻撃論など比べ物にならない(なぜなら、これらは国家の安全保障戦略としては妥当という議論は十分にあり得るからだ)、戦中の統制社会を彷彿させるもので、NHKの朝のドラマのタイミングと相まって、人々を恐怖に陥れるには十分な効
<自民党総裁候補の討論をじっくり見たが、将来のために大きなデザインを描いて社会を設計する能動的な発想がない。起こったことへの対処に汲々とするだけだ> 終わっている。 自民党総裁選挙の討論会をテレビで見た。 2時間、じっくりと見た。 そして、唖然とした。 日本にとっても、世界にとっても、最重要なことはまったく議論されないどころか、触れられもせずに、くだらない政治評論家と菅氏の漫才のような雑談で議論は終わった。 これでは、世界の政治も滅茶苦茶だが、日本の政治はその終わっている世界の政治の中でも、最底辺の政治だと言われても仕方がない。 最重要なこととは何か。 世界のリーダーとしての最重要イシューのひとつは、環境問題、地球温暖化問題だ。 これにまったく言及がない。 一番問題なのは、時代遅れの政党の時代遅れの政治家たちの討論なら仕方がないが、今回は、日本を代表して質問する、政治評論家、ジャーナリスト
安倍晋三、突然の辞任会見。後のツケは国民が払う(2020年8月28日) Franck Robichon/REUTERS <アベノミクスはイメージ的には大成功を収めたが、経済的には突出して異常な金融緩和と新型コロナ対策のバラマキで日本の将来に大きな禍根を残した> 安倍首相が辞任を発表した。 7年8カ月にわたる政権が変わることから、経済政策も大きく変わる可能性があり、ここで、これまでの安倍政権の経済政策の総括と今後の見通しを議論してみたい。 安倍政権の経済政策は、アベノミクスと呼ばれ、政権の最大のセールスポイントとなった。セールスポイントとなったからには、何らかの成功を収めたと言えるだろう。では何に成功したのか? それは、人々が、それなりに成功した、と思っていることだ。つまり、成功した、と思わせることに成功した、ということだ。 実は、政策の成功については、評価基準がない。ベンチマークもない。唯
IMFは6月25日の報告書で、日米などの株価は「実体経済と乖離しており割高感がある」と警戒感を示した(写真はニューヨーク証券取引所)Brendan McDermid-REUTERS <日米中心の国債バブルが世界を覆う。この先、米ドルを支えるには日本が先に破綻するしかないのか> コロナは関係ない。 コロナは社会問題だ。 社会が壊れると、経済の弱いところから破綻する。これまで、取り繕ってきたところが崩れるだけのことだ。 では、そもそも世界経済はどうなっていたのか。 日本の1990年代とある種の類似性がある。 1997年からのアジア金融危機で、アジアの高成長の奇跡が崩壊した。 これは、日本で言えば1960年代の高度成長が終わり、その後にオイルショックではなく、いきなりバブルが来て、バブルが崩壊したということだ。 そして、BRICsという言葉も多くの人が忘れているかもしれないが、次にBRICsの高
<日本より遅れてコロナ危機に襲われた欧米では、大きな犠牲を払いながらももう経済再開へのギアチェンジが始まっている。中国、韓国は既に走り始めた。ところが日本は、今ごろ医療崩壊の危機に直面し、緊急事態宣言を全国に拡大したばかり。なぜこんなに対応が遅れたのか> 欧州はまだ死亡者は増え続けているが、早くも経済活動再開のタイミング、やり方に議論が進んでいる。死者が4万5千人を超え、まだ毎日2500人以上死んでいる米国ですら、再開の時期、やり方をめぐって論争が起きている。再開を求めてデモが起きているほどだ。 アジアではいち早く活動を再開している。それは予想を上回るスピードで収束のめどを立てられたからで、台湾、韓国は世界中から絶賛される対応で乗り切り、中国でさえも経済活動の回復では世界の先陣を切っている。 一方の日本は、緊急事態宣言を4月7日になってから行うというもっとも遅れた動きをし、さらにいまさら、
<報道によれば、政府はマスクや防護服、医療機器の増産を企業に求めたという。今まで何をやっていたのか?> 驚いた。 今朝の日経新聞1面では、政府がマスクや防護服、医療機器を増産するよう企業に求めた、という記事が。 今日は4月16日。これは2月にやっていると思っていた。これこそ真っ先にやることであり、政府がやるべきことであり、できることだ。 なぜだ。 しかも、ダイヤモンドプリンセスという経験がありながら、なぜそれを生かせなかったのか。 首相、大臣のブレーンたちは何をしていたのか。 医療での遅れも目立つ。軽症患者の自宅、ホテルでの隔離、病院の分業、分離、これらは最重要であり、真っ先にやるべきだったが、遅れた。これは理解はできる。これまでの医療行政の立て付けから行って、制度に対する考え方を変える必要があったからだ。この柔軟性のなさは課題だが、そういう失敗、出遅れは理解できる。また、検査の方針、クラ
<新型コロナウイルスの感染拡大対策で企業に対する休業要請が広がるなか、休業補償のあり方を巡って国と自治体がもめているが> 何度も言ってきたが、企業に対して休業補償をしている国は主要国では存在しない。 世界中どこでも、支える対象は個人、人間であって、企業ではない。 欧州各国での休業補償といわれているものは、日本では雇用調整助成金にあたり、雇用者側が被雇用者にたいして休業手当を支払う義務があり、それに対して政府が補助金を出す仕組みだ。 今回の危機に対して、これを大幅に拡大して、政府は条件を大幅に緩和し、かつ補助率も90%である。これはリーマンショックのときも行われ、今回はさらにそれを大幅に拡大している。 非正規も対象に含めたのは大進歩 さらに今回特筆すべきことに、これまでは含まれてなかった、いわゆる非正規雇用も対象に含めている。非正規雇用という言葉も存在も、危機後にすべて消滅させて、正規も非正
<外出自粛、マスク、手洗い、うがい──大半の日本人は緊急事態宣言以前からできることはすべてやってきた。重要なのは、もともとリスクが高い行動を取る人たちの行動変容だ> 8割接触を減らせ、8割人出を減らせ、と国民を説得しているが、効果が限定的なのは仕方がない。 8割人出を減らしても、効果は8割未満だからだ。 理由は簡単だ。 全体のうち9割の人が8割減らしても、1割の人が以前のままであれば、全体での減少は7割にとどまるから、というのが、おそらくまじめすぎる学者達の計算で、そう答えるのはまじめな人。それでは社会は理解できない。 8割と7割では、専門家的には違う、ということかもしれないが、この1割よりももっと致命的な欠陥がある。 それは、この1割の人々は、もともとリスクが高い行動を取る人たちであり、彼らの行動を変えない限りは、肝心の問題のある接触が減らないからだ。 こんなことを愚痴りたくないが、感染
緊急事態宣言の翌日も上野駅はこの人出。ロックダウンが常識の欧米人には驚きの緩さ(4月8日) Issei Kato-REUTERS <コロナショックで日本のインテリは理性を失ってしまったような右往左往ぶりさ。それも、コロナが英米に上陸してからだ> 戦うべき敵は欧米コンプレックス 今回のコロナ騒動で、世間は大混乱だが、混乱に拍車をかけているのは、いわゆるネット民でもテレビでもなく、通常は冷静で、ネット民やテレビのワイドショーを批判する、インテリと呼ばれる人々だ。 普段は財政破綻の防止のために消費税増税30%と言っている人々でさえ、コロナショックのためには、無制限に金を配れ、と言っている。どうしてしまったのか。 この原因は欧米コンプレックスがあると考える。 コロナウイルスショックは、最初は欧米人にはかつての植民地の疫病であるかのように扱われた。中国の武漢という、北京でも上海でもない未開の地(彼ら
消費は外出自粛で落ち込んでいるだけ。自粛で仕事が蒸発した人や企業にこそ支援が必要だ(写真は人通りが消えた東京のアメ横、3月29日) Issei Kato-REUTERS <日本政府が議論している景気対策は財源の無駄遣いで将来に大きな禍根を残す。それより、米伊の二の舞にならないよう医療体制を拡充し、コロナ失業やコロナ倒産を救うことに資源を集中投下すべきだ> 何度でもいうが、政府の経済対策は間違いだ。 考え方が180度間違っている。 景気対策は要らない。それどころか、景気対策をすることこそが社会を陥れるリスクを高める。景気対策が行われることこそが危機なのだ。 足元で最も重要なことは何か。新型肺炎による死者の増大、それを含めた医療崩壊、これを防止することだ。 そのために景気対策は何の役にも立たない。それどころか社会を危機にさらす。どうやって? 財政危機によってだ。 イタリアはなぜ世界一悲惨な状況
株価はなぜ暴落と暴騰を繰り返すのか(写真はニューヨーク証券取引所、3月20日) Lucas Jackson-REUTERS <政治家は景気の悪化をコロナショックのせいにしたがるが、これはコロナ以前からのバブルが崩壊しただけの普通の不況だ> 世界はやはり米国が中心のようだ。 新型コロナウイルスが武漢で発生しても、日本がクルーズ船を受け入れてその対処に翻弄されても、欧米は極東の疫病という扱いだった。イランがパニックになっても状況は変わらなかったが、イタリアがこのウイルスに襲われるや、雰囲気は変化をしはじめ、EUの通行の自由が欧州での恐怖を拡大した。しかし、それでも米国は高をくくっていたが、3月26日、ついにコロナウイルスのことを中国ウイルスと呼び続けていたトランプ大統領の米国の判明感染者数が中国を超え、世界最多となった。 この一週間、急に世界はコロナウイルス一色となった。やはり米国が真の恐怖に
<政治がやるべきは、本当に困った人をピンポイントで救うことと、できるだけ早くコロナ危機脱却を宣言することだ> 必要なことは需要創出ではない。 だから、まず、金融緩和ではまったくない。 金融緩和とは、金利を下げて、借入れをしやすくして、投資や消費を刺激することであるが、専門家より素人の方が素直に理解しているように、これは現在ではまったく無意味だ。 コロナショック前から、金融政策が効かないのはコンセンサスになっていた。金利が既にゼロまで下がっていて余地がないこと、需要は十分にあり、むしろ過熱が問題で、人手不足などの中長期の供給制約が問題であり、その問題には金融政策は効果がないことから、もはや金融ではなく財政だ、という議論になっていた。 このような状況でコロナショックが起きた。需要が一変に消えた。 米国中央銀行は利下げを行いゼロ金利とし、国債の買い入れ、つまり量的緩和も再開した。しかし、まったく
貧富の差が大きいと、社会が病を認知するまで時間がかかるが、一旦認知するとひどいパニックになる?(写真は3月15日、封鎖されたイタリア・ミラノのホームレス) Daniele Mascolo-REUTERS <新型コロナウイルスがヨーロッパにまで拡大した今、振り返ってみると、被害を最小限で食い止めたのは日本だった。何がよかったのか> 日本政府のこれまでの新型肺炎対応に関しては、ダイヤモンド・プリンセス号の頃は、世界中の批判が殺到したが、現在、世界を見渡してみると、新型肺炎の潜在的なリスクに対して、被害を最小限で食い止めているのは、日本だといえる。 これが政府の対応の成果なのか、国民性を含む社会の力なのか、要因分析は客観的にはできないが、一つだけ感想を述べたい。 やはり、日本の全体的な医療の水準が高いということがあるのではないか。そして、貧富の差の影響が、受けられる医療の質に対して影響する度合い
真夏に開催することからしてアスリート・ファーストではないIOCのバッハ会長 Denis Balibouse-REUTERS <新型コロナウイルス危機のあおりで、オリンピックは延期だ、いや予定通りだと議論が割れている。この機会にやめてしまえばいいのだ> 東京オリンピックの中止、延期が議論されている。 面倒なことになっている。 なぜなら、IOC(国際オリンピック委員会)という権力がその権力を振り回し、米国放映権を中心とした利権をめぐるビジネス関係者が商業的利益確保を最優先させ、そのカネのおこぼれにあずかりたいオリンピック関係者、美しいという建前に守られている世界中の競技団体の一部は(あるいは多くは)そのカネ、そして競技団体という利権を守るために(もちろん選手のため、競技のため、と心から思っている関係者もいるが、それを建前として使っている人たちもいる)、奔走しあるいは動かず、オリンピックはしがら
<ひたすら安心を追い求め、そのためにリスクを過小評価したりその反動で過大評価する非合理的な行動は、人類を滅亡させかねない。歴史と行動経済学は教えている> 新型コロナ肺炎騒ぎは、世界中のものとなった。欧米の人々は、中国、韓国、日本のものだと傍観していた。あるいは、日本の愚かさをせせら笑っていた人もいたし、正義感か商売なのか、日本の対応の拙さを徹底批判していたメディアも多かった。しかし、そのウイルスが、自分たちの身の回りに飛び火した途端、うろたえ、日本の愚かさと少なくとも同じ程度に愚かにパニックになっている。 彼らの愚かさを批判するつもりはない。当初はリスクに対して過少反応、その微小なリスクを自分の都合に合わせてゼロと解釈し、次にその微小をゼロと無視し続けられなくなった瞬間に、その微小確率を異常に過大評価するのは、金融市場でも日常生活でも日常茶飯事だし、とりわけ、金融危機や災害などの危機のとき
なぜ1人10万円で揉めているのか <現金かクーポンかの議論でさんざん時間を無駄にしたあげく結局どっちでもいということになったのは、もともとそんな10万円は誰も必要としていない
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く