昭和の64年という年月は、日中戦争から第二次世界大戦、敗戦からの復興、経済成長とまさに疾風怒濤の時代でした。子どもたちを取り巻く環境も、これほど短期間で激変したことはなかったでしょう。 木村伊兵衛や土門拳といった写真史に名を残す優れた写真家たちは、子どもたちを被写体とした写真を数多く残し、そこに写しだされた子どもたちの姿には、時代の変容が見事に表れています。それらの写真には人それぞれが自らの幼い日々を重ね合わせ、記憶を甦らせる強いインパクトがあり、それぞれの時代を浮き彫りにするのです。 無心に遊ぶ子どもの姿からは、どの時代でも変わらない笑顔があふれ、私たちの心を温かくしてくれます。コッペパンにかぶりつく男の子や手製の髪飾りに満面の笑みを浮かべる女の子の姿には、誰もが微笑まずにはいられません。また、その一方で、写真家の視線は戦争の悲惨な現実や、社会から取り残された貧しい環境に置かれた子どもた