率直に言って新海誠監督の作品はニガテであった。作画や音楽など全体としてのクオリティの高さに異論はないし人気も納得なのだが、どうにも合わない。たとえば『君の名は。』はなんであの2人が惹かれ合うのか全然わからないまま異性愛エモ全開で突っ走る感じが全くノレず、『天気の子』は(詳しく後述するが)ある部分がどうしても受け入れ難くてその年のワーストに選んでしまった。そんなわけで『すずめの戸締まり』への期待度も低く、映画館サイドの激推しも鬱陶しく感じられ、いくらなんでもスクリーン埋めすぎだろ、『RRR』や『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』の箱を奪いやがってよお…などとやや鬱憤をつのらせていた。…なので、嬉しい誤算が待っているとは思わなかった。蓋を開けてみれば『すずめの戸締まり』は、初めて「これは好き」と明言できる新海誠作品だったのだ。 『すずめの戸締まり』鑑賞。少女が椅子と化したイケメンと扉を