帰るところもなくなった生活を賭けて、托鉢と接待、野宿だけで何年も何周も遍路を巡礼する「草遍路」たち。“普通”ではない生き方を続ける彼らはいったいどのような人生を送ってきたのだろう。 ここでは、ノンフィクション作家として活躍する上原善広氏の著書『四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼』(KADOKAWA)の一部を抜粋。ドヤ街暮らし、ホームレスを経て、草遍路という生き方に辿り着いた男性ヒロユキさんの証言を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む) ◆◆◆ 女性とは付き合ったこともない ひどく奥手だということもあり、女性と付き合ったこともない。 ゲイというわけでもなく、対人関係の構築ができないことから男女とも交際が苦手で、ホームレスの援助活動をしていた女性に告白したこともあったのだが、断られて終わってしまった。 「手をつないだことくらいはあったかもしれないけど、キスもしたことないな。ぼくは男づきあいも苦手