そして猫を飼っている。 名前はピーター・ウィルソン。 雑種の猫で、目が微かに黄色い。 一度病院で見てもらったけれど異常はないらしい。 23で上京し、その後すぐに拾い今に至るので5年の付き合いになる。 僕はといえば毎朝忙しなく起床し、忙しなく支度をして忙しなく家を出る。 忙しなく仕事をして、終えると忙しなく家に帰る。 僕は常に、何かに焦っていた。 昇格した同僚に対してかもしれないし、結婚した同級生に対してかもしれない。 日々生まれる新たなサービスに対してかもしれないし、巷で騒がれる話題作に対してかもしれない。 僕は焦っていた。 置いていかれるのはごめんだ。 日々を忙しなく過ごして、忙しなくするのが普通だと思っていた。 そんな僕の姿をピーターは寝ぼけ眼の目で見つめ、退屈そうに「にぁあん」と鳴くのだ。 そしてのそのそと起き上がると僕の膝の上に登り、ベーグルみたいに丸まるとゴロゴロと喉を鳴らしなが