長野県下諏訪町は諏訪湖のほとりにある人口約2万人の町だ。その町唯一の酒蔵で「御湖鶴」を製造していた菱友醸造が自己破産したのが2017年4月。その酒造事業を手に入れてブランドを引き継いだのは、遠く福島県いわき市に本拠を置く運送会社・磐栄運送だった。 下諏訪町にしてみれば、地元唯一の酒蔵とブランドは貴重な地域資源であり宝でもある。町や商工会議所など地元官民を挙げて後継事業者を支援する一方、引き継いだ運送会社にも、事業の多角化や人手不足の課題をなんとかしたいという思いがあった。積極的にM&Aを繰り返しながら事業を多角化し、地方の運送業の新しい生き残り策を形にしている磐栄ホールディングスの村田裕之社長に酒造事業進出の狙いなどを聞いた。 磐栄ホールディングス社長 村田裕之氏 1960年、大阪生まれ、59歳。大学卒業後、大手生命保険会社に勤務。1993年、磐栄運送入社、2002年、同社社長、2016年